トルコ副首相、日本に積極投資を要請=「EU加盟か死刑復活か」の選択肢ない―クーデター未遂事件から1カ月半

八牧浩行    2016年8月31日(水) 8時30分

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トルコのクーデター未遂事件から1カ月半。エルドアン大統領はクーデター支援者の粛清・弾圧など強権的な姿勢をとっている。国際社会の懸念は強いが、巨額の経常赤字や高インフレが続く中で、今後の経済と対外戦略はどうなるのか。写真はアンカラ郊外のアタチュルク廟。

2016年8月30日、トルコのクーデター未遂事件(7月15日)から1カ月半。非常事態宣言(90日)の最中で、エルドアン大統領はクーデター支援者の粛清・弾圧など強権的な姿勢。国際社会の懸念も強い。だが、巨額の経常赤字や高インフレが続く中で、今後の経済と対外戦略はどうなるのか。

来日したシムシェキ同国副首相が日本記者クラブで会見、欧州連合(EU)や米国との関係を維持・促進する実践的な外交に努力するとともに、経済構造改革を積極的に推進する、と強調。「経済は安定しているので日本はじめ多くの国に、投資拡大を求めたい」と訴えた。

トルコ副首相の発言要旨は次の通り。

今回のクーデター未遂事件にもかかわらず、トルコの投資環境は改善している。欧州で6位、世界全体で14番目の経済大国であり、一人当たり国民所得も高い。アラブ諸国と異なり石油・天然ガスが存在しないが、経済状況は安定している。

今年の経済成長率はやや低下するものの3.5〜4%を確保する見通しだ。昨年の公債発行をゼロに抑えることができ、今年の累積債務のGDP比率は33%にとどまっている

経済面で全てが良好とは言えず、経常赤字が拡大し、インフレも高い水準。経済構造改革を実施することが重要だ。

ただ通貨価値下落の影響で、1人当たり国民所得を2027年までに2万ドル以上に拡大する目標達成のハードルが高くなったのは事実だ。

税制や労働法制などでビジネス界に便宜を図る改革を推進している。トルコの実態を理解してもらい、日本からの一層の投資を求めたい。

トルコ軍によるシリア国境地帯での作戦は米国との協力の下で実施した。シリア北部の過激派組織「イスラム国」(IS)を攻撃したが、1日でISを排除することができた。トルコの反政府武装組織クルド労働者党(PKK)と関係がある勢力(クルド人民兵組織・人民防衛部隊=YPG)を阻止するのも目的だった。野党のクルド系政党・国民民主主義党(HDP)はPKKと関係しており、テロと距離を置いていない。

欧州連合(EU)の基準に合わせて廃止した死刑の復活を求める動きがあるが、国会の議題になっていない。トルコとEUは相互依存関係にあり、EUを取るか、死刑を取るかという二者択一の選択肢はない。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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