<コラム>よくわからない「龍」の大きさ、龍に例えられる中国は現在どんな大きさ?

岡田 郁富    2016年8月7日(日) 19時50分

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日本では龍と言えば、中国の神話、伝説上の動物として中国より伝わったとされる想像上の「龍」が一般的で、その姿、形は固より色彩までもある程度概念化され知っている。しかし、その正確な大きさとなれば、大人でも判っている人は皆無である。写真は龍を象った龍の装飾品。

日本原産のポケモンが米国企業とコラボ、「ポケモンGO」として配信された世界で大ブームを起こし、一つの社会現象となっている。中国での配信は未定とのことであるが、もし配信となれば、他国同様、いやそれ以上に政経、社会に影響を与えることであろう。その構造、システム等詳細は知らぬが、仮想モンスター集めのゲームである。モンスターと言えば、古より世界には種々雑多な怪獣、モンスターがおり、龍、ドラゴン等もその一種と言えるが、これとて数は少なくない。

日本では龍と言えば、中国の神話、伝説上の動物として中国より伝わったとされる想像上の「龍」が一般的で、小学校の児童でも、その姿、形は固より色彩までもある程度概念化され知っている。しかし、その正確な大きさとなれば、大人でも判っている人は皆無である。

「百瀬の滝を登りなば、忽ち龍になりぬべき…」。日本の有名な唱歌は、鯉が上流を目指して滝をのぼり、やがては龍になる…、という中国故事を歌にしたものである。苦労苦心に耐え努力すれば立身出世する、ということであり、登竜門という用語もある。それらから想像される「龍」は偉大なもの、大きなものといったイメージが湧く。

中国の古典「荘子」逍遥遊篇には、呑舟の魚「鯤」(こん)が化して「鵬」になるとある。「鵬」は、翼を広げると数千里、一飛び九万里(一里400米)といわれる巨大な鳥である。昭和の大横綱・大鵬の四股名はこれから採ったといわれる。そしてものの本によれば、この鵬が更に進化して「龍」になる、ということであり、これだと「龍」は正に天を覆う巨大なる怪物ということになる。しかし、他の中国古典にも鹿の角、蛇の身体、鷹の爪…等と「龍」の姿、形を表現したものはあるが、鱗の大きさを示した程度で全体の大きさを記述した物の存在は知らない。

日本での「龍」は、雲間に角のある顔や爪、それに一部の身体を出したものが多い。勿論、大きさはわからない。何か比較想定し易いものが龍と一緒に描いてあれば良いが少ない。唯一「龍虎相打つ…」等で虎がいる程度である。大抵が、「龍」は画面の左右いずれかの上部に雲に隠れる様にして描かれ、一方その斜め対称に岩の上から天に向かって咆哮する虎の絵である。しかし、一枚の画面ではあるが、地上の虎と天上の「龍」では、土俵が異なり、遠近法もあって、「龍」の大きさはやはり解らない。

以前、北京故宮博物院の絵画館で展示されていた明代だったか清代だったかの掛け軸の中に、人間と一緒に描かれた全身の「龍」の絵を見たことがある。これだと比較の対象が人間だけに、「龍」の大きさは一目瞭然である。驚いたことにその「龍」は子犬程の大きさであった。「龍」、とりわけ「五爪龍」は中国皇帝の象徴として、当時の一般人には描くことすらタブーとされる時代に、五つの爪ではないとはいえ、この様に小さく描かれた「龍」は極めて珍しく、それまでの神秘的なイメージと異なり、少し興醒めする程であった。結局は、やはり想像上の動物である「龍」の大小は描く者、描く場所や目的、受取る者の感性や印象に委ねられるという事なのであろうか。

翻って、“熊”で表現されるロシア同様、“龍”で表わされることの多い中国であるが、その現代中国は鵬の化した巨大「龍」であろうか、それとも明清代の掛け軸にあった子犬「龍」であろうか。人口、政経、軍事量それらに加えて自己主張の強さや傲慢さ等は間違いなく巨大「龍」と思われるのだが、中共党の透明度や国際社会での協調性、経済格差に環境意識、社会秩序等々を入れると…、やはり、よく解らない。ひょっとして想像上の社会主義国?

■筆者プロフィール:岡田郁富

長年日本の大手総合商社にて中国ビジネスに携わり、機械、プラント類の輸出をはじめ中国現法の責任者として数多くの対中投資案件を手掛け、商社退職後は主として中小企業向けに中国ビジネスアドバイザーを務める。ビジネスでの往来や長期滞在等を含め50年程に渡り中国関連に係り、豊富な経験を持つ。

■筆者プロフィール:岡田 郁富

大阪出身、大阪外国語大学卒。長年日本の大手総合商社にて中国ビジネスに携わり、機械、プラント類の輸出をはじめ中国現法の責任者として数多くの対中投資案件を手掛け、商社退職後は主として中小企業向けに中国ビジネスアドバイザーを務める。ビジネスでの往来や長期滞在等を含め50年程に渡り中国関連に係り、豊富な経験を持つ。

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