<コラム>中国人は日本人と違って「頭を下げてのお辞儀はしない」…というわけでもない

如月隼人    2016年7月27日(水) 17時20分

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外国人と交流する際、相手社会の基本的な礼儀作法は知っておいた方がよい。日本人には、そういう意識がとりわけ強いようです。資料写真。

外国人と交流する際、相手社会の基本的な礼儀作法は知っておいた方がよい。日本人には、そういう意識がとりわけ強いようです。まあ、日本は礼儀作法にやかましい国なので、相手に対して失礼があってはいけないと強く感じるのでしょうか。それはそれで、よいと思います。

ですから、日本と中国のビジネス交流がいよいよ盛んになってきた時期には、中国人のマナーを紹介する雑誌記事なんかがずいぶん出ました。私も編集部員をしていた月刊誌で、ずいぶんそんな記事を書いた。

さて、中国人の挨拶は基本的に握手です。これは中華人民共和国になってから西洋から導入した習慣です。おっと、正確に言えばソ連、つまり今のロシアからですね。それまではよく、自分の胸の前に両手を組み合わせて、相手に対する敬意や感謝を示していた。拱手(きょうしゅ、ゴンショウ)と言います。中国映画の時代物なんかで、よくやっていますね。

さて、中国人が日本人風の「お辞儀」をしないのかと言えば、実はします。日常生活における挨拶では、たしかにしません。ただし、深い感謝を示したり心から謝罪する時にはきちんと相手に頭を下げます。中国人にとっては、かなりインパクトのある動作です。

そうですねえ。中国人はよく、「日本人は礼儀正しい」と評価するのですが、これは日本人の「お辞儀」の動作を見て受ける印象も、影響しているのだと思う。日本人にとっては日常的な動作と頭では分かっていても「日本人は常に、相手に対する感謝を示し、自分を卑下する姿勢を示す」と、感覚的に受け取ってしまうでしょうからね。

ちなみに、中国語で「頭を下げてのお辞儀」は「鞠躬(ヂューゴン)」と言います。「鞠」は「体を小さく丸くする」で、「躬」は「体を弓のようにする」。ですから、日本人がする軽く頭を下げる会釈ぐらいでは「鞠躬」にはならないとも思えるのですが、中国人は日本人が軽くお辞儀をしても「あ、『鞠躬』している」と思うようです。

中国人にとって「鞠躬」すなわち「お辞儀」とは、そうですねえ、日本で言えば不祥事を起こした会社の責任者が、記者会見なんかで深々と頭を下げますよね。ああいった動作を意味するわけです。

河北省ケイ台市では23日、市長をはじめとする市政府の幹部7人が、同市で20日に発生した大洪水について、「対応能力が不足していた」などと謝罪して、頭を下げました。今後は省の調査が始まることになりますが、「どんな処分も受け入れる」と表明したことからは、彼らは事態の重大さを痛感していると判断してよいでしょう。

ただ、日本の会社の「不祥事記者会見」を見慣れた目からすれば、お辞儀がなんか、決まっていないようにも見える。まあ、慣れていないのでしょうから、そこだけを取り上げて批判するつもりはありませんが。

逆に日本の「不祥事記者会見」ではあまりにも非の打ちどころのない頭の下げ方をした社長さんなんかに「おいおいおい。形はビシッと決まっているけど、批判をかわそうとしているだけじゃないのかい。本当に心から反省しているのかね」なんて言いたくなることも、ありますからねえ。私って、意地が悪すぎかな。

私がこれまでに見た中国人の「お辞儀」で、もっとも印象に残ったのは、2008年5月12日に発生した四川大地震の時に、同省幹部がした「お辞儀」でした。地震発生からしばらくしてから正式な場で、各方面からの絶大な支援に対する感謝を示しました。とてつもなく苦しい状況にあって、国内外からの支援を本当にありがたいと感じる心が伝わってくるお辞儀でした。(7月26日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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