<コラム>なぜ中国で野生動物保護の精神が定着しないのか?

荒木 利博    2016年7月30日(土) 9時50分

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中国国内でも密猟は盛んに行われている。国土が広すぎて監視が行き届かないし、当局も真剣に取り締まっているとは思えない。加えて、発展途上国にありがちな、指導者も国民も環境は二の次的な意識の表れに過ぎない。筆者撮影。

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2015年の中国人による日本領海内で赤サンゴが乱獲されたり、今年ペルーで摘発されたタツノオトシゴの大量密漁が国際問題になっているが、もちろん中国国内でも密猟は盛んに行われている。国土が広すぎて監視が行き届かないし、当局も真剣に取り締まっているとは思えない。加えて、発展途上国にありがちな、指導者も国民も環境は二の次的な意識の表れに過ぎない。

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国家一級や二級の保護動物もまるでお構いなし、むしろ希少動物ほど金になるという極めて単純な動機である。発展途上国の共通課題である、野生動物保護の精神はなかなか定着しない。しかも、世界に名だたる珍味志向の強い中国ゆえの悲劇である。

郊外を車で走っていると、道路わきでキジやウサギ、アナグマやキツネ、生きている大きなカメ類まで手に持って、ドライバーに売り込んでいるのを頻繁に目撃した。現金収入が限られた農民にとっては決して少なくない臨時収入となる。

アウトドアフリークの筆者は、中国の郊外や原野で遊んでいると、野ウサギ、キジ、ヘビ、猛禽類などの野生動物をよく見かける。こうした野生動物が多くいるということは、彼らを狙って罠を仕掛ける農民が放っておくわけがない。実際に農民が仕掛けた罠を見かけることはよくあるし、不幸にも罠にかかって命を落とした野生動物も時折見かける。そして恐らく、中国全土で驚異的な数の罠が仕掛けられていることは、想像に難くない。何しろ、最も簡単なものなら、針金一本で獲物の首が絞まるように輪っかを作り、獲物の通りそうな場所に輪の反対側の端を木に結び、なるべく目立たないように隠すだけだから子供にさえ出来てしまう。

2015年の話だが、(筆者の狩猟民族DNAが目覚めた結果か)遼寧省の田舎にパラグライダーに行った際に、罠にかかって死んでいる野ウサギを、また別の日には冷たくなった立派な雄キジを見つけた。

白状すると、この時の野ウサギもキジも、大喜びする中国人のパラグライダー仲間たちが、当然のごとくレストランに持ち込んで料理してもらい、全員(もちろん自分も含め)の胃袋に収まってしまった。自然と動物好きの筆者は何とも言いようのない心境を胸に収めたまま。人間一人の命でさえ相当安い中国では、野生動物たちが保護されるようになるまでまだまだ道遥か、である。

■筆者プロフィール:荒木利博

アメリカで学位取得後、アメリカとドイツの駐在勤務を経て、1996年から2015年まで中国に滞在、合わせて四半世紀以上を海外で暮らす。プライベートでは、60代半ばになるまで中国のアウトドアライフを謳歌した。2016年初頭より東京のリロケーション関連企業に勤務している。

■筆者プロフィール:荒木 利博

昭和24年に生まれ、現在都内在住。米東部州立大学卒業後、アメリカとドイツの駐在を経て、1996年から2015年まで中国に滞在、合わせて四半世紀を海外で暮らす。中国では香港の大手ディベロッパーのKerry(嘉里)やShui On(瑞安)に籍を置き、大連、北京、上海で大規模不動産開発に参加。プライベートでは、中国各地をパラグライダーで飛んだり、無免許でハーレーを乗り回したり、大連湾でカヤックを漕いだりと、60代半ばになるまで中国のアウトドアライフを謳歌した。2016年初頭より東京で外国人向け総合不動産サービスを提供している。地球の暮らし方(ダイアモンド社)2005年上海版編集協力した実績を持つ。

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