<写真特集>いつか見た風景―記憶を連れた旅路

鐘[巾韋]    2016年7月25日(月) 15時0分

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荒涼とした風景に漂う懐かしく切ない抒情。いつかどこかで感じた心象風景を現実の風景の中に追い求める鐘[巾韋]の写真作品は、かつて読んだ本、観た映画、聴いた音楽、愛した人の印象や面影を溶け込ませ、彼の心を象徴する抽象画に仕立てられている。

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鈍色の風景に浮かび上がる色彩たち。どこか寂寞とした風景の中に、ふと現れる人物。その光景は荒涼としているのに、なぜか懐かしく、切ないほど抒情的である。

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鐘[巾韋](ジョン・ウェイ)はファインダーを覗く時、その風景の中に心を解き放つ。そして、言葉にならない感情が画面に溶け込んでいく。シャッターを切るたびに、彼は自分の心が地球と会話していると言う。

彼の切り取る風景はすべて、不思議な既視感に包まれている。それは、彼がいつかどこかで感じた心象風景を、現実の風景の中に追い求め続けているからかもしれない。そうとするならば、彼の写真は現実の写し絵でありながら、彼の心を象徴する抽象画とも言えるだろう。

「私は撮影の旅に、いつか読んだ本、観た映画、聴いた音楽、そして、かつて愛した人の印象や面影を連れていきます。そして、旅先で見た風景の中にそれらの影を見出し、カメラで撮影するのです。」

過去に患ったといううつ病の経験を経て、彼は旅と写真撮影に癒しを見出した。彼の心の底流は、現実の光景を超えて見る者に語りかけ、その心をも癒してくれるようだ。(文/中野今日子)

●鐘[巾韋](ジョン・ウェイ)

1971年生まれ。09年に写真家としての活動を始めてから、旅と撮影にのめり込むようになる。以後、風景を中心とした抒情的な写真を発表し続けている。代表作に「憂いのハルハ川」「時間」「再び西島へ」など。

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