<写真特集>冷淡の中の柔和―写真の幻想、絵画のリアル

麦哲倫(マゼラン)    2016年7月27日(水) 22時0分

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「写真よりも幻想的で、絵画よりもリアルで、その両者よりも美しい」そんな風景写真を撮り続ける麦哲倫。濁った靄、くぐもったグレーやブルーに包まれた陰鬱な風景にほんのりと柔和さを忍び込ませ、独特の美感を醸し出す。

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その写真は絵画のようである。風景写真家・麦哲倫(マゼラン)の作品を見て誰もが抱く印象であろう。「写真よりも幻想的で、絵画よりもリアルで、その両者よりも美しい」。そんな風に評されることもある。

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ファインダーに収まるすべての対象物を微細に記録しようなどという写真の義務は早々に放棄しているように見えるその画面は、濁った靄に包まれ、あるいはくぐもったグレーやブルーに彩られ、すべてをぼやかしてしまう。もしくは荒涼とした被写体を追い、陰鬱な情緒を滲ませている。しかし、その冷たい、もの静かな、悲しげな美しさはどうだろう。拡散する光の粒子のザラつきが印象派的な柔和さを呼び、冷淡な画面のどこかにはほんのり微かに薄紅色が差す。それは夕日であったり、朝日であったりする。

中国各地の自然風景を主題にしながら、おおよそ中国らしさや東洋風情とはかけ離れた空気感を持っている。とくに万里の長城を映した作品群は秀逸だ。民族の誇りを体現するはずの偉大な歴史建造物も彼の手にかかれば、自然の中で朽ち果てていくただの廃墟となる。しかし、その自然なありようは、“民族のプライド”“人類の遺産”といったフィルターを通すよりもずっと美しく映る。(文/山上仁奈)

●麦哲倫(マゼラン)

風景写真家。1978年生まれ、北京出身。2000年に学校の撮影の授業で写真に魅せられて以来、全国各地で写真を撮り歩いている。作品は自身のサイト「流年.砕影」で発表しているほか、写真誌「撮影之友」「影像視覚」などにも収録されている。代表作に「長城」「冬のリズム」「游山歴水・把酒臨風」など。

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