<インタビュー・台湾政権交代(5/6)>蔡英文政権の対中政策、現状を維持するが「一つの中国」は認めず―李明峻・台湾国策シンクタンク研究発展部長

Record China    2016年5月20日(金) 5時50分

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民進党系のシンクタンク、台湾国策智庫の李明峻・研究発展部長は、蔡英文政権の対中政策について、「中国の主張には従わないが、現状を維持する」と指摘。「結果的には、『一つの中国』を認めるものではない」との見方を示した。

台湾では5月20日、馬英九国民党政権から蔡英文民進党政権に交代する。これを前に、政官財言論界の有力者6人にインタビューした。民進党寄りのシンクタンク、台湾国策智庫(シンクタンク)の李明峻・研究発展部長は、蔡英文政権の対中政策について、「中国の主張には従わないが、現状を維持する」と指摘。「結果的には、『一つの中国』を認めるものではない」との見方を示した。

李明峻氏は京都大学で博士号に取り、台湾中原大学財務経済法律系助教授、台湾国際法学会秘書長、台湾東北アジア学会秘書長と日本岡山大学法学部准教授などの経歴があり、台湾で重要な日本研究者の一人である。(聞き手・ジャーナリスト・相馬勝)

――次期台湾総裁の蔡英文・民主進歩党(民進党)主席は中国が主張する「一つの中国」と「92年合意」について、どういう姿勢をとっているのでしょうか?

李明峻部長=1992年に中台間の会議は確かに存在しましたが、その際には中台間では合意そのものは存在していないという立場です。つまり、92年の会議は、実務的な問題を話し合っただけであり、「一つの中国」などというような政治的な問題は話し合っていないというのが公式的な見解なのです。いわば「一つの中国」と「92年合意」というのは、せんじ詰めれば同じものですが、台湾の人々の80%はこれに納得していないのです。

中華人民共和国総統は「一つの中国」については将来、実現するかもしれないと言っていますが、実質的に中国と台湾に分かれているという現状維持を肯定しています。「一つの中国」と言っても、それが実現するのは将来の話であり、それは100年後かもしれないというような漠然としたとらえ方をしているのではないでしょうか。

1960年代や70年代には「中華民国」と「中華人民共和国」が並存するという「二つの中国」ということ概念があったが、中国自体はずっと「一つの中国」という立場を主張しています。この「二つの中国」という概念は主に米国からの影響が強い考え方でした。馬英九政権になって、馬総統がこの「二つの中国」に言及せず、ずっと「一つの中国」を主張しています。

――「一つの中国」について、蔡英文氏の考え方というと?

李明峻氏 蔡英文氏は「既存の政治的基礎の上」とか「中華民国の憲政の上で」という言い方をしています。これは現状を維持するということを表しています。中国の主張には従わないが、現状を維持するということであり、結果的には、これは「一つの中国」であることを認めるものではないというわけですね。

――習近平政権は蔡英文政権に対して、圧力をかけてくるのではないですか?

李明峻氏 これは私の個人的な意見ですが、習近平政権は台湾を無視すると思います。習近平政権はいま、南シナ海とか、対米問題、北朝鮮問題など大きな問題を抱えており、台湾と関わっている余裕はありません。馬英九政権のときのような「政府と政府の関係」はストップするが、基本的に強硬な態度はとらないということです。

せいぜい、台湾を訪問する観光客を減らすことくらいでしょう。とはいっても、中国人観光客で潤っているのは、中国人が台湾に進出して作った中国系の会社です。台湾側の協力者は国民党系の会社ですので、民進党支持者にとって、中国人観光客が減っても経済的にはあまり関係ありません。

このため、台湾が国連に加盟しようとするなどの極めて政治的な動きをしない限り、台湾に圧力をかけることはしないでしょう。

むしろ、民進党にとって大きな問題は、支持母体である独立派からのプレッシャーです。

――そうですね。私も台湾で取材した際、蔡英文氏は年金問題とか、国民党が

作った制度の改正などに熱心だなと感じました。

李明峻氏 そうです。蒋介石総統が台湾を統治してから、中国国民党の政権が続いていましたから、台湾の社会制度や法制度などあらゆる制度が国民党や軍を優遇するようにできています。そのような1949年以来、50年以上にわたって存続してきた制度を改革するのは容易ではありません。

 

しかし、1月の選挙では、立法院(国会に相当)選挙でも民進党が過半数を制しましたので、改革に対する期待が高まっています。停滞する台湾経済の立て直しとともに、不合理な制度の改革が蔡英文氏に課せられた大きな命題といえるでしょう。

(<6/6>に続く)

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