中国は2020年に世界最大の消費市場に、GDPは世界の5分の1占める―「第13次5カ年計画」専門家委員が東京で会見

八牧浩行    2016年3月18日(金) 8時30分

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17日、胡鞍鋼・清華大学国情研究センター長(教授)が日本記者クラブで会見。先の中国全人代で討議された「第13次5カ年計画(2016〜20年)」について説明。中国のGDPは2020年に為替、購買力両方式で世界の5分の1に達するとの見通しを明らかにした 。

2016年3月17日、中国の代表的経済学者である胡鞍鋼・清華大学国情研究センター長(教授)が日本記者クラブで会見した。先の全国人民代表大会で討議された「第13次5カ年計画(2016〜20年)」について説明。2020年に中国は世界最大の消費市場となり、国内総生産(GDP)は為替、購買力両方式で世界の5分の1(20%)に達するとの見通しを明らかにした 。

同計画は向こう5年間にわたる経済・社会の運営計画で、中国経済の先行きを占う指標として関心を集めている。胡氏は経済、政治、社会を総合的にとらえる「国情研究」の第一人者。同計画の専門委員会委員を務め、新著に「第13次5カ年計画」(日本僑報社刊)がある。発言は次の通り。

第13次5カ年計画は、年平均6.5%以上とする成長目標を示した。構造改革と経済成長を両立させ、(1)絶対的貧困の撲滅、(2)環境汚染の減廃、(3)技術革新(イノベーション)―などを推進する。

交通網整備に年2兆元(約34兆円)以上を投じるなど、インフラ投資で景気を下支えする。高速鉄道では総延長を20年までに現在の1.5倍の3万キロに延ばす。新5カ年計画期間中の鉄道投資総額は年平均7600億元を見込み、高水準の投資を続ける。

中国政府は不振企業の淘汰・再編を徹底するとしているが、失業増や賃金減で個人消費への悪影響も懸念される。高速鉄道などインフラ投資を通じて鉄やセメントの需要を生み出すと同時に、雇用を維持する狙いもある。

技術革新(イノベーション)を通じた産業の高度化と構造改革を発展の中核に据えつつ、成長戦略にも重点を置き、構造改革と成長戦略を両立させる。

2020年に為替、購買力両方式でGDPは世界の5分の1(20%)に達する。2003年に我々が予測を発表した際、だれも信用しなかったが、我々の予測は正しかった。不確定要素を考慮しても、我々の研究に大きな影響を与えず、自信を持ってはっきり言える。

20年には中国のエンゲル係数は27%に下がり、世界最大の消費市場になる。モノだけでなく旅行、サービス分野も含め消費意欲は爆発していく。15年に40億人、20年には65億人が旅行する。海外旅行は15年に1億2600万人、20年には1億7500億人に拡大する。

経済協力開発機構(OECD)によると、19年には中国の研究開発投資は米国を抜き世界最大になる。特許や商標やインターネット分野でも世界一になる。12次5カ年計画で飛躍的な発展を遂げたが、13次ではさらに発展。世界1となり、貧困率もゼロとなる。

高齢者人口は現在2億2000万人で、2040年には4億人に達する。日本の経験を学びたいが、日本の経験が役に立つかどうかわからない。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、日本が90年代に国際通貨基金(IMF)のような組織を作ろうとしたが、米国の反対でできなかった。世界のインフラ投資資金は不足しているので、全体のニーズにこたえるために、国際的に多くの役割が期待できる。AIIBが発展すれば、アジア地域に還元することができる。資金供給源は多ければ多いにこしたことはない。様々な機関が協力して開発途上国の役に立てればと思う。

1997年のアジア危機の際、失業者が5000万人を超える規模で出ると懸念されたが、2008年のリーマンショック以降、レイオフで失業した農民工は約2000万人だったが、その後、市場の中で自然に消化され、大きな問題につながらなかった。

今回の局面で、余剰設備の解消に伴う余剰人口は1000万人と言われているが、実際は300万人程度だ。過剰能力清算という問題があり、失業の懸念がある人口を最大1000万人と見積もっても、3億7000万人の都市就労労働人口のうち、37分の1に相当するだけだ。1000億人民元(約1兆8000億円)を投じて改革を推進していく。ミクロの個々の問題は国全体としては大きな問題ではない。十分な訓練をしてスキル(技能)を高めて、低所得の職場から高所得の職場に移ってもらう。97年当時とは対応策が違う。

2000年には世界トップ500企業のうち、中国企業はわずか9社で、すべて公営企業だった。ところが15年には106社がノミネート。民営企業は7社だったが、今年は10社になる。中国経済は(国有・民間の)「2本足」であり、7700万社の中小零細企業が支えている。国有企業はハイブリット型で、極めて厳しい競争の中で発展してきた。インドネシアなどアジア諸国は中国の国有企業を客観的に分析し、勉強している。

高齢者人口は現在2億2000万人で、2040年には4億人に達する。高齢化問題は「負担」だけではなく、「新たな価値」を生み出すので、段階的に分けて対応していく必要がある。全国レベルで高齢者向けサービスの方策を打ち出している。中国は既に日本、韓国、台湾などのサービス手法を研究している。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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