<ミャンマー総選挙>スー・チー党首、全方位外交展開か=中米印日との友好重視「国民が安心できる国に」訪日時の会見で強調―最大野党圧勝へ

八牧浩行    2015年11月11日(水) 7時29分

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ミャンマーの総選挙は、アウン・サン・スー・チー党首が率いる最大野党・NLDが圧勝の勢い。同氏がトップに立てば日米中印をはじめ多くの国々との友好関係を重視する全方位外交を展開するものと見られる。写真は2013年4月17日、日本記者クラブで。

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ミャンマーの総選挙は開票が進み、アウン・サン・スー・チー党首が率いる最大野党・NLD(国民民主連盟)が圧勝の勢いとなっている。政権交代への期待も高まっているが、NLDは党員らに、勝手なパレードや祝賀会を慎むように指示を出し、引き締めを図っている。政権交代が視野に入ってきた中、スー・チー同党首が、反NLD勢力に足をすくわれないないよう、配慮している様子もうかがえる。

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ミャンマーは中国とインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国に囲まれている。常に周辺の大国から直接圧力を受けるたため、外交は安全保障にとって最重要課題だ。「大統領以上の存在を目指す」というスー・チー氏が政権を握れば日米中印をはじめ多くの国々との友好関係を重視する全方位外交を展開するものと見られる。

スー・チー党首は2012年4月の補欠選挙に当選して国会議員となってから、タイ、米国、日本、ドイツなど10カ国以上を訪問。 今年6月に5日間にわたって中国を訪ね、11日に北京・人民大会堂で習近平国家主席と会談した。中国は元首でない同党首を異例の厚遇で迎え、習国家主席は「中国とミャンマーは隣人同士だ。隣人は選べない」などと語りかけるなど終始友好的態度だったという。

日本には13年4月中旬に来訪、安部晋三首相らと会談。日本記者クラブで記者会見した。筆者も同席したが、黄色の民族衣装をまとったスー・チー氏は、大国に隣接し脅威に感じないかとの質問に対し「中国とインドなどと接しているが、良好な関係を保っている。中国の共産党政権を一番最初に承認したのはビルマ(ミャンマーの旧名)だ」と強調した。その上で、「大国が小国を乗っ取ってしまうような野蛮な時代ではない。ビルマは中立国であり、欧米諸国とも良好な関係を維持している」と述べた。

この時、スー・チー氏は「国家の統一と平和の実現が必要だ。法の支配を確立し、国民一人ひとりが安心できる国にしたい」と語り、大統領職への強い意欲を示していた。自らの政治信条について、「派手な言葉で語ることより国民に正直でありたい」と自信満々に強調していたのが印象に残っている。 日本からの援助について「軍事政権ではなく国民に向けた支援をお願いしたい」と要望。具体的に「経済援助は、都会や農村の若者の雇用の創出につながるようなものが望ましい」と語った。また、自国名をミャンマーではなく「ビルマ」と呼んでいることについて「ミャンマーは軍事政権が付けた呼称。ビルマは世界で古くから親しまれ、語感もよい」と説明した。

ミャンマーは大国に囲まれ、地政学的に微妙な位置にあるが、スー・チー氏は英国に留学し夫君は英国人。欧米での人脈は絶大で、中国、インド、日本、ASEANとも、相次ぐ訪問で良好な関係を維持している。国内的に慎重な姿勢を堅持して軍部とうまく連携し、ネックと見られる少数民族問題や経済問題を乗り切ることができれば、指導力を発揮するものと見られる。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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