アベノミクスにエール?オランダは雇用・社会保障の大胆改革断行で「強い経済」を実現=移民受け入れも必要―蘭前首相が秘訣明かす

八牧浩行    2015年10月16日(金) 8時34分

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バルケネンデ前首相が同国の労働市場・社会保障改革について講演した。失業者が早期に仕事を見つけられるように労働規制を改革し、福祉受給条件の厳格化にも取り組んだ事例を列挙。政府、産業界、労働界が連帯し対話することによって「強い経済」を実現した、と強調した。

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2015年10月15日、オランダのバルケネンデ前首相が日本記者クラブで、同国の労働市場・社会保障改革について講演した。失業者が早期に仕事を見つけられるように労働規制を改革し、福祉受給条件の厳格化にも取り組んだ事例を列挙。政府、産業界、労働界が連帯し対話することによって「強い経済」を実現した、と強調した。

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バルケネンデ氏は2002年から8年間首相を務め、この間に雇用・社会保障改革を断行。この結果、1人当たりの国内総生産(GDP)、単位労働時間当たりのGDP、雇用率は世界でトップクラスに躍り出た。このすべてで日本を大幅に上回っている。発言要旨は次の通り。

オランダは1950年代に国民年金制度がスタートし、60〜70年代に福祉国家として社会保障制度を充実させてきた。ところが80年代の終わりぐらいから、経済的な負担が増大、若者の失業が増えた。雇用の機会を若年層に与えるため、50〜60歳で退職する制度を導入したが、年金負担額が急増。保険料のうち3分の1がこの制度に回されるほどだった。

私は2002年の首相就任後、この制度を廃止するなど労働市場と社会保障について大胆な改革を推進した。労働分野では失業者が早期に仕事を見つけられるように、労働規制を改革し、労働市場を柔軟なものにした。パートタイム労働者の全体に占める割合は4割近くに達し先進国でトップである。一方で、福祉受給条件の厳格化や“身体検査”なども実施。この結果、社会保障に依存する人が劇的に減少した。

当初メディア、組合はじめ多くが反対し、最大労組からは「ホラー内閣」と呼ばれたほどだ。反対する人々に対し、経済の強化につながると説得し、政府、産業界、労働界に連帯と対話を呼びかけ、実現した。日本の安倍政権の経済政策「アベノミクス」も同様の問題を抱えているようだが、まずコミュニケーションが重要である。

改革を引き延ばせば状況は悪化し、コストが高くつく。年金改革と柔軟な労働市場の実現には勇気と信念が必要だ。欧州では北欧、ドイツ、オランダは改革できる。08〜09年の欧州危機を経て、スペイン、ポルトガルも変わったが、フランス、イタリアがまだ時間はあると待ちの姿勢なのは疑問だ。

オランダは労働人口の減少をカバーするために、ポーランドやアフリカ諸国はじめ、カリブ諸国、中国などから多くの移民を受け入れている。労働許可を取得したスキルの高い人たちが多く、「強い経済」づくりに不可欠である。女性の労働参画も積極的に進めており、25〜30歳の収入は女性が男性を上回っている。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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