新国立競技場、設計再募集への応募は「著名建築家と組んだゼネコン2社だけ」=神宮の森を残す、質素な案にすべきだ―市民団体代表

八牧浩行    2015年10月3日(土) 9時2分

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1日、計画が見直されることになった新国立競技場について、「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」共同代表の作家・森まゆみ氏と建築家・大橋智子氏が記者会見した。設計案の再募集で名乗りを挙げているのは「著名な建築家と組んだゼネコン2社2組だけ」と指摘した。

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2015年10月1日、巨額の建設費に批判が高まり、計画が見直されることになった新国立競技場について、市民団体「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」共同代表の作家・森まゆみ氏と建築家・大橋智子氏が記者会見した。設計案の再募集で名乗りを挙げているのは「著名な建築家2人と組んだゼネコン2社2組だけ」と指摘。未来の子供たちに負担がかからないよう、質素なものが望ましい、との考えを示した。同会は2年前に発足し、新国立競技場を巡る問題について検証し、是正を求めてきた。両氏の発言要旨は次の通り。

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白紙撤回という国家的な大失敗の後、狭隘な神宮の森に巨大スタジアムをつくるという計画は本来断念すべきであった。神宮の樹木が果たしている防災やヒートアイランド現象抑止効果などについても、考慮されなければならない。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、IOC(国際オリンピック委員会)が1999年に策定した「アジェンダ21」(可能な限り既設のスタジアムを使い、新設する際は既存の規制に従い、環境や社会、文化を損なわないよう求めた行動計画)に基づいて、既存スタジアムを改修すべきだった。国の力が強くて一方的に進められてきたが、市民の考えを組み入れながら進めるべきだ。

解体してしまった後になって、白紙撤回となったことが悔やまれるが、設計見直しに当たっては、環境や社会、文化を損なわないよう必ず考慮されるべきだ。

設計者のザハ・ハディッド氏の案を実現するために、東京都は風致地区である神宮外苑にかかっていた15メートルの高さ制限を75メートルに緩和してしまった。この失敗を教訓に、物事が闇の中で決定され、国民の意見が反映されないシステムが、この機に変革されるように切に望みたい。

新たな設計コンペに応募できるのは、5つのスーパーゼネコンとそれと組んだ建築家、設計会社ぐらいに限られる。もし応募が極端に少ないのであれば、コンペとして成立しないことを喚起しておきたい。

「東北の復興の姿を見せる」のが大義名分のオリンピック工事により、コスト高や人材不足を招くことをどう考えていたのか。東北復興やオリンピック関連再開発と資材・人材の食い合いになって高騰することを予見できなかったのか。

関係者が責任ある対応をすることにより、未来の子供たちに負担がかからないようにしてもらいたい。維持費、修理費も考慮すべきで質素なものが望ましい。ちなみに新宿の東京都庁舎の建設コストは1600億円だったが、毎年の維持費のほか、20年経過後の改修費が700億円以上にも上る。子々孫々に過大な負担を残すべきではない。物価水準が違うので一概には比べられないが、最近のオリンピックメインスタジアムの建設費は、北京「鳥の巣」が500億円、ロンドンが600億円とはるかに低廉だった。

今回の募集は前回と異なり、(包括的な)案を選ぶプロポーザル形式となっている。募集要項はあるが、最初の案を、そのまま建設しなければいけないというものではない。施主と相談して内容も変えられると思う。まだまだ会として頑張っていかなければならないと考えている。噂では(再募集で名乗りを挙げているのは)著名な建築家2人と組んだゼネコン2社2組でないかと言われている。それがコンペの体をなすのかわからないが、どちらに決まるにせよ、私たちの思いを伝えていきたいと思う。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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