人口急増!イスラム圏の訪日観光客呼び込みへ、アノ手コノ手=ハラール食普及、礼拝所新設…―日本各業界、“爆買い”中国人並み潜在力に期待

八牧浩行    2015年7月11日(土) 10時13分

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イスラム圏は有望な市場と目され、日本はじめ世界各地でそのパワーを取り込む動きが活発化している。イスラム教徒は人口伸び率が高く、世界人口に占める割合は15 年後には3人に1人となると予測されている。写真は「イオンモール幕張新都心」のイスラム礼拝所。

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世界人口の約4分の1、約19億人にのぼるイスラム教徒。マレーシアやインドネシア、パキスタン、バングラディッシュ、中央アジア諸国などアジア圏には10億人近くが暮らしている。このうち中国のムスレムは新疆ウイグル自治区を中心に約2000万人に達する。経済成長と人口増加が著しく有望な市場と目され、日本国内でもその需要を取り込む動きが活発化している。イスラム教徒は人口伸び率が高く、世界人口に占める割合は15 年後には3人に1人まで増えると予測されている。

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こうした中、日本を訪れるイスラム教徒が、東南アジア5カ国の観光ビザ発給要件緩和もあって急増している。ところが日本をはじめとする非イスラム国で、イスラム教徒は常に食の問題に悩まされる。イスラム教の戒律で、不浄なものとされる豚由来の食べ物やアルコール類を含む食品を口にできないからだ。加工食品を購入する際は成分表示を確認し、時にはメーカーに直接問い合わせるなど苦労が絶えない。

◆豚肉・アルコールはご法度

イスラム教徒の多い国々では消費者の不安を和らげるため、販売されている食品などがイスラムの教えにのっとった健全なもの(ハラール)であるかを第3者機関に認定してもらう「ハラール認証制度」が普及している。食品の含有成分のほか、牛、鶏、羊などの豚肉以外の食肉であっても適切に処理されたかどうか、商品が豚肉と一緒に保管・輸送されていないかなど細かな規則が定められている。ハラール認証はイスラム圏への輸出販売やサービスを行う際の“通行手形”となっており、多くの日本企業が厳しい条件をクリアし、イスラム圏でビジネスを展開している。

 

ハラール認証の認定機関は日本国内にも存在。その一つがNPO法人「日本ハラール協会」だ。世界的に権威のあるマレーシア政府のハラール認証機関(JAKIM)やシンガポール政府などから日本での認証機関として認可され、イスラム教徒市場への関心の高まりから、国内で認証を受ける日本企業が相次いでいる。

同協会は(1)イスラム法で合法かつ、健康・衛生的な食の提供を行う、(2)各業界のエキスパートと連携し経済活性化、異文化交流に寄与する―の2点を目的としている。協会の幹部は「東京オリンピック・パラリンピックの2020年開催に向けて外国人を呼び込もうと関心が高まった。全国の食品取扱店・業者の方々が協賛している」と語る。

現在、同協会のハラール認証を取得している企業は食品、化粧品、医薬品など約70社。倉庫、日本通運な運輸会社や倉庫会社も含まれている。研修会も毎月東京と大阪で交互に開催され、多くの企業や官庁担当者が参加。この研修により毎年約500人が受講証明を取得する。

◆ハラール事業は欧米でも急拡大

世界ではハラール産業はもはや珍しい分野ではなく、マレーシアやサウジアラビアなどイスラム圏の国々はもちろん、米国、欧州、オーストラリア、ブラジルなど非イスラム圏でも年々支持されているという。

 

マレーシアで2006年から毎年開催される「世界ハラールフォーラム」は、多くの非イスラム圏の各代表が出席し、世界中のハラール事業の動きについて話し合う場となっている。日本ハラール協会も参加し、情報交換や今後の事業展開について協議する。大阪で10月に開催される「アジア・フードショー2015」にも出展し、ハラール商品展示、ハラール和食実演などでハラールをアピールする予定。

日本製ハラール商品の対外アピールは必要不可欠。協会の持つ海外でのネットワークを利用し、海外でのメディア媒体への掲載、展示会、国際会議出席の際は日本製ハラール製品のアピールを協会のちらしやホームページ上で紹介しているという。

◆成田空港やイオンモールに礼拝所

イスラム教徒にとって、気軽に祈祷できるモスク教会やイスラム礼拝所が極めて少ないのが悩みの種だったが、誰でも使える祈祷室やハラール食事メニューを用意するイスラム教徒向けのサービスが急速に拡大している。千葉市美浜区の「イオンモール幕張新都心」の4階に設置された礼拝所には、備え付けの水場があり、手足を洗う。天井にはメッカの方角を示す表示。イスラム教徒たちが静かに祈りを捧げていた。「1日5回の礼拝はムスリムの義務なので、こうした施設はありがたい」という。

成田空港や東京駅から車で30分。幕張新都心は国際会議場「幕張メッセ」を核に、千葉県が国際化を目指して開発を進めてきた街だ。外資系企業の拠点が多く、外国人の姿が目立つ。近くの神田外国語大の食堂やホテルスプリングス幕張レストランでも「ハラール食」を提供している。

成田空港は世界の100以上の都市に就航し、イスラム圏の人の出入国も多い。イスラム教徒用の礼拝室が、昨年2室新設され、計4室となった。全メニューがハラール認証を受けたうどん店と天ぷら店も空港内にオープンした。成田空港に近い「酒々井プレミアム・アウトレット」(千葉県酒々井町)も、訪日外国人の利用増加をにらみ、ハラール対応の和食店も新設した。

少子高齢化で人口が減少する日本では、経済成長戦略の一環として、外国人訪日客や居住者を増やすことが急務。イスラム圏からの観光客の潜在力は、爆買いで有名な中国人観光客に匹敵すると期待されている。イスラム教徒にとって居心地の良い環境づくりが望まれる。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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