「世界一の経済規模となる中国を取り込むべきだ」というのが世界共通の考え方=「潜在的脅威論」は過去のもの―早大教授が安保法制を批判

八牧浩行    2015年5月16日(土) 8時59分

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14日、植木千可子・早稲田大教授は日本記者クラブで講演し、政府が同日閣議決定した集団的自衛権行使を含む安保法制について、国際秩序の維持のため世界一の経済規模となる中国を取り込むべきだというのが、世界の多くの国の考え方であると指摘した。

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2015年5月14日、国際安全保障問題に詳しい植木千可子・早稲田大教授は日本記者クラブで講演し、政府が同日閣議決定した集団的自衛権行使を含む安保法制について話した。国際秩序の維持のため世界一の経済規模となる中国を取り込むべきだというのが、世界の多くの国の考え方であると指摘。日本は「中国を潜在的な脅威だとみなす」という一昔前の考え方にとらわれていると批判した。発言要旨は次の通り。    

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日本は専守防衛を掲げ、自分からは攻撃も紛争への関与もしないことで戦後平和の道を歩んできたが、集団的自衛権の行使は、「自分を守る国」から「ほかの国も守る国」への根本的な転換となる。現行憲法では守れないのか。守れないなら改憲するのか。そうした根本的な議論がないまま、現行憲法と現行法との整合性を無理に図ろうとしたため、極めて複雑でわかりにくい法制となっている。その結果、抑止が低下する危険や、海外に派遣される自衛隊員の安全が確保できない可能性が懸念される。

 

世界全体を見れば、中長期的には日米欧とも国力は低下する。特に米国の影響力は財政難と国民の厭戦気分により低下し、「世界の警察官」でなくなる。国際通貨基金(IMF)の予測などでも早晩中国がトップに立つが、その意味を考えなければならない。中国では国内問題が山積しており、米国とコトを構えたくない。米国は選択的に関与するものの、米国は中国との小競り合いに巻き込まれたくない。大国間の戦争の可能性は低い。

むしろ世界的に中国との協力の必要性が増大する。中国は米国にとって最大の経済パートナーであり、日本にとっても同様である。

日本の集団的自衛権容認など安保法制の問題点は、何を抑止するか不明瞭であり、日本がいつ、何をするかも曖昧。さらに武力行使の基準が明確でない。このため、判断は難しく、判断できなければ米国に追随するしかなくなり、事態がエスカレートする恐れもある。一方で自主的に判断して米国の要請を断れば、日米関係が悪化する懸念も生じる。

「処方箋」としては、何を守るのか、どういう世界を目指すのか、もっと国民的な議論を展開すべきである。中国と信頼醸成に努め、関係を改善させることが必要である。

大国同士の戦争は考えにくい一方、中東やアフリカなどで国内統治が弱まった地域が国際テロの温床になり、その結果、世界が全体的に住みにくくなっていく。主要国が集団で米国と一緒になって国際秩序を維持し、その中に中国も入れていく形でしか秩序を維持できない。これが世界の多くの国の共通の考え方だが、日本は中国を潜在的な脅威だとみなすという一昔前の考え方にとらわれている。    

  

日本が安全保障面で新しい一歩を踏み出すのなら、先の戦争を自分たちで総括することが必要。あの戦争が拡大し、多くの命が奪われたのは当時の日本社会のどこが機能しなかったからなのか。どういう制度があったら、防げたのか、戦争の歴史の検証をきちんと行うことが重要だ。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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