日本は旧満州など他人の土地に踏み込み侵略したのでドイツより悪質=天皇の戦争責任、あいまい処理も尾を引く―拓殖大教授が「日独戦後処理」比較

八牧浩行    2015年5月14日(木) 10時20分

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13日、佐藤健生 拓殖大学教授は講演し、ドイツが取り組んできた周辺国やイスラエル・ユダヤ人社会との「過去の克服」と日本の取り組みについて比較した。「教育や歴史研究などを通じて「戦争再発の防止」を推進すべきである」と呼びかけた。

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2015年5月13日、戦後処理の日独比較に詳しい佐藤健生 拓殖大学教授は日本記者クラブで講演し、ドイツが取り組んできた周辺国やイスラエル・ユダヤ人社会との「過去の克服」と日本の取り組みについて比較した。「日本は旧満州など『固有の領土』でない他人の土地に踏み込み侵略したのでドイツより悪質かもしれない」と指摘。「教育や歴史研究などを通じて『戦争再発の防止』を推進すべきである」と呼びかけた。同教授は1988年以来、日独両国で開催された日独比較国際シンポジウムなどに出席しており、編著書に『過ぎ去らぬ過去との取り組み―日本とドイツ』(岩波書店)などがある。

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ドイツの「過去の克服」は現在の国家が戦前の国家「ナチス・ドイツ(第三帝国)」とは異なることの証(あかし)をたて続けること。ドイツの「過去の克服」は(1)加害者の追求(2)被害者の救済、補償(3)再発の防止―の3点が同時進行し、相互に補完してきた。

ドイツが取り組んできた周辺国やイスラエル・ユダヤ人社会との「過去の克服」について安倍政権は(ホロコーストの)ドイツとは事情が違うので比較できないと主張するが、日本は「固有の領土」ではなく、日本人がいなかった旧満州など他人の土地に踏み込み侵略したので、(もともとドイツ人がいた地域に進攻した)ドイツより悪質かもしれない。

これに対し日本は戦前の大日本帝国から国体が継続している。日本の敗戦は無条件降伏ではなく、(戦争責任者の)天皇が同一人物として残り、現人神から変わっただけであった。ドイツには「始まりが肝心」という言葉があるが、日本の場合は対応力があると言うべきか、おかしいということが大きな声にならない。声を上げるべき時に上げておかないと、後で困ることになる。シュミット独元首相は「日本はアジアに友人がいない」と述べたが、きちんとやっていれば日本はアジアを代表する国になれた。ただ、国民の象徴となられた昭和天皇は平和を希求され、平成天皇へ継承されている。

戦後、ドイツは米英仏ソ連の4カ国の統治下に置かれたが、日本を占領したのは米国だけだったこととも決定的に関係している。原爆を落とされた米国と組む追随が続いている。今の安倍政権を支える体制には大戦で負けた悔しさが今でも生きているようだ。米国だけでなく中国、韓国に対しても同様だったが、これらの国に負けたという自覚がない。

ナチス・ドイツと同盟国だった日本は、同様に負の遺産を負うが、日本の若者の多くは歴史を知ろうとせず、歴史に関する知識の差は日独で開く一方である。これは国内で通じても国外では通じない。日本は教育や歴史研究などを通じて「戦争再発の防止」を推進すべきである。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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