安倍首相は「企業・株価・富裕層」偏重=実質賃金19カ月連続減、貧困率高く格差は拡大するばかり―連合会長が批判

八牧浩行    2015年3月11日(水) 21時5分

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連合の古賀伸明会長(写真左)は、日本では貧困率が高く格差が拡大していると指摘。その上で、安倍晋三首相は「日本を企業が一番活躍できる国にする」と言っているが、政治家は「国民が一番暮らしやすい国にする」と言わなければならない、と批判した。

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2015年3月9日、連合の古賀伸明会長は日本記者クラブで記者会見し、日本では19カ月連続で実質賃金が前年比マイナスで、相対貧困率が高く格差が拡大していると指摘。その上で、安倍晋三首相は「日本を企業が一番活躍できる国にする」と言っているが、政治家は「国民が一番暮らしやすい国にする」と言わなければならない、と安倍政権の基本姿勢を批判した。発言要旨は次の通り。

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グローバル化が進展し、人、カネ、言論が一瞬にして国境を越える時代となった。宗教、民族間の対立や環境面でのリスクも同様だ。ウクライナ問題、エボラウイルス出血熱もすべて関連してくる。

こうした中、経済的社会的な格差が非常に拡大している。国際協力団体「オックスファム」によると2016年には世界の富の過半数が人口比率で1%の富裕者に集中するという。仏経済学者のピケテイが「21世紀の資本」で書いた通りであり、富裕層への所得の偏りは是正されなければならない。日本は相対貧困率が16%超と先進国の中でも高く、格差が拡大しており看過できない。ピケティ(理論)は単なるブームに終わらせず政策論で対応すべきである。

年金基金は労使による貴重な資金であり、その運用を(損失のリスクがある)株式に比重を置くのは株価対策といわれても仕方がない。年金は誰のものか。労使の意見が明確に反映され、ガバナンス体制を確立しなければならない。

安倍晋三首相は「日本を企業が一番活躍できる国にする」と言っているが、政治家は「国民が一番暮らしやすい国にする」と言わなければならない。サプライサイド(供給者)型ではなく、国民の暮らしと生活、労働に立脚してものを進めていく発想がなく、政権の政策や基本思想に違和感を持たざるを得ない。

政府の毎月勤労統計調査では19カ月連続で実質賃金が前年比マイナスに陥っている。物価上昇に、所得がどう追いつけるのか。デフレ脱却で経済の好循環を実現させるためにも、今年の春闘は重要な位置づけとなる。

政府は労働時間規制の大幅緩和につながる裁量労働制導入を目指しているが、これからのことを考えれば、際限なく広がる可能性を持っている。連合は反対の立場を明確にしており、ホワイトカラー・エグゼンプション(高度プロフェッショナル制度)と裁量労働の拡大導入には、民主党と共闘、世論を喚起して阻止したい。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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