<追求!膨張中国(10=完)>中国人観光客が倍増、“爆買い”が日本経済を下支え=交流で進む友好促進ー中国からの海外旅行者、年間1億人超

八牧浩行    2015年1月9日(金) 6時44分

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日本政府観光局によると、2014年11月の訪日外国人客数は、116万9000人で前年同月比39%増。伸び率が最も高かったのは中国で、20万7500人と2倍以上の伸びとなった。14年は年間で前年の2倍近い240万人に達する見込みだという。写真は東京・銀座。

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この年末年始、日本列島は中国人観光客であふれた。日本は中国人にとって最も人気のある旅行先である。中国人観光客に異国情緒に満ちた年越し体験を提供するため、多くの旅行会社が新春初詣ツアーなどを売り出した。12月31日の夜に団体で神社や寺院を訪れ、除夜の鐘を聴くというものだ。また日本式の温泉を体験するツアーもあり、雪を眺めながら露天風呂を満喫する、というのがセールスポイントとか。上海のある旅行代理店では、新春初詣ツアー、年末ショッピングツアー、温泉ツアー、スキーツアーなどの日本向け旅行商品が飛ぶように売れ、1年前の3倍以上となったという。

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日本政府観光局によると、2014年11月の訪日外国人客数は、116万9000人で前年同月比39%増。伸び率が最も高かったのは中国で、同103%増の20万7500人と2倍以上の伸びとなった。14年は年間で前年の2倍近い240万人に達する見込みだという。

旅行専門サイトの最新調査によると、2015年に中国人観光客に最も人気の高い旅行先は日本。調査対象者の39%が日本を旅行先の第1候補に挙げ、前年から10ポイント増加した。円安により割安な買い物ができることが大きな要因だが、日本の良好な環境や食べ物も魅力になっているようだ。14年10月に日本政府が外国人観光客を対象により優遇率の高い税還付政策をうち出したことも大きく影響した。日本政府は1月19日より、中国人に対するビザ発給要件の運用を緩和する方針で、さらに中国人観光客増が見込める。

◆消費額は40万円以上にも

ホテルなど観光産業の売上急増につながっている。また観光地別では東京、大阪、京都などの都市部に加え、特色ある自然豊かな北海道、沖縄の人気が高く、地元経済への寄与も大きい。観光関連業者は「2月の春節(旧正月)にはさらに多くの中国人観光客が見込める」と期待している。

 また、中国では輸入ブランド品に対する関税が高いため、中国の富裕層はブランド品を海外で購入しようとする傾向が強い。そのため、ブランド品購入目的の中国人観光客も多く、訪れる中国人観光客の半数以上が一回に40万円以上消費するとされる。主な品目別購入額をみると、カメラ・ビデオカメラ・時計が約8万円強。電気釜などの電気製品が5万円強、服・かばん・靴が5万円弱となっており、銀座の百貨店や秋葉原の家電量販店での売上増につながっている。中国人観光客の“爆買い”は人口減で低迷する日本経済を支えているのだ。

中国人の間で「日本の商品は高品質」と信じられており、特に健康食品や化粧品は人気で、デパートやドラッグストアで大量に購入されている。日本製のランドセルもブームになっているようだ。日本の医療サービスを提供する医療ツーリズムの人気も高い。がんの予防医療のためのツアーも人気を集めている。

◆不動産にも強い関心

中国人富裕層が関心を寄せているのが日本の不動産。特に東京の不動産は2020年東京オリンピックに向けた値上がりへの期待もあって、投資が増加しつつある。この動きに合わせ、日本の不動産販売会社も中国富裕層を対象とした取り組みを強化している。

中国で世帯の年間可処分所得が1万5000〜3万5000ドル(約180万円〜約420万円)となる富裕中流層の人口が1億人を超えるとされる。さらにこの層は今後さらに増加し、20年には5億人に達すると見込まれている。

政府は「観光立国」を標榜し、東京オリンピックが開催される2020年をめどに、日本を訪れる外国人を2013年の2倍に相当する2千万人に増やす目標を掲げている。さらに30年までに年間3千万人に拡大する方針だ。目標達成には、近接し14億人もの人口を擁する中国からの観光客を呼び込むことがカギ。14年1〜11月の中国本土からの海外旅行者が1億人を突破した。海外旅行者は、1998年の時点では年間843万人だったから、6年間で11倍に増加したことになる。14億人もの人口を擁し、富裕中流層が増え続けている中国は世界最大の海外観光客送り出し国なのだ。

◆話せばお互いに心が通じ合う

日本と中国の関係は、14年11月の首脳会談で和らいだとはいえ、なお微妙な状態が続いている。日中双方に偏狭なナショナリズムが横溢し、相手の国について悪いイメージが浸透し、互いに憎悪し合っているのが実情だ。今こそ旅行や留学を通じた交流が重要であり、実際に相手国を訪問し、実際の姿に接し国民同士が対話すれば相互理解が進む。その際、重要なのは正確な情報や本当の考え方が相手に伝わることである。

ある訪日中国人観光客は帰国後、中国版ツイッター(微博=ウェボー)に次のように書き込んだ。「日本がわれわれを上回っている部分はあまりに多すぎる。日本の空港に降り立ったときから、違いははっきりしていた。静寂、秩序、清潔…。一つひとつのカルチャーショックが、私がそれまで抱いていた日本に対する印象を否定していった」。このような率直な感想は瞬く間にネットユーザーの間に伝搬する。

北京で日本語を専攻する中国人女子学生は初訪日の印象について、「自分が違和感を持つところがあっても、話せばお互いに心が通じ合う。『中国人と日本人は違う』という認識がだんだん消えて、『同じだ』ということに気がつくようになった。習慣や漢字など勉強すればするほど中国と日本には共通するものが非常に多い」と心情を吐露している。

多くの中国人は真の日本を知れば知るほど仲良くしたいと思うようになる。戦後約70年近く、第二次大戦の反省の下、平和を追求し経済・文化的な繁栄の道を歩んだ築いた日本の真の姿に接すれば日本理解につながるのだ。

中国人の訪日旅行が急増しているのに比べ、日本人の中国への旅行は減少傾向にある。それでも中国本土には20万人の日本人がビジネスや留学などで滞在しており、中国の人たちと日々交流している。互いに行き来することによって相互理解が進み、友好的な関係に発展するよう望みたい。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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