<追求!膨張中国(9)>活気づくIT業界、巨大消費市場背景に=アリババがNY上場で3兆円調達、小米はスマホ安値攻勢でサムスン追撃

八牧浩行    2015年1月8日(木) 5時59分

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14年9月19日、アリババ集団が米ニューヨーク証券取引所に上場を果たした。今回の新規株式公開で調達した資金はざっと250億ドル(約3兆円)となり、世界中の投資家たちの熱い視線を一手に集めた。写真は2010年6月1日、記者会見する馬雲アリババ会長。

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今から4年半前の2010年6月1日、中国アリババ集団のネット通販同国最大手、淘宝網(タオバオ)と日本ポータルサイト最大手のヤフージャパンは、両社のサイトを接続して日中間で商品を相互に購入できるインターネット通販サイトを創設。アリババ集団の馬雲ジャック・マー)会長とヤフーの孫正義会長が東京都内のホテルで共同記者会見した。孫会長は「日本と中国の経済規模は2020年には米国やEU(欧州連合)を抜いて世界一の規模となり、中国と日本を一つの経済圏にして協力すればさらに発展する」と強調。マー会長は「タオバオとヤフーが組めば両社が利益を享受できるウィンウィンの関係が築ける。中日両国の中小企業に進出の機会を提供したい」と語った。

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筆者はこの会見を取材したが、マー会長はもの静かな印象で、その時はアリババが短期間に急成長して過去最大のIPO(株式公開)を演じることになるとは思いもよらなかった。

14年9月19日、アリババ集団が米ニューヨーク証券取引所に上場を果たした。今回の新規株式公開で調達した資金はざっと250億ドル(約3兆円)となり、世界中の投資家たちの熱い視線を一手に集めた。アリババ株の32.4%を保有するソフトバンクも追い風を受け、孫正義社長の総資産は166億ドル(約2兆円)となり、日本一の富豪に躍り出た。

◆創業4年目で売り上げ1兆円

創業わずか4年目の中国スマホ企業、小米(シャオミ)科技が世界を震撼させている。韓国サムスンや米アップル製品とほとんど同じ性能なのに、価格は最大約5分の1という激安スマートフォンを販売して倍々ゲームで急成長。ソニーを今期見通しで最終赤字に転落させ、スマホ世界首位の韓国・サムスン電子を大幅減益に追い込んだ。アップルも安閑としていられない。

米調査会社によるとシャオミのスマホ出荷台数は14年4〜6月期に約1500万台と、前年同期の3倍以上に拡大。主戦場の中国ではサムスン電子を抜きシェア1位となった。その後も成長の勢いは止まらず、7〜9月期には1700万台超を販売し、世界シェアでサムスン、アップルに次ぐ3位に浮上。14年通年の販売台数は当初目標の4000万台から約6000万台に拡大する見込みで、売上高は1兆円に達するとみられている。

  

シャオミは今年から中国以外の新興国に市場を拡大。インドを含め、ブラジル、ロシアなど年内に10カ国での販売を計画。2015年には、14年の2倍近い1億台超を世界で販売するという。実現すれば、サムスン電子、アップルに肉薄。その市場破壊力は計り知れない。

ファーウェイが幕張メッセで存在感

2014年10月、アジア最大の家電・IT(情報技術)見本市「CEATEC(シーテック)JAPAN2014」が幕張メッセ(千葉市)で開催された。外国勢(150社)で多かったのはアジアの国と地域。7割以上に相当する107社を占め、特に台湾45社、中国35社、韓国13社、香港4社など東アジアの企業が多かった。

中でも中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は、最新スマートフォン「Asend」やタブレット端末の新機種など多くの新製品を派手にアピール。シーテックには3回目の出展だが、東芝、富士通、シャープ、NTTドコモなど日本の有力企業が隣接する中心エリアに、これら有力各社以上のスペースを使用して技術力を派手にアピール、多くの来場者を集めていた。

◆富豪ランキングでIT長者が半数占める

中国では2000年代前半から長らく、富豪ランキングトップ10には不動産業界の大物たちが顔を並べてきた。しかし、保有資産1000億円以上の富豪ランキングにIT業界の実業家たちが続々登場し、最近その半数に達した。

中国ではアリババ、検索エンジン大手のバイドゥ、メッセージアプリのテンセントがインターネット御三家といわれ、この3社の時価総額は合計50兆円に達する。米国で14年5月に上場したネット通信販売JDドットコムやシャオミの創業者が続く。付加価値の高いビジネスが期待できるIT業界に、中国の旧来の産業から人材が大きくシフト。今や中国内には2万社近いベンチャー企業と1千に上る投資機関が存在、しかも増加する一方という。

 中国のIT企業の活況は、巨大な中国市場と、政府による外資規制によってもたらされたのも事実だ。アリババの14年3月期の売上高は84億3600万ドル(約9279億円)で、その86%を中国で稼ぐ。

中国国内でこそ存在感は圧倒的で、通販サイトのタオバオやTモールなどを通した流通総額は2960億ドル(約32兆5600億円)で、その仕組みを支える決済や金融サービスも拡大している。この成長ビジネスモデルが、欧米のIT企業が激しく競争する海外でも通用するかどうか。未知数といえよう。

 

また、シャオミのビジネスモデルも、またすぐにまねされる運命にある。中国メーカーの中では現時点で最大手のレノボや華為技術(ファーウェイ)も、格安スマホを市場投入して対抗。インドで急成長するマイクロマックスなど、中国以外の新興メーカーも続々出てきそうだ。

 激しい競争は、価格下落とサービス向上につながるため、消費者の立場としては歓迎すべきことだ。しかし、かつてこの分野で独壇場だった日本メーカーがこの大激震についていけなくなっているのも事実である。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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