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中国メディアの澎湃新聞はこのほど、手塚治虫氏原作の映画「火の鳥 エデンの花」が失敗した理由について考察した記事を掲載した。
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中国メディアの澎湃新聞はこのほど、手塚治虫氏原作の映画「火の鳥 エデンの花」が失敗した理由について考察した記事を掲載した。
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記事は「『日本アニメの父』である手塚治虫氏の『火の鳥 望郷編』を原作としたアニメ映画『火の鳥 エデンの花』が4月に中国で公開された。宮沢りえや窪塚洋介といった実力派俳優を声優に起用し、予告編も荘厳な雰囲気に満ちていたことから、日本アニメファンを歓喜させる作品となることが期待されていたが、同時期に多数の新作が集中する激戦市場の中で、ほとんど話題にもならなかった」と述べた。
その上で、「映画・ドラマのデータ分析アプリ「猫眼専業版」のデータによると、本記事執筆時点で本作の興行収入はわずか75万元(約1400万円)で、同時期に公開された別の日本アニメ『ふれる。』の5分の1にすぎなかった。また、中国のドラマ・映画口コミサイトの豆瓣(douban)で『見たい』に登録しているユーザー数は4000人未満、猫眼でも1万人に届かず、全体的な注目度は低調だ。手塚氏とその代表作『火の鳥』シリーズが日本アニメ史において占める地位を考えれば、この結果は極めて残念だ」とした。
また、「手塚氏はその生涯で約500作品を創作し、『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『リボンの騎士』『新宝島』などの名作は東アジアにとどまらず世界中のアニメファンにとって不朽の象徴となった。宮崎駿監督、今敏氏、大友克洋氏といった後のアニメ界の巨匠も手塚作品の影響を大きく受けている。『火の鳥』シリーズは手塚氏の創作人生における最も代表的な作品で、1954年から30年以上にわたり、各話が独立した全12章(黎明編、未来編、ヤマト編、宇宙編、鳳凰編、復活編、羽衣編、望郷編、乱世編、生命編、異形編、太陽編)創作された。なお『現代編』は89年の作者逝去により未完となっている」と説明した。
そして、「この長きにわたる創作過程において、手塚氏は生命の起源、文明の盛衰、倫理的ジレンマ、宇宙の本質など、多くの壮大なテーマへの思索を作品に織り込み、作品を磨き続け、その質を極めて高めた。その結果、『火の鳥』シリーズは日本アニメ全体の文化と芸術的価値をを大きく高め、日本漫画界における最高傑作と広く認識され、さらには『日本漫画の極致』とまで称賛された。しかし、このように画期的意義を持つ歴史的傑作がアニメ映画にリメークされたにもかかわらず、なぜ興行市場でこれほどまでに冷遇されたのか?おそらく、これこそがわれわれが映画『火の鳥エデンの花』を改めて見つめ直す契機だ」と言及した。
記事は、「本作を正しく理解するには、まず『火の鳥』が何を象徴する存在なのかを知る必要がある。原作では、火の鳥とは宇宙を自由に往来する超生命体であり、広大な知恵と無限の力を持ち、あらゆる生命体と心を通わせることができる。その存在意義は、宇宙における生命を正しい道へ導くことであり、貪欲邪悪な者を罰することにある。火の鳥が登場するたびに、主人公たちは大きな変革あるいは再生の機会に直面することになる」と紹介。「漫画『火の鳥 望郷編』は76年に連載が開始された。物語の舞台は未来で、その頃の地球は人口が爆発的に増加し、生存環境は極めて劣悪だった。主人公のロミは恋人のジョージと共に地球を脱出し、小惑星『エデン17』を新たな居住地として購入するが、ジョージは不慮の事故で命を落とし、妊娠していたロミだけが残される。ロミは荒れ果てたエデン17でたった一人、人類の血をつなぐという重大な使命を担うことになる」とした。
続けて、「ロミは人類存続のため近親交配を試みたが、遺伝的問題に直面する。そんな彼女を火の鳥が導き、異星人ムーピーとの間に混血児コムをもうけることで問題を解決し、やがてエデン17は繁栄するが、ロミは地球への思いを断てず帰還を決意。重傷を負いながら地球にたどり着くも、そこは変わり果てた姿だった。死後は夫のもとへ遺灰を戻すよう願い息を引き取る。彼女の死後、エデン17は混乱し、星間商人が侵入して欲望をあおる品を売りさばくようになった」と説明した。
そして、「エデン17の文明は人間の貪欲によって崩壊の道をたどるが、火の鳥はあえて介入せず、宇宙の法則に従い崩壊を受け入れる姿勢を示す。原作では火の鳥が哲学的象徴として物語全体を導くが、映画『火の鳥 エデンの花』ではその存在感が薄く、登場の意義も不明瞭だ。そのため、原作を知らない観客には物語の理解が難しく、本作と原作の間には大きな隔たりが生じている。特に『火の鳥』という重要な物語の詮索や文明の象徴に対する理解が不十分で、その結果として一連のキャラクターが崩壊し、物語が断裂している。そのほか、SF倫理の尺度の捉え方においてバランスを欠いており、観客に深い思索を促すことが難しくなっている。ただ幸いにも、原作の重要な場面を忠実に再現しようと努めており、ある程度は手塚氏の奇抜な発想に敬意を表しているようだ」と論じた。
さらに、「手塚治虫の創作人生を振り返ると、その作品には常に、科学文明と宇宙叙事への深い思索が貫かれている。『鉄腕アトム』では、ロボットが人間の感情を求める姿を通じて、AI時代における倫理の境界を問いかけた。『メトロポリス』では、スチームパンク調の未来都市を背景に、科学の進歩の裏に潜む階級的抑圧をあぶり出した。そして『火の鳥』では、広大な宇宙において人類文明はあまりにも小さく、生命の意味とは何なのかという根源的な問いを描いている。このような壮大なテーマは、もとより100分の映画という限られた尺の中で完全に描き切ることは難しい。ましてや映画『火の鳥 エデンの花』は、その短い尺の中で物語の核を的確につかむこともできず、芸術的な革新によって改編の限界を補うこともできなかった。むしろ、目に見えるような手抜きすら感じさせた」と指摘した。
その上で、「2023年に動画配信サービス・Disney+(ディズニープラス)で配信された映画『火の鳥 エデンの花』の全4話版は、断片的な語り口や平坦なキャラクター造形により、すでに多くの批判を受けていた。これはすなわち、市場が本作に対して慎重な姿勢を取っていたことの表れだ。それにもかかわらず、25年に公開された本作では、それらの問題点に対する実質的な修正はなされず、むしろそのままリメークされただけだった。仮に手塚氏への敬意を胸に劇場へ足を運んだ観客がいたとしても、鑑賞後にはストーリー、人物描写、テーマ表現といった面において期待との乖離を感じさせることとなり、結果的に評判も興行成績も伸び悩んだ」と分析した。
記事は、「実のところ、アニメ映画は宇宙を舞台にした物語との相性が非常に良い。現実の物理法則に縛られず、想像力に富んだビジュアル表現によって、時空を超えた宇宙的スケールの世界を見事に描き出すことが可能だからだ。物語の構成においても、アニメであれば複数の時空や文明を並行して描きつつ、それらを巧みに交差させ、一つの核心的テーマである『生命の意味』へと収束させることができる。それは映画『火の鳥 エデンの花』が今後さらに強化すべき持ち味でもある。だが現時点では、その持ち味はまだ十分に発揮されていない」とし、「将来的に、もし制作者たちがこの経験を糧に、手塚氏の作品への深い理解と敬意を持って原作の本質を掘り下げ、アニメという表現手段の強みを最大限に活かすことができれば『火の鳥』のような宇宙叙事に挑む壮大な作品もまた、スクリーンの上で不死鳥のごとくよみがえることができるだろう」と結んだ。(翻訳・編集/岩田)
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