<北京五輪開幕>開会式に30カ国首脳集結、五輪外交活発―米国から大部隊、「五輪利権」守る

八牧浩行    2022年2月5日(土) 8時50分

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北京冬季五輪は4日北京市の国家体育場(鳥の巣)で開会式を行い、17日間にわたる雪と氷のスポーツの祭典が幕を開けた。

北京冬季五輪は4日北京市の国家体育場(鳥の巣)で開会式を行い、17日間にわたる雪と氷のスポーツの祭典が幕を開けた。大会には約91の国と地域から選手約2900人が参加。7競技、史上最多109種目でメダルを争う。目立つのは米国人。大型選手団、大会関係者、スポンサーやテレビ関係者などで、膨大な「五輪利権」を守るために懸命だ。

◆中露首脳、共闘姿勢示す

開会式には首脳30人が出席した。政府関係者の参加はほぼすべての国・地域に及んだ。2018年平昌冬季、昨夏の東京に続いて五輪のアジア開催は3大会連続。08年に夏季大会を開いた北京は、史上初めて夏冬両方の五輪開催都市となった。

開会式にはロシアプーチン大統領やカザフスタンのトカエフ大統領、シンガポールのハリマ大統領、グテレス国連事務総長、テドロス世界保健機関(WHO)会長ら多くの首脳が出席した。プーチン大統領は開会式前に中国の習近平国家主席と会談した。

ウクライナ情勢が緊迫する中、中露首脳会談が注目されたが、両国政府は首脳会談後に発表した共同声明で、北大西洋条約機構(NATO)拡大に反対の立場を表明。共闘姿勢を示した。

共同声明は、米英とオーストラリアによる安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に深刻な懸念を表明。米国に対しては、アジア太平洋と欧州での中距離ミサイル配備計画を放棄するよう求めた。ロシアは台湾独立に反対する立場も明らかにした。

ロシアは中国の顔を立て、北京五輪期間中は軍事行動を控えるとの見方が有力だ。昨年12月に国連総会で採択された休戦決議は五輪開幕7日前の1月28日からパラリンピック閉幕7日後の3月20日までを休戦期間と定めている。

一方で2008年8月の北京夏季五輪ではプーチン氏が出席した開会式当日にロシア軍とジョージア軍の戦闘が始まった過去も無視できない。親密な関係を維持していても中国のためにロシアが国益を放棄することはないという冷徹な現実を示している。

1980年2月に米国で開かれたレークプラシッド冬季オリンピックは「政治の影」に覆われた五輪とされている。米ソ対立など国際政治が影を落とし、ソ連のアフガニスタン侵攻の直後であり、米国は80年夏のモスクワ五輪ボイコットを警告していた。その後日本を含む西側諸国によるモスクワ五輪全面ボイコットに続いて84年の米ロサンゼルス五輪報復ボイコットに繋がった。

今回の北京冬季五輪で、米国が人権問題などを理由に呼びかけた「外交的ボイコット」は米国に追従する国が、アングロサクソン系の英豪カナダ以外ほとんどなく、広がらなかった。欧州連合(EU)ではフランス、ドイツ、イタリア、ハンガリーなども「外交ボイコット」を否定。韓国は朴炳錫国会議長が出席。日本は東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長らが派遣された。

首脳が出席した国には、巨大経済圏構想「一帯一路」で関係を深める中央アジア5カ国や中東のサウジアラビア、UAE=アラブ首長国連邦とカタール、東南アジアのタイ、カンボジアとシンガポール、それにEUではポーランドも含まれている。

米国も「外交ボイコット」の掛け声とは裏腹に、大型選手団を派遣したほか、米国向け放送権を持つ米NBCテレビクルー、スポンサー企業関係者、政府系の要人など多数を送り込んだ。世界最大の五輪ビジネス「利権」を有するのは米国である。

◆習主席、各国との関係強化狙う

習主席は、北京に集結した各国首脳と積極的な首脳外交を展開した。同主席は、新型コロナウイルスの感染が拡大した一昨年1月にミャンマーを訪れたのを最後に外国訪問はしておらず、その後、中国国内でも海外の要人との対面での会談はわずかしか行っていない。習主席としては、オリンピックをきっかけに、これまで控えてきた対面での首脳外交を再開させ、各国との関係強化につなげたい狙いがあるようだ。

日本からは日本選手団の主将を務める高木美帆選手や、オリンピック3連覇を狙うフィギュアスケート男子シングルの羽生結弦選手など、約120人が出場し、冬の大会でこれまでで最も多い13個のメダルを獲得した前回の韓国・平昌大会を上回る成績が期待されている。もちろん世界やアジアのアスリートたちが練習の成果を発揮し、高いパフォーマンスを発揮するよう祈りたい。

北京冬季五輪の開会式は、シンプルさが際立ち、宇宙から見た地球の美しい姿を俯瞰し、国際協調を印象づけるものだった。最後に分断を超えた人類の「団結」が強調されたが、その理念が実現するよう期待したい。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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