<驚くべきインバウンド後進国ニッポン(9)>貧バウンド時代のインバウンドと近未来の姿

Record China    2014年4月5日(土) 14時50分

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通訳案内士のライセンスを持たず仕事をしている外国人のことを、今でこそ黒魔術師の一団だのヴォルデモート一味だとボロクソに言いますが、東日本大地震までは彼らこそがこのインバウンド業界をけん引していたのです。写真は海外からのお客様と京都嵯峨野竹林で。

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通訳案内士のライセンスを持たず仕事をしている外国人のことを、今でこそ黒魔術師の一団だのヴォルデモート一味だとボロクソに言いますが、東日本大地震までは彼らこそがこのインバウンド業界をけん引していたのです。日本の観光業界のアウトロー的存在と異国の激烈なグローバル競争を生き抜いてきた猛者が組んだ。そして旅行社から旅行客を買うといういわば画期的な台湾式営業方法を確立したのです。

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親しい台湾出身のガイド仲間によれば、ガイドは給料無料、基本ボランティアで長時間働きます、土産とオプションのみを売り、1週間で目標1ツアー100万円(すべて手取り現金、諸課税全く無し)。成田や関西に着いた団体をバスに閉じ込めて、指定の土産物屋の定置網に追い込んでからイルカ漁の如く水揚げタイムです。また、密室であるバスの中で催眠商法を駆使して納豆キナーゼとか深海ザメの油とかを高額で一本釣りをする。清水寺や富士山に行くときオプション費用として1人3000円を集金する。嫌な方は事前にどこかの駐車場で降りて貰う、「バスが帰って来なくても当局は一切関知しない、では安全を祈る」というとんでもない事をやっていたのです。そういうイリーガルな営業の基本を実戦して売り上げを競う。参加する営業ガイドは生き甲斐ともいえる実戦競争販売を通じて、インバウンドの市場(貧バウンド市場)の基礎を作り上げたのです。日本人のほとんどが見向きもしなかった、飽きれて物も言えない間にやってしまった。それも短時間で大勢の日本人の知らない間に市場を作ったのです。だから別の台湾の友人は私に、「お前もそういう事をするのか」と正義感をもって警告を与えてきたのでした。やり方や売る商品が良ければ、日本でも似た様なことをする会社は存在しますが、ここまで質を落とすと日本では詐欺罪になってしまいます。その前に地上手配業者やグローバル闇ガイドは中国や台湾の旅行社から20-30万出して旅行団を買っているのですから、車販と土産物屋巡りを繰り返さなければ、自然と大赤字が出ます。

私は会社員時代営業職でノルマも持っておりましたが、まず顧客を絶対に守るという意識やモラルとコンプライアンスを新入社員時代から叩き込まれており、リスクを背負って旅行団を買って搾取するという営業は、悲しいかな真似はできませんでした。案の定、昨年10月1日旅行客からの苦情に業を煮やした中華人民共和国当局は旅遊法を制定し、すべての買団、車販、土産物屋巡りとオプションを禁止しました。そして旅行業界には質で勝負するように求めたのです。日本市場にインバウンドという市場をもたらした功労者の彼らには、かつての弾丸ボッタクリ旅行でなく質の高い旅行を企画して、資本主義の中で合法的に直球勝負して頂きたく思います。

そういう意味ではインバウンドの世界はすでに、日本と諸外国の勢力との凄まじい戦いの場になっており、まさにTPP後の世界を実現しているのです。TPP論議についてもグローバル・ルールに日本も全面的に従うのか、日本のルールは日本で決めるのかとの議論が続きますが、我々の業界の惨状と繁栄を参考にして頂きたいのです。要は最初のルールの設定(他国のルールを標準化される怖さを解る事)が最重要と思われます。

◆筆者プロフィール:水谷 浩(仁宣)

中国語通訳案内士会・副代表幹事。現役通訳案内士(中国語)の他、産業・医療通訳等各種通訳、講演と執筆、訪日外客コンサルとビジネスマッチング(日本と海外)を展開する。銀聯カード決済関連会社のサイトで、中国・中華市場向け中国語旅行ブログ“中日導游游日記”を長期連載している。

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