老いゆく中国の政策転換、2014年初頭にも一部地域で一人っ子政策を緩和へ

Record China    2014年1月21日(火) 15時17分

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2014年早々にも一部の省市で「単独二子」(単独二孩)政策が実施されるようです。写真は一人っ子政策の広告。

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2014年早々にも一部の省市で「単独二子」(単独二孩)政策が実施されるようです(「南方週末」、2013年12月25日)。今後3月の全人代の季節に合わせて、各省市は実情を考慮して各省の「人口と計画生育法」を修正していくと思われます(間に合わない省では行政機関からの通達で実施されるかもしれません)。

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これまで一部の省市では両親がどちらも一人っ子であれば二人の子どもを持つこと(双独二孩あるいは二胎)が可能、あるいは農村などでは最初の子どもが女子であった場合、もう一人の子どもを持つことが可能、などの例外は存在しました。あくまで例外的な措置でしたので、今回の緩和では一人っ子政策の大幅な見直しになると思われます。

1.出生率の低下

中国の出生率は年々低下してきています。現在のところ「総和生育率」(女性が妊娠出産可能期間に持つ平均的な子どもの数)は1.5〜1.6(中国国家衛生・計画生育委員会の李斌主任)、1.35かそれより高い水準(Becker)にまで下がりました。

その結果、ちょっと古いですが2004年の国連予測を利用してまとめた「通商白書2005年」の下の図を見るとわかるように2015年から労働力人口は減少に入ります。李斌は2012年から労働力人口が減少しはじめ、これから毎年345万人減少し、2023年以降は年平均800万人減少すると発表しています。つまり高齢化社会、それにともなう人口減少の時代が本格的に到来することが予測されるようになりました。

また、性比も大きな問題になっています。出生人口の性別比はここ20年来一貫して115以上(女性100に対して男性の割合)、2012年には117.7にまで上昇したそうです(李斌主任)。このような人口動態から中国国内でも一人っ子政策の見直しの声があがっていました。

2.一人っ子政策を緩和することの問題点

一人っ子政策の緩和は、人口の増加をもたらします。これにより社会資源へ負担をかけます。いわゆる資源の負担の問題です。

この緩和によって条件が適合している夫婦が大挙して二人目を持つようなことが起きれば、人口が集中している都市部で生育のピークが重なり、病院、幼稚園、学校への負担が過重になる可能性があります。したがって、とくに条件にあてはまる人が多い地域では、この政策によって急いで二人目を作ろうとする「二人目の出産ラッシュ」になることもあるかもしれません。この場合、二人目を地元の計画生育委員会に申請したあとの許可を遅らせるなどして、調整が行われる可能性が存在します。

また、その出産ラッシュで生まれた子どもたちの就業問題も存在します。大学生の就職難が叫ばれるようになる中、就職への社会負担は大きいものとなります。

次の問題は、以前から言われている不公平の問題です。家族計画は各家庭がもてる基本的な権利であるにもかかわらず、条件の適合不適合によって子どもを持てる数が違ってきます。条件がある家庭のみ二人の子どもが持てて、条件があてはまらない家庭では二人の子どもが持てないとなると、社会への負担も違います。

なぜなら、両親がともに一人っ子の場合、4人の老人と2人の子どもを扶養することとなります。両親のどちらかが一人っ子の場合、配偶者のどちらかが兄弟を持っているわけですから、単純にすると、3人の老人と2人の子どもを扶養することとなります。社会負担としても不公平性が存在するという意見です。

3.そもそも中国の一人っ子政策は有効だったのか?

そもそも中国の一人っ子政策に効果はあったのでしょうか?一人っ子政策がはじまったのは1981年です。

1978年から中国は改革開放をはじめ、急速な経済成長に成功しました。一般に経済発展とともに人口成長率は自然に減少します。つまり、上でも見たような出生率の低下は政策がもたらしたのではなく、経済発展の結果とみることも可能かもしれません。

中国政府は一人っ子政策の有効性を主張します。1970年の自然増加率は25.8%でしたが、2012年には4.95%まで低下しました。中国の現在の総人口は約13億5000万人です。国家衛生計画生育委員会は、一人っ子政策が実施されなければ17億〜18億人に達していたという数値を示し、政策によって4億人の増加を防いだとしています(「MSN産経ニュース」、2013年11月12日)。

それに対してノーベル経済学賞のベッカーは、それを否定しています(「The Becker−Posner Blog」、2013年12月22日)。

1990年の総和出生率は2.0を超えていました。つまり一人っ子政策の下でも多くの人が二人目を欲しがっていたということを示し、一人っ子政策に疑問を呈します。

また収入水準、平均教育水準や都市化率、その他の数字を利用して、アジアのその他の国と一緒にしたモデルを用いて計算した結果、一人っ子政策がないとしても、出生率は1.5にまで下がったはずだと主張しています。

今回の政策変更でも出生率が急速に上昇するとは思えないと結論づけています。

4.今後の展望

今回の緩和は2013年11月に開催された三中全会の改革方針に沿ったものです。この政策は「どの家族も二子まで」(普遍二孩)の過渡的なものとなるという見方が大部分です。その意味では、どの家庭も子どもを二人持てるようになれば、一人っ子政策の放棄ということになるでしょう。

本格的な二人っ子政策に移行するのはいつになるか、利権の温床とも言われる国家衛生計画生育委員会の改革も含めて注視していきたいと思います。

ちなみに中国では「計画生育」政策は事実上の一人しか子どもを持てないという政策であるため、海外では一人っ子政策(One Child Policy)と呼ばれています。一人っ子政策が放棄されたとしても、多くの人口を抱える中国の「計画生育」政策は続くことに注意しなければなりません。

◆筆者プロフィール:岡本信広(おかもと・のぶひろ)

大東文化大学国際関係学部教授。1967年徳島県生まれ。著書に『中国−奇跡的発展の「原則」』アジア経済研究所、『中国の地域経済−空間構造と相互依存』日本評論社がある。

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