「違反しホーダイ・ダブル定額」の衝撃、何回交通違反しても罰金は定額のはずなのに…

Record China    2014年1月5日(日) 0時30分

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なぜ中国の橋はあんなにぼろぼろ崩落するのか?写真は吉林省で発生した橋の崩落事故現場。

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なぜ中国の橋はあんなにぼろぼろ崩落するのか?手抜き工事というのも可能性の一つだが、もう一つの可能性として「超重」(過積載)がある。トラックが規定をはるかに上回る重さの荷物を積んで走っているために橋が耐えられないのだ。他人様の迷惑を顧みず儲け優先のトラック業者がいかんと言ってしまえばそれまでだが、トラック業界の売価は過積載をしなければ食っていけないように設定されているのでいかんともしがたいのだ、体制的問題なのだとの反論にも一理ある。

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ほぼすべてのトラックが過積載しているなか、トラック業界の悩みのタネが交通違反の罰金。素直に全部払っていてはこれまたおまんまの食い上げとなる。そこで管轄部局と物流業界の癒着の結果として編み出されたのが「違反しホーダイ」、罰金定額制だ。先に一定額のお金を払っておけば後は違反し放題というステキなシステムである。もちろんこんなご無体な法律を作れるはずもなく、非合法に処理をしていることは言うまでもない。

■違反しホーダイが適用されない?!トラック・オーナーが決死の抗議

ところがその「違反しホーダイ」の運用をめぐって、トラック・オーナーと当局が対立。オーナーが農薬をあおって自殺未遂する事件が起きた。

2013年11月14日、河南省永城市でのこと。1台のトラックが走行中、突然運輸局の巡視車両に停車を命じられた。過積載の検査だ。だが慌てることはない。そのトラックは永城市運輸局の「違反しホーダイ」チケットを購入していたからだ。お値段は1年3000元(約5万1000円)なり。

いつもならばチケットを見せれば解放されるのだが、この日は違った。運輸局職員が道路局関係者に電話、5分も経たないうちに道路局の巡視車両が駆けつけてきた。それでもオーナーは動じない。ちゃんと道路局の「違反しホーダイ」チケットも購入済みだったからだ。こちらのお値段は1カ月3000元とちと高い。

ところがところが、道路局職員は「なにそのチケット、知らないんですけど」とつれない態度。後にオーナーは道路局の中に派閥があり、別派閥には違反しホーダイ・チケットが通用しないと聞いたと話している。ともあれ、道路局職員は、文句があるならうちのボスに言え、とりあえず罰金支払えの一点ばり。なんと7時間にわたり問答が続いたという。

かっとなったオーナーはやってきたタクシーに飛び乗り、近くの薬局へ。そこで農薬を買って戻ると、「解放しないと農薬を飲んで死んでやる」と抗議した。それにも道路局職員は動じない。「飲め飲め、あんたが死んでもうちらとは関係ないわ」と冷たい一言。かっとなったオーナーは農薬をあおり、救急車で病院に運ばれる騒ぎとなった。

■罰金ビジネス

この話をCCTVの番組「経済30分」が報じたものだからさあ大変。取材を受けた永城市運輸局、道路局は「違反しホーダイなんてありえないっすよ〜、やだな〜」としらを切ったが、信じる者はいない。一命を取り留めたオーナーは知人から聞いた話として、永城市の交通管理部局は罰金や違反しホーダイ・チケットを財源にしているとも証言している。

この話は信憑性が高そうだ。というのも中国では政府部局が罰金や手数料を資金源とする、実質上の独立採算モードになっているケースも少なくないためだ。例えば環境保護部局は違反の罰金や見逃しのワイロを財源としているため、環境基準を違反しない企業がなくなると生きていけなくなる…などという笑えないネタもある。

さらに面白いのは「罰金を取る権利」の又貸しもあるという。というか、私の知人がまさに「罰金を取る権利」を取得したオーナーの下で、ニセ行政職員として罰金徴収ビジネスの末端にかかわっていたのだった。それっぽい制服を着て、過積載の車を見つけては罰金を払えと迫るというお仕事である。徴収した罰金の一部をオーナーに上納。残りを成果給としてもらっていたのだとか。ただ仕事を頑張りすぎたのか、ニセ職員の話が広まり、誰も罰金を払ってくれなくなったため、あえなく廃業になったという。

■中国行政改革の課題

日本にだって年末にはノルマ達成のための悪辣な交通違反取り締まりがあるわけだが、とはいえ罰金をむしりとらなければ警察財政パンクということはありえない。ましてや交通違反取り締まり権限を勝手に誰かに譲渡するなどということも考えられない。

途上国と比べれば、中国の統治水準はかなり洗練されたものと言えるが、しかし政府の裁量権がきわめて巨大で、いろいろと抜け道をする余地が残されている。それ以上に問題なのは抜け道を使って稼がないと馬鹿だ、損だという全体の流れだろう。

改革開放から30年あまり、中国の行政改革にはまだまだ課題が積み残されている。

◆筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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