裏口入試のワイロで数十億円を蓄財、大学職員を高飛び直前に逮捕―中国

Record China    2013年12月5日(木) 21時50分

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5日、中国クラスタでは防空識別圏設定のニュースでもちきりですが、大きな汚職事件に発展しそうな報道が飛び込んで来ました。写真は中国人民大学。

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2013年12月5日、中国クラスタでは防空識別圏設定のニュースでもちきりですが、大きな汚職事件に発展しそうな報道が飛び込んで来ました。(文:水彩画)

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中国人民大学紀律検査委員会副書記が明かしたところによると、人民大学学生募集・就職処の蔡栄生(ツァイ・ロンション)処長が広東省深セン市で逮捕されました。偽造パスポートでカナダへ国外逃亡しようとしていたところを間一髪防いだようです。蔡処長は学生の募集や就職支援などを担当する部署のトップ。恐らく学校から支給されていた公的なパスポートが使えないので、偽造したものと思われます。

逮捕された先月27日午前には、「同校の紀律委が現在調査中」との一報がネットを駆け巡ったのですが、大学は「どの部門からも正式な連絡を受けていない」と回答しています。公式にはまだ発表するなと釘を刺されているのがうかがえるのと、報道を否定せず「事実であれば」という言い回しなので、内々に連絡自体は受けていたようであります。

▼中国版AO入試で数十億元を収賄

蔡の疑惑については2010年頃からネットでうわさされていました。自主募集を口実に面接で賄賂を受け取っていた、学長秘書の胡娟(ホー・ジュエン)といい関係にあった、論文改ざんなど…。これらまことしやかに語られていたうわさのほとんどが事実だったもよう。賄賂は総額で数億元(数十億円)に達するとみられています。

ポイントは自主募集(中国語は自主招生)。中国の大学入試は基本、高考(全国高等学校学生募集統一試験)に一本化されています。日本のセンター試験に似た仕組みで各省・市ごとの統一試験を受験。その点数で合否が決まるという仕組みです。

ところが抜け穴もあります。それが自主募集。こちらは日本のAO入試に似た制度です。各大学ごと、あるいは複数の大学の連合体が独自に試験を実施するというもの。規定は各学校ごとにばらばらで、中には高考の受験も必要、ただし点数は参考にとどめるといったところもあるようです。

試験勉強に特化していない人材確保という美名の下、スポーツエリートを獲得とかに使われているわけですが、それだけではなく裏口入学の絶好の手段になっているとの批判もあります。2011年には11歳の「神童」が名門・人民大学に入学しましたが、実はその「神童」は富二代、つまり金持ちのボンボンでした。これも疑惑どまりだったようですが、合格基準があいまいなどと批判を受けています。この「神童」合格問題も蔡の責任とされそうな勢いであります。

▼事件の余波

「大学職員が数十億円を収賄、高飛びを試みる」だけでも大ニュースですが、事件はこれだけでは終わらないようです。

蔡は逃亡前に前学長の紀宝成(ジー・バオチョン)の違法行為について書面を残しているとも伝えられています。紀前学長は、蔡が人民大学商学院で博士号を取得した時の担当教授。高飛び前に恩師に後ろ足で砂をかけていったということで、このあたりのいきさつ、恩讐も気になるところ。単に対立関係というだけではなく、蔡、そして現学長秘書の胡娟は、紀前学長の直系の弟子とのこと。当局は拘束こそしてないものの、目を付けているようです。

紀前学長は10月27日に教育部の会議に出席しているのですが、果たして前学長にまで飛び火することになるのでしょうか。

また余談ですが、中国共産党中央紀律委員会が派遣した巡視グループが9月に人民大学を訪問しています。その際、「自主募集の面で連携が弱い」「(高飛び防止の)出国管理が制度化されていない」などの指摘をしています。的確な指摘というべきか、巡視グループのチェックが今回の高飛び未遂事件のきっかけになったのかまではわかりませんが、とりあえず正しい指摘をしたとのことで、中央紀律委員会は鼻高々ではないでしょうか。

◆執筆者プロフィール:水彩画(すいさいが)

中国政治ウォッチャー。ブログ「中国という隣人」を運営。葬式ウォッチなどクラシカル・スタイルの中国政治ウォッチを続けて、はや*年。不透明な中国政治を読み解こうと悪戦苦闘中。

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