「防空識別圏で他国機を撃墜するのはあり?」「ダメです」中国国防部定例記者会見を読む

Record China    2013年11月30日(土) 7時0分

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28日、中国国防部は11月の定例記者会見を開催しました。防空識別圏問題もあり、いつも以上に盛り上がる記者会見。重要なポイント、ネタ的発言が飛び交う見どころいっぱいの内容となりました。

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2013年11月28日、中国国防部は11月の定例記者会見を開催しました。防空識別圏問題もあり、いつも以上に盛り上がる記者会見。重要なポイント、ネタ的発言が飛び交う見どころいっぱいの内容となりました。

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▼「防空識別圏に他国の飛行機が入ってきたら撃墜できるんですよね?」

まずは重要なポイントから。記事「国際的慣例とは違う、異常な“中国式防空識別圏”、ルール作りの大ポカは中国自身のマイナスに」で説明しましたが、中国式防空識別圏は他国のそれとは異なり、「防空識別圏に入る場合には中国側に事前連絡し、指示に従う義務がある。服従しなければ武力によって対応することも」と、勝手に義務を課し、武力行使を示唆している点で異常です。

ところが国際社会の批判を受けるなか、中国当局は当初のトーンを一気にダウン。義務については一切口にしなくなりました。この日の記者会見では狙った危険球なのか、単なるお馬鹿なのかわかりませんが、「他国の航空機がきたら撃墜してもOKっすよね?」というナイスな質問が登場。これに「防空識別圏に進入するのは自由。中国は識別、監視する。中国(の領空)に脅威と判断されれば対応する」という、きわめて常識的な回答で応じ、当初の異常な中国式防空識別圏がこっそり撤回されていることが浮き彫りとなりました。

記者:

外国の航空機が識別されることなく他国の防空識別圏に進入した場合、防空識別圏を策定した国は撃墜する権利があるとの報道がありました。どのようにコメントされますか?

楊宇軍報道官:

第一の質問、防空識別圏の問題ですが、ここでもう一度説明しておきます。防空識別圏は領空ではありませんし、ましてやいわゆる「飛行禁止区域」ではありません。一国が領空の外に策定した空域であり、警戒する時間を稼ぎ、国家の防空安全を守るためのものです。ですから防空識別圏は領空の拡大を意味しません。しかしより有効に国家の領空安全を守ることができます。

国際法と国際的な慣例に従えば、外国の航空機は他国の防空識別圏に進入することができます。同時に防空識別圏を策定した国には他国の航空機を識別する権利があります。その意図と属性が判明し、そして異なる状況とその脅威のレベルに従い、対応する反応を行います。ですからあなたの質問は不正確です。

日中両国は海を隔てた隣国です。東シナ海の独特の地理的環境において、両国の防空識別圏の重複は不可避です。思うに防空識別圏が重複している空域においては、両国はコミュニケーションを強化し、共同で飛行の安全を維持するべきです。

▼怒るべき言葉?笑うべき言葉?

「中国に防空識別圏を撤回させたいならまず日本が先に取り消せ。したら44年後に中国もやめるか考えてみるわ」という一言。28日の記者会見で一番目立つポイントとなっただけに、見出しに採用したメディアも多かったのではないでしょうか。

なんたる横暴と怒ってもいいのですが、記者会見の動画をみると、楊宇軍報道官はいたずらっぽく笑ってからの発言。「小粋なジョーク」のつもりだったのでしょう。というわけでこの言葉にかりかりするのはちょっと野暮ではないかな、と。

個人的に一番気になるのは、会見場の記者さんたちの笑い声がまったく聞こえない点。マイクがひろってなかっただけかもしれませんが、楊報道官渾身のジョークが空振りに終わったのではと心配です。

記者:

中国が東シナ海防空識別圏を発表した後、日本当局及びメディアは中国側が一方的に現状を変え、海・空での“不測”の事態を招きかねない危険な行為だと批判しています。どのように評価されていますか?日本メディアの報道によると、中国の防空識別圏発表後、日本指導者は、日本側と米政府、そして国際社会は一致して中国に撤回を求めていると発言したようです。どのようなコメントがありますか?

楊宇軍報道官:

第一の問題について。中国の東シナ海防空識別圏策定は完全に正当で、合法的なものです。日本はいつも人を批判し、他国を悪者にする。しかし自国について反省することはないのです。

日本は中国側の強い反対にもかかわらず、昨年9月にいわゆる「釣魚島買収」を宣言しました。日本側は近年、頻繁に艦艇、軍用機を出動させ、正常な航行訓練を実施している中国の艦艇や軍用機を偵察し、航行と飛行の自由を深刻に侵害しています。日本自衛隊艦艇は先日、中国海軍が公海上に事前に策定、公表した演習海域に強硬進入し、中国の正常な軍事演習を妨害しました。日本はさまざまな口実を駆使し、軍備拡大を続け、二次大戦後の国際秩序の改変を狙っています。また日本当局はメディアを通じて中国の脅威を喧伝、公然と中国に対抗しようとしています。

では誰が一方的に現状を変えようとしているのでしょうか?誰が地域の緊張局面を激化しているのでしょうか?そして誰が地域の安全を破壊しているのでしょうか?国際社会は自然と理解し、(日本批判の)国際世論ができることでしょう。

第二の問題ですが、日本は1969年に防空識別圏を設立、公開しています。日本には中国の東シナ海防空識別圏策定についてあれこれ言う権利はないのです。もし撤回しろというのであれば、まず日本側が先に撤回するべきでしょう。中国側も44年後に撤回するかどうか考えます。

空母は「宅男」ではない!

一番のネタとなったのは、以下の記者の質問です。

記者:

以前、報道官は「空母はオタクではない。必ず遠洋航海に出る」と発言しました。これが現実のものとなったわけですが、ここで一つ、今度はいつ西太平洋に出るのか予言して頂けないでしょうか?

この「空母はオタクではない」発言は今年4月の定例記者会見で、楊報道官が発した言葉。これまた渾身のジョークだったのではと思いますが、よもや記者さんから蒸し返されるとは…。

ちなみにオタクという言葉の言語は「宅男」(オタク)。日本語由来の言葉なのですが、原義から外れて「インドア派」という意味になります。なので、ひきこもりじゃないので外出します、ぐらいのジョークなのですが、日本人的にはやはり「宅男」(オタク)という字面が強烈です。

◆筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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