少数民族言語も解析、中国の新たなネット監視システム

Record China    2013年12月3日(火) 15時34分

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先日、中国の官製ニュースサイトがチベット亡命政府の国歌を流すという痛恨のミスを犯してしまった。

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先日、中国の官製ニュースサイトがチベット亡命政府の国歌を流すという痛恨のミスを犯してしまった。ネット検閲にもチベット人は駆り出されているだろうが、主な担当者は漢民族ということでチェックしきれなかったのではないか。この事件が象徴的だが、言葉の違いはネット検閲を困難にする大きな要因となっている。

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だが、検閲事業に多額の資金が投じられている中国、ITの力でこの障害を乗り越えようとしている。2013年11月20日の香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは、清華大学を中心とした研究グループが少数民族言語の監視システムを開発したと報じた。

▼画像化されたテキストも音声通話も少数民族言語も

ネット検閲で重要となるのが画像化された文章の読み取り。検閲を避けるべくネットではこうした手法を使った情報のやりとりが増えているという。記事では具体的に指摘されていないが、中国のマイクロブログで多用されている長微博を指すものと思われる。140文字の字数制限を超える長文を画像化して添付することで、マイクロブログに長文を書き込むというツールだ。

現在、中国はさまざまな検閲システムと数十万人規模のスタッフで検閲をおこない、画像化された文章にも対応している。ただしここで問題となるのが言葉の壁だ。少数民族言語で書かれた文章には従来のシステム、手法では対応しきれないという。

そこで開発されたのが新たなシステム。このシステムを使うことで、チベット語、ウイグル語など中国の主要な少数民族言語をすべてカバーするばかりか、アラビア語、日本語のチェックも可能。一般的なウェブのテキストだけではなく、画像に加工された文章、さらには音声通話の監視も可能になるという。この新システムは新疆ウイグル自治区、チベット自治区ですでに使用されている。

▼「快適な検閲環境」

中国のネット検閲はスマート化しつつある。以前は党大会など重要なイベントがある時にはグループチャットで画像の共有ができなくなるなどの締め付けが頻繁に行われていたが、先日の三中全会ではそうした大規模な規制は行われていないようだ。マイクロブログの検閲でもアカウントの削除という強硬手段だけではなく、一定期間の発言禁止、書き込みがフォロワーから見えなくなる(書き込み主自身は発言できているつもりだが、誰も読むことはできない)といった“ソフト”な手段が導入された。

つまり、反体制的な話題に興味のない一般人にとっては、ネットライフに不便が生じない「快適な検閲環境」が用意されつつある。

こうした面で遅れをとっていたのが少数民族地域。チベットや新疆では一部地域の通信手段を完全封鎖するという荒技も珍しくない。サウス・チャイナ・モーニング・ポストが紹介した新システムが宣伝しているほどの精度を持っているかは疑問だが、今後もさらなるバージョンアップを重ねることで検閲すべき情報の絞り込みができるようになれば、政治的問題に無関心な少数民族にとっては「快適な検閲環境」が提供されるようになるのではないか。

▼筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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