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<コラム・巨竜を探る>平和の祭典・東京五輪は「神の配剤」、日中韓で係争先送り機運広がる!

配信日時:2013年9月15日(日) 7時0分
<コラム・巨竜を探る>平和の祭典・東京五輪は「神の配剤」、日中韓で係争先送り機運広がる!
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2020年の東京五輪決定が緊迫化が続く日中、日韓関係の“緩衝材”的な役割を果たす可能性が大きい。五輪開催までの7年間を猶予期間と見て、紛争の種となる懸案をすべて先送りし、五輪の成功に全勢力を結集する機運が出始めている。資料写真。
2020年東京オリンピックが北東アジア情勢に大きな影響をもたらしそうだ。緊迫化が続く日中、日韓関係の“緩衝材”的な役割を果たす可能性が大きい。少なくとも五輪開催までの7年間を猶予期間と見て、紛争の種となる懸案をすべて先送りして、五輪の成功に全勢力を結集する機運がこの地域に出始めている。

中国の国際情報紙・環球時報は9月初旬の東京五輪開催決定直後に「今後7年間日本は恐らく少し温和になり、それほど居丈高でなくなるだろう」との予想記事を掲載。「常識的に考えて、日本は五輪開催まで中国との軍事摩擦を回避し、東中国海(東シナ海)の平和と安定を維持する必要がある」と主張した。その上で歴史認識問題に言及、「日本政府が今後数年間に靖国神社問題で再び動いた場合、中韓は五輪への国際世論の特殊な関心を利用して、第2次大戦の戦犯に政府が頭を下げる国が、平和を発揚する五輪を開催するのに一体適しているのだろうかと世界中の人々に問うことができる」と提起している。歴史問題や領土問題で諍いが発生した場合、“中韓共同戦線”を張って「反東京五輪キャンペーン」を展開するぞという“どう喝”とも読める。

これを裏返せば、平和の祭典・東京五輪は北東アジアに新しい共通の価値観を醸成するまたとない機会とも言える。東京五輪の成功は中国、韓国とのさらなる経済相互発展への重要な屈折点となり、観光事業や産業などに大きなメリットをもたらす。東北アジアに世界の耳目が集中し、日中韓3か国にとって観光客の増加や経済活性化につながるからだ。

この見方を裏付けるかのように、環球時報は「もし日本がオリンピックで“第2の台頭”を果たすことができれば、東アジア地域の経済全体に新たな活性化をもたらし、国家間の協力を刺激することになる。中国への脅威にはならない」と融和論を展開している。こうした風向きの変化を捉え、東京五輪を“共存共栄”を実現するチャンスとしてフル活用すべきであろう。

中国や韓国の国民の多くは日本のアニメやファッションに憧れ、2008年北京五輪、2018年韓国・平昌冬季五輪に続く五輪が2020年に北東アジアで開催されることを歓迎しており、中国や韓国政府といえども東京五輪開催を危うくするような挑発的行為はできないだろう。今後の日本外交はこの特殊事情を活用することができる。

最大の日中係争事案である尖閣問題についてはまず、五輪までの7年間の「先送り」しかないとの見方が広がっている。五輪が成功すればさらに協調し合う雰囲気が生まれ、抜本的な平和的な解決を見るだろう。

関係国は東京五輪に対する世界の期待を裏切ることはできない。ソ連によるアフガニスタン侵攻がという「戦闘行為」が1980年のモスクワ五輪ボイコットにつながったことを忘れてはならない。

戦争や紛争は五輪を台無しにする。極東に刺さったとげである「尖閣問題」の取り扱いは、東京五輪決定で国際社会が絡む問題となったのだ。欧米や中東、アフリカの人々にとって、日中韓3か国はほとんど同じ国・地域に見える。東京五輪開催はまさに『天の配剤』でありこれを奇貨として活用すべきである。

尖閣国有化から一年を振り返ると、日中双方の失ったものの大きさを今さらながらに想起せざるを得ない。石原慎太郎東京都知事(当時)による「東京都の尖閣購入」発言という“仕掛け”に端を発する。水面下では元外務省首脳などが打開策の動きを見せたが、安倍首相はこれを却下して、事態は一触即発の状態のまま推移している。集団的自衛権の容認や自衛隊強化には中途半端な現在の状態が好都合との思惑もあるようだ。

▽偏狭なナショナリズムへの対応が両国の課題

一方、貧富の差の拡大や汚職批判などが原因となる暴動やデモが繰り返されるなど極めて不安定で、党内基盤も確立していない習近平国家主席にとって、尖閣をめぐる「反日抗争」が国内を固めるための格好の手段になっている面も否めない。

しかし、日中両国の産業・観光業界はこのあおりを受け、厳しい状況に陥っている。今年1〜6月の日中貿易は前年同期比10.8%減、特に日本の対中輸出が激減した。独ベンツ、米GM、フォード、ウォルマート、ナイキなど欧米の大企業は昨年秋以降、中国でのビジネスを急拡大している。一方、日本企業が中国で1千万人超の雇用を生み出している現実も無視できない。経済成長が至上命題である両国政府とも日中経済関係の縮減は望んでいない。

これを反映して尖閣問題でも微妙な変化が生じている。中国政府は昨年9月の国有化の当初は「国有化取り消し」を要求していたが、今の対応は「日本は領土問題の存在を認めるべきだ」にまで柔軟化している。安倍政権も首脳会議の機会をうかがっている。課題は日中両国に熱よく存在する偏狭なナショナリズムの克服だが、「東京五輪」という目標を前に、「熱狂」も時間が経つにつれ醒めるとの見方もある。

9月初旬にロシアで開催されたG20(20カ国首脳会議)での日中首脳立ち話会談など一歩前進の動きも出始めている。今後、10月7、8日にインドネシアのバリで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議と同月9、10日にブルネイで開催されるASEANプラス3 (日中韓)首脳会議などで、本格的なトップ外交が展開される可能性もあり、今後の「雪融け」が期待される。
<「コラム・巨竜を探る」(「巨象を探る」改題)その35>

<「コラム・巨竜を探る」はジャーナリスト八牧浩行(Record China社長・主筆)によるコラム記事。著書に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」(あさ出版)など>
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