中国ビジネス「時流自在」18■これからの中国ビジネス(4)拠点を設立しない事業展開〜利点とリスク

Record China    2012年11月30日(金) 9時43分

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中国経済の成長減速、尖閣問題を受けた日本製品ボイコット等の長期化懸念から、中国ビジネスの今後に不安を抱く日本企業が増え、当面、減産、規模縮小などの対応を余儀なくされそう。そこで「拠点を設立しない」戦略の利点とリスクについて再整理してみよう。写真は上海市。

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欧州信用危機に伴う中国経済の成長減速、尖閣問題とともに始まった日本製品ボイコット等の対日経済措置の長期化懸念から、中国ビジネスの今後に不安を抱く日本企業が増えている。当面は円高を背景に、景気回復基調にある北米シフト、あるいは他の成長国で事業展開を図る一方で、中国ビジネスは当面ローコストオペーレーションで、減産、規模縮小の対応を余儀なくされると思われる。その代表として、「拠点を設立しない」ビジネス・スキームのメリット、デメリット、リスクについて再整理してみよう。

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1、 非居住者ビジネスのメリット

 中国に工場、店舗法人などの現地拠点を設立せず、日本から出張ベース、現地との業務提携などで対応する、いわゆる「非居住者ビジネス」は1980年代から多数存在し、そのメリットは以下のように言われてきた。

(1)初期の投資コストが小さく、始めるのが簡単

  ⇒うまく行けば法人化すればよい。失敗した時の撤退も容易である?

(2)中国人に現地式経営を任せることができる

  ⇒日本人は介入せず、人件費もかからず、経営責任も負わなくてよい?

(3)現地の所得税はじめ税、費用負担が小さい

  ⇒拠点設立の費用が不要で、納税や経費などの現地負担も軽い?

(4)「外−外」オフショア(中国外)で代金決済が可能

  ⇒香港など中国外で利益回収ができ、確実で簡単、リスクも小さい?

 1980〜90年代前半にかけて、まだ詳細な規定が立法化されず、規制や取り締まりも比較的緩かった時代、台湾・香港など華僑系ビジネスを中心として盛んに実施されてきた非居住者ビジネスの「メリット」、「自由度の高さ」は、その後の法整備、取締強化とともに、最近ではリスクと表裏一体の関係となっている。特に上記(3)の経営責任に関しては、有限責任会社を設立しない場合は、個人で無限責任を負うことになるので注意が必要である。

2、共通の課題とリスク

「非居住者ビジネス」実施に伴う主要な共通課題とリスクは以下のとおりである。

(1)日本人の中国ビジネス出張にはビザが必要で、滞在期間に制限がある

(2)中国滞在期間が年間合計183日を超えた場合、日中租税条約に従い中国で課税される

(3)同様に、現地に拠点が無くても生産ライン、建設現場、倉庫等のPE課税(恒久的施設課税制度、拠点が存在するとみなされ中国で所得税、増値税が課税される)制度もある

(4)業種・内容によっては、中国政府が定める各種営業資格ライセンス、特別な就労許可が別に必要となる場合がある

(5)現場「ヒト・モノ・カネ」の経営管理と情報把握、現地との意思疎通の課題

(6)現地顧客に対する品質保証体制とブランド管理(コピー、クレーム事故等)の問題

(7)海外送金・受取に対する中国政府の厳しい外為規制のクリアー

(8)法人が無く、利益配当ができないため、別の利益回収方法を定めなければならない

(9)事業終了後、あるいは途中解約後の「コンペティター育成」のリスク

(10)現地パートナーとの事業運営をめぐる各種トラブル、紛争の解決方法(損害責任範囲、適用法律、裁判管轄権など)

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>

一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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