<中国ビジネス「時流自在」10■中国富裕層の落とし方(3)ネット通販の光と陰<下>コピー問題のカベ

Record China    2012年7月30日(月) 7時40分

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日中間のネット通販は困難に直面している。本シリーズ「中国富裕層の落とし方(3)ネット通販の光と陰<上>」で、「言葉」、「国際物流」のカベを解説したが、今回は「コピー商品のカベ」を取り上げる。写真はヤフー・タオバオ提携発表の際、展示された商品サンプル。

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2011年の中国内ネットショッピング市場規模は前年比で72.9%もの増加を見せ、取引総額8090億元(約10兆円相当)を突破、中国国内の小売総額の4.4%を占めるに至った。特にファッション業界の成長が著しく、2011年のファッション系市場規模は2670億元、前年比成長率93.5%という驚異的な伸びを見せている。

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その一方で今年5月に入り、日本の最大手サイトであるヤフーショッピングと楽天市場が、中国ネット通販事業から相次いで一時撤退を表明するなど、日中間のネット通販は困難に直面している。その問題点として、本シリーズ「<中国ビジネス「時流自在」9■中国富裕層の落とし方(3)ネット通販の光と陰<上>言葉と国際物流のカベ」で、「1、中国語と日本語の言葉」、「2、国際物流」の2点を解説したが、今回は「コピー商品のカベ」を取り上げる。

3、中国市場の「コピー商品のカベ」

2011年4月、中国商務部はオンラインショッピングサイト大手の「淘宝網」や「易趣eBay」が著作権などを侵害したコピー商品の氾濫する温床になっていることを明らかにした。(「中国新聞社」報道、2011年4月8日付RecordChina)。

中国商務部と工商総局が合同調査したところ、広東省と山東省でタオバオの8店舗とeBay内のコピー腕時計販売店などが摘発され、関連資料が押収され、銀行口座とネット決済サービス「支付宝」(アリベイ)のアカウントが凍結された。同時に自称「国際的有名ブランド」衣類やバッグ、携帯電話機、DVD、医薬品などの商品1万2800点余りも押収された。こうした違法商取引は「中国消費者のブランド信仰を利用し、大手サイトにおいて組織的に蔓延している」と報道されている。

また、2011年12月の米国通商代表部(USTR)報告書によると、アリババ傘下の淘宝網は知的財産権問題で国際的に「悪名高い市場」としてブラックリストに掲載されている(「RecordChina」2012年1月21日付)。

日本では2010年頃からタオバオ、アリペイ日本拠点を中心に中国ネット通販ショッピングモールへの出店キャンペーンが広く盛大に行われ、多数の代理店による高額セミナー、マニュアル類書籍も数多く出版されている。しかし、当初の出店やホームページ開設費用に加えて、一定期間の出店契約の中途解約不可、問い合わせの都度の取次・翻訳費用など多額の運営費用がかかり、実際には、訪問数は多くてもなかなか成約までに至らない現実とともに、売れ始めればすぐ隣に廉価な類似品、コピー品が出店してくる事態も発生したようだ。

 日本国内でのネット通販とは異なり、日本と中国市場ネット通販には「信用システム、商習慣」という壁が存在したのである。

 インターネット通販は日本でも中国でも現在大きく伸びつつあるマーケットであるが、現実にはこれら3点に代表されるような、日中の国境を越えた越境ネット通販が持つ本来的な難しさが、ヤフーと楽天のここ二年ほどの経験の中で浮き彫りになってきたようである。

両社とも、将来的に再挑戦を果たしたいと意欲満々ではあるが、一般に日本企業が中国ネット通販市場において営業展開を図っていく上で、今後の教訓としては、

(1)中国内の工場で製造された商品を中心に、

(2)日本ブランドの強みと高品質・アフターサービスを武器として、

(3)特に輸入品は中国内に一定の在庫をおき、

(4)中国ネット通販のルール、習慣に対応した顧客応対システムを組み

(5)中国各地域の顧客利便性を最重視した流通販売網の戦略を立て

対処して行く必要があると思われる。

このほか、中国ネット通販の課題として、代金回収、顧客情報セキュリティ管理、コピー問題への対応、中国顧客クレーム処理、製造責任への対応、地方都市の物流と市内宅配システムのルート構築などが挙げられよう。

(<時流自在>は筧武雄・チャイナ・インフォメーション21代表によるコラム記事)

<筧武雄氏プロフィール>

一橋大学経済学部卒北京大学留学、横浜銀行北京事務所初代駐在員、同行アジアデスク長、海外経済協力基金(OECF)派遣出向などを経てチャイナ・インフォメーション21を設立。横浜国立大学経済学部非常勤講師、神奈川県産業貿易振興協会国際ビジネスアドバイザーなど多くの役職を経て、現在も横浜市企業経営支援財団グローバルビジネスエキスパートなど、日本企業を支援する中国ビジネスコンサルタントとして活躍中。

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