<直言!日本と世界の未来>少子高齢化社会と労働力減少をめぐる課題―立石信雄オムロン元会長

配信日時:2018年4月8日(日) 5時0分
少子高齢化社会と労働力減少をめぐる課題―立石信雄オムロン元会長
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「高齢化社会」という言葉をよく耳にするが、高齢化とは「長寿化」と「少子化」があいまった現象である。元気で長生きする高齢者が増加することは喜ばしいこと。就労意欲の高い高齢者に就労機会を用意することは、企業や社会全体の活性化を図る上での課題であろう。
「高齢化社会」という言葉をよく耳にするが、高齢化とは「長寿化」と「少子化」があいまった現象である。

高齢化社会というのは、人口に占める高齢者の比率が高い社会のことである。長生きする人たちが増加していく「長寿化」が、高齢化社会の基本的な要素である。長寿化自体は人類の永年の夢の結果であり、元気で長生きする高齢者が増加すること自体は喜ばしいことである。高齢者の人数が増えても、それ以上に若年人口が増加すれば社会の構成比が大きく変わらないので、社会の仕組みをあまり大きく変える必要はない。

高齢化社会が問題視されるのは、先進国では新しく生まれる子どもの数が減少する「少子化」が同時に進展しているからである。高齢者と若年者の人口比率が従来と大きく変わることで、社会保障や労働といった社会の仕組みを根本から考え直さなくてはならない事態に直面している。

最新の国勢調査があった2015年10月1日時点の日本の人口は1億2428万人。2010年の前回調査に比べ107万5千人減少した。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2048年に9913万人と1億人を割り込み、2060年には8674万人(4132万人減)まで減少するとされている。また、人口の高齢化率(65歳以上人口割合)についても、2010年の23%が2060年には40%へと上昇し、我が国は、これまで経験したことのない高齢社会を迎えることとなる。

特に2025年には、いわゆる団塊の世代すべてが75歳以上となり、後期高齢者が全人口の5人に1人を占めるようになる。国民皆保険を中心とする保健医療制度などの持続性を維持しながら、一人ひとりの健康寿命をどう延ばしていくか。未曾有の難題解決へ待ったなしといえる。

人口と労働人口がともに減少し、少子高齢化が同時進行している国は先進国では日本だけ。米国は増え、ドイツは人口こそ若干減り始めているものの、労働人口は増えている。65歳以上まで含めると3人に1人に近づく「2025年問題」。日本は今こそ官民が一致協力して持続可能性のある新たな社会保障モデルが必要である。

こうなった背景には、少子化か影響している。日本では、第1次ベビーブーム(1947〜49年)、第2次ベビーブーム(1971〜74年)の2つのピークの後、出生状況は減少傾向にある。合計特殊出生率(ひとりの女性が一生に産む子どもの数)は、第一次ベビーブーム以降、急速に低下し、1970年には1.91と2を下回り、人口を維持するのに必要な水準を割り込むようになった。その後も低下傾向は続き、2006年には1.26となった。2015年の合計特殊出生率は1.45まで回復したが、少子化に歯止めがかかっていない。

少子化の要囚についてはさまざまなことが言われているが、人口学的には「非婚化・晩婚化(結婚行動の変化)」と「夫婦の出生力の低下(夫婦の出生行動の変化)」が大きく影響しているようだ。女性の社会進出が活発になる一方で、子育て支援のためのインフラ不足の影響が指摘されているが、いずれにしても経済情勢、価値観の多様化、家族形態の変化など、さまざまな要因が重なり合って現在の状況をつくり出しており、一朝一夕に解決できる問題ではない。

◆高齢者の有効活用への課題
 
若年労働力の継続的な流入によって、規模の拡大と労働生産性の向上を実現してきた日本の企業システムは、若年労働力の減少により転機を迎えている。人口が増えない中でも成長を維持できるモデルへの転換を図らなくてはならない。
 
高齢者の活用については、2006年4月1日からの高年齢者雇用安定法の改正により、65歳までの高齢者雇用確保措置が義務化されることになった。そのため、労使で試行錯誤しながら話し合いを進め、自社に適した就業システムの構築が求められる。現実に、主として製造業では、技術や技能、ノウハウの伝承を進めるために、高齢者の再雇用制度を導入するところも出てきている。これからは、少子高齢化の急速な進展の中で、高い就労意欲を有する高齢者が長年培った知識と経験を活かし、社会の担い手として意欲と能力のある限り、活躍し続ける社会が求められる。

ただし、企業が高齢労働力を有効活用していくためには、処遇制度の抜本的な見直しなど、いくつか乗り越えなくてはならない課題がある。

第一に、従来の年功賃金から仕事や能力、成果に応じた賃金制度への移行である。大企業ほど年功賃金が高齢者の雇用拡大の障害となっており、円滑な高齢者雇用を促進するためには賃金制度の変革は避けて通れない。

第二に、高齢者の扉用形態の多様化や勤務日数・労働時問の弾力化を図ることである。一概に高齢者といっても、その内実は多様である。壮年時代と同様にフルタイムで働くことが可能な元気な高齢者もいれば、知識・技能はあっても体力的に長時間労働か適わない人もいる。高齢者の有効活用を考えれば、ひとつの企業の中で多様な働き方が確保できるようにしなくてはならないだろう。また、高齢者を身体的・心理的両面から労働環境をサポートする支援策も必要になろう。

要するに企業にとっては、全従業員を一律的に処遇する人事マネジメントから、多様化に対応できる人事マネジメントへの移行が重要になってくるということである。これは高齢者雇用を促進するという目的に限定した話ではなく、女性や外国人など多様な労働力を確保していく上でも重要なことである。

また高齢者の側も、定年延長や再雇用という制度に適合していくためには意識改革が必要である。とくに大企業出身者の場合は、これまでの仕事のやり方やプライドに固執することなく、新たな仕事や職場に順応する努力も必要となる。高齢者が何歳まで働くかは最終的には個人の問題であるが、就労意欲の高い高齢者に対して適した就労機会を用意することは、企業、そして社会全体の活性化を図る上での課題であろう。
<直言篇46>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。
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