<直言!日本と世界の未来>春闘の季節に思うこと=安倍政権の賃上げ要請にどう応えるか一立石信雄オムロン元会長

配信日時:2018年1月28日(日) 5時0分
春闘始動、安倍政権の賃上げ要請にどう応えるか一立石オムロン元会長
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春闘の季節がやってきた。安倍政権は経済界に3%の賃上げを要請。労使とも賃上げの方向では一致するが、手法や中小企業への対応に隔たりがあり、厳しい交渉になる可能性が高い。
春季労使交渉、いわゆる春闘の季節がやってきた。安倍晋三首相がデフレ脱却を前進させるため、経済界に3%の賃上げを要請。経団連も例年になく強く賃上げを呼びかけている。連合も従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ2%を含む月例賃金の4%引き上げを掲げるなど、賃上げの方向では一致する。ただ、手法や中小企業への対応に隔たりがあり、厳しい交渉になる可能性が高い。

民間の賃金決定への政府介入は市場経済のメカニズムを歪めかねず、資本主義の本来の姿から見て、望ましくない。もちろん賃金は生産性の伸びに応じて決める必要がある。女性や高齢者が働きやすい短時間勤務制度などの生産性向上策についても労使で議論を深めるべきだ。賃上げ水準も、グローバル化が進展する中で内外企業との熾烈な競争にさらされる各個別企業が経営判断にゆだねるべきである。人手不足はじめ依然厳しい経営環境下にある下請けや中小企業への配慮も必要となろう。

ただ、18年3月期に上場企業は2年連続で過去最高益となる見通しという。企業が抱える内部留保も巨額に達しており、企業が積極的な賃上げを検討できる環境にあるといえる。経済の好循環の鍵を握る消費拡大には将来不安を除く社会保障改革と併せ、継続的な所得の伸びが求められる。収益力が高まり余力のある企業は前年を上回る賃上げを考えてはどうだろうか。

我が国は、1990年代初期にバブルが崩壊し、経済社会制度は押し寄せるグローバリゼーションの波に抗し切れず「失われた20年」を経験した。長い苦しみの20年であったが、ここにきて、我々のなすべき方向性は、おぼろげながらではあるがその輪郭が見えてきたようにも思う。

我が国がここまで発展してきた裏には、経済社会の安定帯としての労使を中心に、国民が一丸となっての努力があったことを忘れてはならない。明治維新をはじめいろいろな場面が思い出されるが、近年では二次にわたる石油危機の際の対応が浮かぶ。国民一人一人が20倍近<にも高騰し量的にも制約された石油問題に対して、果敢に立ち向かい、世界でも最初に、そして見事に克服したのである。その結果、我が国は名実共に先進国への仲間入りを果たしたのである。

バブル崩壊やリーマンショックに伴い、経済の混乱と低迷が続いたが、ようやくで長期デフレからの脱却の出口が見え始めるところまできた。

かつて、春闘では賃上げを巡り労使が激しく対立したこともあった。しかし昨今、労使が企業の存続と再生、そして雇用問題を中心とした、新しい経済社会の在り方について合意形成する場へ大きく変化したのは好ましいことである。

国の成長と個々の企業の付加価値増大は、雇用の維持・確保をはじめ豊かさの源となる。この付加価値の増大を労使で考えるということである。付加価値が乏しくては、労使の選択肢は限られ、利益を減らすか、総額人件費を減らすしかなくなる。当然、雇用の維持も難しくなる。

こうした中で、売り上げが伸びなくても付加価値が上がる経営が求められる。それには、国民経済レベルでの高コスト体質の是正を基本に、ムダを省き生産性を上げ、経営体質の向上を図らねばならない。成熟したゼロサム経済下の新しい労使関係の在り方をいかに構築するか。企業や従業員は量から質への、知的財産の増加を進め、真の豊かさを求めるべきである。経営者は、もとより企業倫理をペースとしたコーポレートガバナンスの徹底に専心すべきである。

今、平成30年度予算案を巡って国会論戦が始まっている。党利党略のみの論戦に走らず、この日本を本当に再び輝く国に、共につくり上げていくという気持ちを一つにした論戦が必要である。
<直言篇40>

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人・藤原歌劇団・日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

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