戦前日本が建設した“東洋最高のダム”、全面再建で奇観も失う見込み―吉林省吉林市

Record China    2011年6月13日(月) 21時5分

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建設当時、“東洋最高のダム”と呼ばれた中国・吉林省吉林市の豊満ダム。これを建設したのは戦前の南満州鉄道。つまり、日本が敷いたインフラの一環だ。2011年5月末、このダムで3回目の安全性定期検査が行われ、これを全面的に再建する方向でまとまりつつある。

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建設当時、“東洋最高のダム”と呼ばれた中国・吉林省吉林市の豊満ダム。一説にはダムの寿命は50年と言われる中、すでに約70年も水力発電所として機能し続けている。これを建設したのは戦前の南満州鉄道(満鉄)。つまり、このダムは日本が敷いたインフラの一環だ。2011年5月末、このダムで3回目の安全性定期検査が行われ、これを全面的に再建する方向でまとまりつつあるという。しかし、これには疑問を呈する声も多く挙がっている。6月13日付で中国経済誌・新世紀が伝えた。

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1934年着工、1942年に発電所として稼働開始した豊満ダム。松花江をせき止めてつくられた堤防は幅1080m・高さ90mで、建設当時はアジアで最も高いと言われた。その後、中国国内の各水力発電所のモデルにもなったこのダムの設備容量は約100万kW。発電用途以外に治水、灌漑、生活・工業用水の供給に一役買っている。

95年、05年に続き現在、3回目の定期安全検査が行われているが、このダムが1カ月ほど前に従来の東北電網から中国国家電網の子会社傘下となったことで、全面取り壊し・再建プロジェクトが立ち上がろうとしている。資金100億元(約1250億円)を投入することで「(老朽化に伴う安全)問題を徹底的に解決する」と謳っており、すでに昨年、中国国家発展改革委員会の同意も得ている。

しかし、この動きに「資金の無駄遣い」と反対を唱える専門家は少なくない。もともとこのダムは、通年の稼働時間が2000時間あまり。全国平均の3429時間と比べると大幅に少なく、それでも中国東北部への供給は十分に満たしている。今回の再建プロジェクトは、設備容量を現行の約1.5倍にあたる148万kWに引き上げようとしているのだが、そこに必然性はあるのか?疑問を呈する声は少なくないが、今回の定期検査チームには新たに中国国家電網の職員らが投入され、結論としては全面再建に傾くことが濃厚になっている。

実はこのダムが建設されて以来、松花江の下流一帯には“中国四大奇観のひとつ”とされる冬季の霧氷が見られるようになり、この70年間、毎年人々の目を楽しませてきた。これは、ダム建設によって河川水の水温が冬季も比較的高く保たれ、年間を通じて凍ることがないため、冬場には零下20〜30℃になる外気温との温度差で大量の水蒸気を生み出し、それが川岸の樹木の枝にぶつかって氷結する現象だ。しかし、もしダムの再建が進むと松花江の水温が下降し、河川水はかなりの確率で冬場に凍結することが予想されている。このため、霧氷は姿を消すことになるだろうと考えられている。

「再建ではなく補修で十分なのでは?」との声を一掃したのが、中国国家電網側のこの発言。「かつて帝国主義の日本が中国人民におしつけた危険性の隠ぺい。このダムはそもそも先天的に致命的な欠陥がある」というものだ。最終的な再建への説得材料として、日本が引合いに出されてしまうことになるのだろうか?(翻訳・編集/愛玉)

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