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中国人と日本車、父がトヨタに乗せた夢―中国人学生

配信日時:2015年7月25日(土) 14時8分
中国人と日本車、父がトヨタに乗せた夢―中国人学生
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「中国×日本車」と聞くと、反日デモで暴徒化した市民が日本車を破壊するという場面を連想する日本人も多いのではないだろうか。しかし、中には延辺大学の袁倩倩さん家族のように日本車に乗ることに夢を託した人もいる。
「中国×日本車」と聞くと、反日デモで暴徒化した市民が日本車を破壊する場面を連想する日本人も多いのではないだろうか。しかし、中には延辺大学の袁倩倩さん家族のように日本車に乗ることに夢を託した人もいる。

父は退役軍人である。軍隊にいた時、運転手をしていた。私が小学校の時、父は退役して故郷のある運輸会社に勤めた。毎週、父はトラックに乗って家に帰ってきた。ある日、外で車の音がした。ドアを開けると銀色の車が目に映った。なんと父が運転席に座っていた。父は「これはメイド・イン・ジャパンの車、トヨタだよ。とても素敵だろう?じゃ、乗って。父さんと一緒にドライブに行こう」と言った。初めて車に乗った私は興奮のあまり、笑いが止まらなかった。

夕食の時、父は「お父さんは決心した。3年以内に、うちもトヨタを買う」と言った。私が「本当?じゃ、約束して」と言うと、父は頷きながら「うん、約束だよ」と答えた。しかし、当時母は専業主婦だったし、父の給料もあまり高くなかった。そして、3人の子どもの教育費用もずいぶんかかっていたから、経済的に車なんか買う余裕がなかった。それにトヨタのような外国製の車を買うのは、遙かな夢であった。

それ以降、父はもっと必死に働いた。不幸なことに、父が勤めていた運輸会社は不況で倒産してしまった。父は「このままじゃ、トヨタなんか永遠に買えないぞ。しっかりしなきゃ」と大きな声で言った。それから、父は友達からお金を借りてトラックを買い、運輸業をやり始めた。どうしてそんなに一生懸命頑張るのかと友達に聞かれた時、父は「俺はトヨタを買うよ」と答えた。

時々、長距離運輸で父と1カ月も会えないことがあった。私は「私よりトヨタの方がずっと大切なんだ、お父さんが嫌いだ」と父にかんしゃくを起こしたことが何度もあった。父の仕事が忙しくなるにつれて、家計もだんだんよくなってきた。しかしながら、「天に不測の風雲あり、人に旦夕の禍福あり」ということわざのように、父は急病で倒れてしまった。医者の話によると、過労で病気になったのだそうだ。ぐっと痩せた父を見て、心配でならなかった。

ある日、私は父と母の会話を聞いた。「あなた、どうしてそんなに頑張ったの?健康も大事じゃない?」「トヨタを買ってあげるって約束したんだから」「私たちにとってトヨタよりあなたの健康が何より大切なのよ」「それは、俺も分かってる。でも、あの子の笑顔、初めて車に乗った笑顔を今でも忘れてない。その時決心したんだ。お前たちを苦労させないで幸せにしてあげるって」。私は涙いっぱいになった。父の深い愛を感じた。父がそんなに頑張ったのは全部私たちを愛しているからなのだ。なぜ以前は気が付かなかったのかと悔しくてならなかった。

父の病気を治すために、わが家のお金をほとんど使ってしまった。トヨタはもう一度夢になった。父はたまに「俺は残った一生のうちにトヨタに乗れるかな」と独り言を言う。その話を聞くたびに、私は胸が痛んできて泣きたくなる。将来、ぜひ父にトヨタを買ってあげたい。私にとってトヨタはただの自動車ではなく、父の愛が込められたものなのである。(編集/北田)

※本文は、第六回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「メイドインジャパンと中国人の生活」(段躍中編、日本僑報社、2010年)より、袁倩倩さん(延辺大学)の作品「父とトヨタ」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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