<新安保法制>安倍政権の「中国仮想敵国論」のまやかし!=米中戦略・経済対話で分かった米中の「あ・うん」―高まる日米中相互依存

八牧浩行    2015年6月26日(金) 7時18分

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米国、中国両政府がワシントンで開催していた第7回米中戦略・経済対話で両国間投資協定(BIT)交渉が進展したほか、経済・金融分野や地球温暖化対策などで協調していくことで合意した。この大規模対話で明らかになったのは、米中の相互依存の実態である。資料写真。

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2015年6月24日、米国、中国両政府がワシントンで開催していた第7回米中戦略・経済対話で両国間投資協定や(BIT)交渉が進展したほか、経済・金融分野や地球温暖化対策などで協調していくことで合意した。

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米中戦略・経済対話は、米中両国の主要閣僚や政府・経済界が経済や安全保障分野の懸案、国際的な課題について意見交換する大規模会議で、毎年米中交互に開催されている。今回対話でも、米国のバイデン副大統領、ケリー国務長官、ルー財務長官、中国の楊潔●(竹カンムリに褫のツクリ)国務委員(副首相級)、汪洋副首相、楼継偉財政部長はじめ両国政府や経済界のトップクラス1000人近くが出席。中国側は400人以上の代表団を送り込んだ。

安部政権は地球の裏側まで自衛隊を出動させる集団的自衛権行使・安保法制の推進に懸命だが、各種世論調査で国民の7割以上が同法制に「反対」している。この厳しい現実に、焦った官邸・自民党は「中国脅威論」をふりまき、中国を「仮想敵国」として名指しし有権者を説得するよう地方組織に指示を出したと言われる。

専守防衛を謳った現行憲法について、国民投票など改憲手続きを取らずに、解釈改憲により海外で戦争ができるようにする「安保法案」という不人気政策を今国会で強行するため、特定の国を「仮想敵国」として煽るのは禁じ手。いかにリスクが大きいかは、過去に「鬼畜米英」「打倒支那」を標榜して無謀な戦争に突っ込んで日本史上最大の惨禍を招いた第二次大戦を検証するまでもない。

政府は集団的自衛権の行使を容認することで、抑止力が強化され、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていくと主張するが、「仮想敵国」とされた国は自国が攻撃されないように、さらに大きな軍事力を整備しようとする。これに対抗して日本もさらに相手を上回る軍事力を整備せざるを得ず、安全保障上の脅威も緊張も以前より高まる結果となるのは歴史が証明している。

◆ケリー長官「米中合意は極めて重要」

今回の米中戦略対話では、温室ガス削減問題、米中投資協定、人民元の国際化など約200項目で合意したほか、6つの大掛かりなプロジェクトを立ち上げ、民間部門が技術協力を推進することで一致した。両国は今年後半に、米カリフォルニア州ロサンゼルスで「低炭素都市サミット」を初めて開く計画も明らかにした。汪副首相は「気候変動に米中が取り組むことは挑戦でありチャンスとなる」と言明。ケリー国務長官も、太陽光や風力発電などの分野で「数百万人の雇用創出の機会がある」と述べた。

安全保障問題では、バイデン副大統領が、中国に「公平、透明性のある健全な競争者」であるよう求め、サイバー空間の共通のルールづくりや、南シナ海問題の平和的解決などを中国に促した。これに対し、楊国務委員は「新型大国関係の構築は共存への進路となる。中国は航行の自由を強く支持している。サイバー・セキュリティーの問題は非常に重要で、米国や他国と適切に取り組む」と呼応。朝鮮半島の非核化や中東の安定に向け協力することでも合意した。

同対話では9月に予定されている習近平中国国家主席の米国公式訪問(国賓)についても協議され、米国は国賓として厚遇する方針だ。米中は表面上対立することがあっても争わず協調していくことを基本方針としている。ケリー国務長官も米中戦略・経済対話後の記者会見で、「経済、環境面での今回の米中合意は極めて重要だ」と強調した。

米国にとって最大の課題は巨額の米政府債務と経常赤字の縮減であり、破綻を避けるためには、軍事費の削減と、世界最大の中国消費市場の取り込みが不可欠。中国は米国の最大の輸出相手国である。これに加えて、中国は米国債を1兆3200億ドル(約160兆円)も保有、外貨準備も3兆8000億ドル(約460兆円)と世界最大である。オバマ大統領は「米中協力はアジア重視戦略の核心だ」と明言している。

◆米中は安全保障でも連携

安全保障面でも米軍と人民解放軍の協力関係にあり、米ハワイ諸島沖で来年行われる米海軍主催の環太平洋合同演習(リムパック)に中国海軍が昨年に引き続き参加する予定だ。陸軍同士も非常時支援訓練などで米中が協力、空軍同士の交流もスタートしている。

中国も、米国と厳しい対立があっても衝突せず、対話で解決する「対立的共存」方針のもと、米中が互いに干渉せずに利益を追求する世界を志向している。国内向けには対立姿勢を見せつつ、米国と経済相互発展と武力不使用を改めて確認し合っているのが実情だ。

米国との間には、日本にはこのような定期的な戦略的大規模対話はない。オバマ大統領と習近平主席の会談は年に2〜3回、長時間開催されており、米中は互いの立場を暗黙裡に理解し合う「阿吽(あ・うん)」の関係にあるとの見方も多い。筆者は先に中国を取材旅行したが各地で米国企業が立地し、米ブランドのビルが林立、アメリカ人であふれていた。

米国と同様、日本にとっても中国は最大の貿易相手国。2万2000社が進出し、日本人21万人が中国に滞在している。日米中が力を合わせて世界の成長センター東アジアのさらなる繁栄に向け努力することが肝要だ。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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