山崎真二 2023年1月3日(火) 9時0分
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2023年の米国政治では中間選挙の結果、連邦下院で主導権を握ることになった野党・共和党がどう動くかが焦点の一つになりそうだ。画像出典:The White House公式twitterより。
2023年の米国政治では中間選挙の結果、連邦下院で主導権を握ることになった野党・共和党がどう動くかが焦点の一つになりそうだ。
◆対決姿勢が激化
周知の通り中間選挙の結果、連邦議会ではバイデン大統領の与党・民主党が上院の主導権を確保、下院は共和党が僅差で多数派となった。新聞・テレビの報道では「民主党の善戦」に焦点が絞られ、共和党の下院奪回がもたらす状況がよく説明されていない感がある。だが、1月3日開幕の第118議会の下院を共和党が牛耳る意味の重要性を見過ごしてはなるまい。まず、共和党は下院議長のポストを獲得する。加えて計20の委員会や5つの特別委員会の委員長職もすべて独占する。
米有力シンクタンク「ヘリテージ財団」の専門家は米メディアのインタビューで「下院議長はどのタイミングで法案を議題にし、どう扱うかを決める大きな権限を持っているし、下院では過半数の賛成で大統領を弾劾訴追できることにもっと注意を払うべきだ」と強調する。そもそも、下院議長は大統領権限の継承順位が副大統領兼上院議長に次いで第2位という要職である点も忘れてはならない。共和党が下院でどのような議事運営を行うかはバイデン政権の政策運営に大きな影響を及ぼすはずだ。民主党との議席差数が9票しかないことからして、民主党との妥協路線に向かうとの見方もある。しかし、下院共和党トップのマッカーシー院内総務はバイデン政権を厳しく追及する意向を示しており、民主党との対決が強まる公算が大きい。
◆議会襲撃事件調査委は解散へ
同院内総務周辺からは、アフガニスタンからの米軍撤退時の混乱や中南米からの不法入国者の急増問題、経済政策などでバイデン政権の“失政”の責任を問うべきとの意見が飛び出している。共和党の保守強硬派の中には「政策よりも、バイデン大統領や閣僚らの追及が先」と声高に主張する議員もいる。オバマ政権時代にバイデン氏が副大統領の時、次男のハンター氏が中国やウクライナ企業から不正報酬を得たとの疑惑が浮上しており、共和党の一部強硬派議員は下院の委員会で「ハンター疑惑」を徹底調査する構えを見せる。一方、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件でトランプ前大統領の責任を追及するため民主党主導で下院に設置された特別委は解散となるのは確実。バイデン政権の巨額のウクライナ支援も下院で共和党のやり玉に挙がるだろう。マッカーシー院内総務が同支援に関し「白紙小切手は切らない」と述べているほか、共和党内では「まず米国内に金を回すべきだ」との批判が多いからだ。
◆勢い増すトランプ派のMAGA議員
もう1点見逃せないのは、トランプ前大統領の「Make America Great Again」(再び米国を偉大に)に同調するMAGA議員の勢力増大が予想されること。MAGA議員は下院共和党の獲得議席222の約4分の1を占めるとみられる。MAGA議員は中間選挙後さっそく、力を誇示している。共和党の下院議長候補選出の際、MAGA議員らは同党指導部推薦のマッカーシー院内総務に対抗し、独自の候補を担ぎ出す“造反”を起こした。
同院内総務は2020年の大統領選挙を不正とするトランプ氏の主張に同調するなど同氏の支持者だったが、「最近では党内穏健派に接近している」(米政治専門紙「ザ・ヒル」)とされ、MAGA議員らが反発したようだ。MAGA議員が勢いづくのは共和党内でトランプ氏の影響力と関係がある。中間選挙で接戦州の上院選や知事選でトランプ氏推薦候補の落選が相次ぎ、同氏の求心力の低下が取りざたされた。さらにトランプ氏は2020年大統領選の結果を覆そうと画策したことや、退任後にホワイトハウスから機密文書を私邸に持ち出したことなど、さまざまな捜査の対象になっているのは事実。それでも、「トランプ氏の影響力をまだ過小評価すべきでない」「共和党のどの有力政治家よりも、依然として存在感がある」(いずれも米有力政治アナリスト)との見方が有力。MAGA議員がこうしたトランプ氏の影響力をバックに下院で共和党指導部を突き上げる可能性は否定できない。MAGA議員らトランプ派の動向は2024年の大統領選に向けた米国政治の行方を探る上でも軽視できないだろう。
■筆者プロフィール:山崎真二
山形大客員教授(元教授)、時事総合研究所客員研究員、元時事通信社外信部長、リマ(ペルー)特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。
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