日中は科学研究で積極的な連携を―野依良治(名古屋大学特別教授、科学技術振興機構研究開発戦略センター長)

配信日時:2019年6月3日(月) 6時30分
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ただし、科学というものは、産業経済のためだけにあるのではありません。本来の科学、純正科学というのは、森羅万象に関わる真実の追究の営みであって、人々の真っ当な自然観や、人生観を培うためにあります。もちろん、その知識を利用してつくる科学技術は、当然社会性を帯びてきます。「中国製造2025」にあるような国の存立と繁栄にも関わってきます。しかし、究極的にはより広く人類文明の持続を目指さなければなりません。

大切なことは、科学技術は、現代の世代のためだけにあるのではないということです。将来の世代との公平性に対する配慮が絶対に必要です。環境問題だけでなくて、エネルギー、資源、さらに生物多様性といった深刻な問題をどう考えるのか、これらをまだ生まれていない世代、それからそのもっと先の後継世代ともよく議論しなければいけません。彼らが嫌がることは絶対やるべきではない。

巨大な中国が、これからどこを目指すのか。中国の方向性は、人類社会に決定的な影響を及ぼします。ぜひグローバルな観点から、全世界をいい方向に誘導していただきたいと思います。

――日本と中国の研究者による共同研究、共同開発について、先生はどう考えておられますか。

野依:今後の科学技術の大きな発展は、今までのような個別の分野の研究ではなくて、分野の連携、あるいは融合によってもたらされると私は予想しています。これまで独創性が評価されてきましたが、これからはさらに「共創」が求められます。もちろん中国、アメリカ、日本も、それぞれにいい教育にむけて努力をしていますが、どうしても画一的なものになる。異なる教育の背景、研究経験を持つ人たちを相補的に集約して「共創」していくことは必然だと思います。

個人による独創は尊重されるべきだが、1人でできることは限られるということです。特に加速器の研究、宇宙天文学、ゲノムや生命科学のような大目標をかかげるビッグサイエンスは、もはや単独国家では不可能で、大規模な国際共同研究が当たり前になっています。中規模、小規模研究においても共同は非常に有効です。したがって、日中は互いに敬意と信頼を寄せ合って、少なくとも基礎研究のレベルについては、より積極的に協力連携すべきだろうと思います。

<中国の英知の幅に敬意>
――今年の6月末、習近平主席が11年ぶりに来日する予定です。野依先生は中国科学院の外国籍院士でもあり、習主席の来日にあたって思われること、また、中国科学院についてのアドバイスをお願いします。

野依:近代の科学技術を先導してきたのは、主に欧米諸国です。その結果、科学技術社会が、欧米先導の「英語の世紀」になっています。さらにこれからデジタル化が加わることによって、グローバルに価値観がさらに画一化、規格化して極端な英語モノカルチャーになることを憂慮しています。

これは大問題で、世界の知的な基盤を非常に脆弱化していきます。なぜなら、未来の世界は本当に不確実性に満ちたものだからで、モノカルチャーでは何かが起こればすべてが一気に崩壊します。科学に国境はありませんから、一応世界標準の体制をつくる必要がありますが、同時に、東洋の特質を生かした差異化をもって補完し、リスクに備えなければなりません。
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