日中衝突は避けられないのか?新著「中国の逆襲」を評す

凌星光    
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福井県立大学名誉教授で全日本華僑華人中国平和統一促進会名誉顧問の凌星光氏は3日、「日中衝突は避けられないのか?新著『中国の逆襲』を評す」と題した記事を発表した。

福井県立大学名誉教授で全日本華僑華人中国平和統一促進会名誉顧問の凌星光氏は3日、「日中衝突は避けられないのか?新著『中国の逆襲』を評す」と題した記事を発表した。以下はその内容。

舛添要一著「中国の逆襲――習近平の戦略」が出版された。中国の日本に対する「逆襲」が始まるという怖い見出しだ。しかし、読んでみると、実に時宜を得た問題を投げかけており、次のいくつかの点で中国への理解を深めることのできる良著だ。

1.高市発言に対する中国の強烈な反発への理解

2025年11月7日国会での答弁で、高市首相は台湾について「戦艦を使い、武力行使をともなえば、どう考えても存立危機事態になり得る」と語った。自衛隊は防衛出動することができるようになる。著者は、これは今までの曖昧的曖昧さから一歩はみだし、中国の内政問題であるいわゆる「台湾有事」に武力干渉する態度を鮮明に示し、当然中国からの猛反発を受け、「戦後の国際秩序への挑戦であり、中日関係を深刻に破壊する」とし、一連の対抗措置が取られたことに理解を示す。

そして著者は、中国の台頭と米国の相対的低下により、世界は2G時代に入っており、「習近平はトウ小平とは異なり、台湾問題に関して日本やアメリカに妥協する必要性を感じていない」と指摘する。その上で、高市首相がなぜこのような軽率な発言をしたかと問いかけ、力関係の変化と中国という「国家の本質」に対して認識が足りないからで、中国を「より俯瞰的に見なければならない」と説く。

2.中国の「屈辱の近代史」に対する心情への理解

第2章の「蚕食される帝国」と第三章の「帝国の落日」では、アジアの文明国家中国が、アヘン戦争以来、列国の侵略を受け、いかに苦しく悲惨な歴史をたどったかを詳しく説明している。そのプロセスで、中国の志士が明治維新によって近代化に成功した日本に学ぼうとしたが、逆に日本に侵略され失敗に帰した。このような中国近代史、日中関係史の「全体像を簡潔に把握できる」ように努力したとしているが、その意は十分に表されている。

とりわけ本書を通じて感じることは、清朝末期に半植民地化し、1911年に清王朝が倒れた後、軍閥割拠と国共内戦によって国家は全く体をなさなくなった悲惨な状況は言語に絶するものがあった。著者は「日本人が中国の近代史に無知であることが、両国間の摩擦を激化させる一因となっている」として、中国の「屈辱の近代史」を同情的に描いている。

3.日本の中国侵略で犯した罪への反省と理解

近代史において日本は列国と共に中国侵略の罪を犯したが、現代において「満州事変」、「日支事変」、さらに太平洋戦争を起こして、中国大陸で犯した罪悪は惨烈さを極めた。著者は第四章「内戦と日中戦争」および第五章「中華人民共和国の樹立」でそれを詳述している。

ここで重要なのは、「ドイツ国民は第二次世界大戦後、その歴史的事実を忘れずに反省し続けている。それに比べ、今の日本人は、日中戦争の惨禍について思いを寄せることが少ない。歴史を忘れてはならない」と著者が警告していることだ。これは王毅外交部長が2月14日にドイツのミュンヘン会議で語った内容と重なる。

4.中国の強い台湾統一意識への理解

著者はまず1871年に対等な条約「日清修好条規」が結ばれ、「領土の相互不可侵」が約束されたと強調する。ところが、日本は1874年に台湾に出兵し賠償金50万両を獲得、その20年後には日清戦争を起こし、1895年の下関条約で台湾、澎湖諸島が割譲された。同じ頃、清国の従属国だった琉球王国と朝鮮王国が日本に併合された。まさに台湾は「屈辱の歴史の象徴」だと著者は指摘する。

そして、1945年8月日本降伏後、カイロ宣言、ボツダム宣言で台湾は日本に返還されたにもかかわらず、国共内戦で台湾解放はできなかった。また国連第2758号決議および日中国交正常化文書に書かれているにもかかわらず、「日本が『一つの中国』を認めているわけではないというのは、やはり無理がある」と日本政府の姿勢を批判し、「『中華民族の偉大な復興』を実現するには、台湾を統一することは不可欠の条件」と中国への理解を示す。

5.中国の強国化と安全化への理解

著者はここ数年、何回か訪中し政府の要人とも会っている。中国に足を運ばないいわゆる中国専門家の「中国崩壊論」に異議申し立てをし、「習近平体制は盤石であり、崩壊する兆しなど全くない」と断言する。また経済的には「不動産不況が重くのしかかっているが、経済成長率は5%前後で、国民の生活は豊かであり、相対的に日本人の方が貧しくなっている」と説く。

自由のない監視国家という論調に対しては、「不満分子が抗議活動などを起こさないように、徹底した監視と強権的な取り締まりをしている。そのおかげで、犯罪や交通違反などが激減し、『幸福な監視国家』を甘受している」と反論する。そして「言論の自由の制限など多少はあっても、治安を維持し、暴動を防ぎ、国内を分裂させないことを優先させる」ことが国民から支持されていると弁護する。

さて、中国を同情的かつ肯定的に見る著者は、「中国はアヘン戦争以来の『屈辱の近代』から完全に脱却し、再びかつての世界大国の地位に上りつつある。それにともない、中国人は自信を回復しているようだ。これを私は『中国の逆襲』『(中華)帝国の逆襲』と考えている」というのだ。さらに「大樹になった習近平政権は、暴風雨にも耐えきれる強靭さを誇っている。むしろ日本こそ、これから到来する嵐への準備ができていないのではあるまいか」と懸念を示す。

ここで筆者は著者と異なった見解を示したい。高市現政権のように中国を敵視するならば「中国の逆襲」があり、武力衝突も起こるかもしれない。しかし、中国は共存共栄の道を求めており、「中国の逆襲に備える」のではなく、「中国の復興に適応する」に発想を変えるべきだと考える。具体的には中国の唱道する「人類運命共同体」理念を評価し、日中間の四政治文書に基づく日中平和友好関係に戻ることだ。

国際政治における近現代史は確かに「覇権サイクル論」であり、著者も基本的にはこの立場に立ち、当面の米中対立を覇権争いと見る。しかし中国はアメリカも日本も敵視せず、アメリカ覇権主義、日本軍国主義魂に反対しているだけだ。運命共同体とは国の大小を問わず全く平等な立場で話し合い、ものごとを平和的に決定していこうということで、一極主導世界から多極化世界に移行するというのは、真の意味での国連機能の復活であり、そのバージョンアップなのだ。

なお、著作の中で触れているように、中国は沖縄地位未定論や国連憲章の旧敵国条項などを提起しつつある。しかし、それは日本が四つの政治文書を反故にしているからであり、もし日本が国交正常化の原点に戻れば、これらの問題はすべて解消される。1970年代から90年代にかけて、日中友好の黄金時代が出現し、特に90年代には東アジア共同体論が熱く語られ、日中関係は前途洋々たるものがあった。現在の困難は一時的なものであり、中国が大きく成長したことによって、覇権主義時代は終わり、覇権なき国際協調の新時代が間もなくやってくると信じたい。

最後に、著者は「統制の強化のみで混乱を避け、国民の離反を避けることができるのであろうか」など、中国の今後に対する疑念をいくつか提起している。ここで最も重要なのは社会主義民主の発揚とその制度化だろう。これは中国自身が解決していくものだが、国際環境が大きく影響するし、世界の有識者の知恵と助言も欠かせない。中国はここ40数年間、素晴らしい発展を遂げたが、それは先進国をはじめ、各国の長所を謙虚に学んだからだ。今後もこの姿勢を貫き、自らの改革を進め、世界の人々から魅力ある国と評価されるようになろう。日中対立ではなく、日中協力による世界への貢献を共に考えていきたいものだ。

■筆者プロフィール:凌星光

1933年生まれ、福井県立大学名誉教授。1952年一橋大学経済学部、1953年上海財経学院(現大学)国民経済計画学部、1971年河北大学外国語学部教師、1978年中国社会科学院世界経済政治研究所、1990年金沢大学経済学部、1992年福井県立大学経済学部教授などを歴任。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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