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福井県立大学名誉教授で全日本華僑華人中国平和統一促進会名誉顧問の凌星光氏は18日、「戦争か平和か?平和国家日本のチャンス到来!――中国は友好国家か、仮想敵国か?――」と題した記事を発表した。
福井県立大学名誉教授で全日本華僑華人中国平和統一促進会名誉顧問の凌星光氏は18日、「戦争か平和か?平和国家日本のチャンス到来!――中国は友好国家か、仮想敵国か?――」と題した記事を発表した。以下はその内容。
目下、日本の政局は大きく動き、対中抑止力強化か、それとも対中友好外交強化かが問われている。現在、前者の政治勢力が優勢を占め、中国脅威論をあおり、「台湾有事即日本有事」ということで対中敵視政策を推進しようとしている。他方、平和憲法(とりわけ第9条)を守り、日中政治四文書に基づいて、台湾問題は中国の内政問題で干渉すべきではないという政治勢力が固まりつつある。今回の総選挙はこの点で天下分け目の戦いになる可能性があり、われわれ在日華僑華人にとっても直接大きな利害関係があり、関心を払わずにはいられない。
現在、日本のマスメディアの偏った報道によって、中国の実像が大きくゆがめられ、中国脅威論が独り歩きしている。そこで、以下のいくつかの点での実態を述べ、誤った中国イメージを正さねばと思う。
1.中国は強大な平和国家
「平和的台頭(和平崛起)」のスローガンの下、中国は一貫して平和外交政策を推進してきた。「力によって現状を変えようとしている」というのは事実に合わない。旧ソ連、インド、ベトナムなどと未確定国境で衝突が起きたことはあるが、すぐに撤退している。「懲らしめる」ためであり、侵略または領土拡張のためではないことははっきりしている。
日本も平和憲法のおかげで海外派兵を拒否でき、平和国家としての地位を確立してきた。最近、防衛費の急増などにより、軍国主義復活の論が中国で展開されているが、この懸念は思いすぎであり、日中両国の相互理解が深まることによって解消されていくと信じたい。
日本も中国も共に平和国家であり、日中平和友好条約に基づいて、両国間の平和と友好の関係を維持していくばかりでなく、アジアおよび世界の平和のために協力していくべきだ。
2.決して多くない中国の軍事費
中国の軍事費は日本の6倍だとして脅威論をあおっているが、このような比較は全くナンセンスだ。人口は日本の10倍、国土面積は日本の25倍、陸続きの国境は2万2800キロで世界最多の14カ国と接している。海岸線も1万4500キロと長い。
中国軍事費の対GDP比率は数十年にわたって1.2%台が堅持され、決して高くない。統計方法を西側諸国に合わせてもせいぜい1.6~1.7%で、米国の3%台、日本の1%台(現在の増大目標2%)に比べても決して高いとはいえない。
中国の国防費は米国覇権主義への防御費として計上され、常に軍事超大国の米国が念頭にある。絶対額においては米国の約1兆ドルの3分の1で、はるかに劣る。ただし、中国は海外にほとんど軍事基地を持っておらず、予算は専ら装備費、訓練演習、軍事研究、人件費に使われている。従って、効率は米国よりもかなり良く、近年、中国の追い上げが顕著となっている。
3.核兵器の先制不使用など三原則を堅持
中国は1964年に核兵器を保有した際、1)核の先制不使用、2)非核保有国には使用しない、3)核威嚇はしない、の三原則を提示し、以来ずっと守ってきた。また最近は次の三原則、1)核の先制不使用、2)非核保有国に対し、使用したり核威嚇したりしない、3)核軍縮及び核不拡散を支持する、を提示している。
中国の核兵器が60年たっても米ロに比べて約10分の1(ロシア約5459発、米国約5177発、中国550~600発)にすぎないというのは、防御的最低数量の確保を目標としているからだ。毛沢東は「原子爆弾は食べられるものではないし、あればよいのだ」と言ったそうだが、正にその精神が貫かれている。
ただ、アンチミサイルの技術が発展し、途中で落とされる可能性が出てきたため、一定の数量確保が必要だという議論がなされたことはある。いずれにしても、毛沢東は原子爆弾を「張子の虎」と言ったが、中国はそれに頼るような政策はとらない。この点でも、唯一の核被害国日本にとって、中国は核兵器反対の有力なパートナーなのだ。
4.台湾の平和統一が基本方針
台湾の分裂状態は中国が半植民地化した象徴的な「遺物」であり、台湾統一は中国国民の長年の悲願にして、核心的利益の核心であるゆえんだ。従って、台湾独立は絶対に許さないしあり得ない。米国や日本には台湾の独立志向を支援する勢力が存在するが、それは全く無駄であることを認識すべきだ。
中国が外部からの干渉を阻止するために、軍事力を強化し演習も行っていることは事実だが、平和統一の基本方針にはわずかの変化もない。東アジアの平和のためには台湾の平和統一を早期に実現することが望ましい。最近、台湾内部にも新しい動きが出ており、近いうちに劇的展開を見せる可能性が出てきた。
それに対し、トランプ大統領は自らの力の限界を認識して、前向きに対応する姿勢を見せている。ところが、日本はそれを恐れ、米国に引き続き対中強硬姿勢で臨むよう働きかけている。これは全く歴史の流れに逆らう本末転倒の行動だ。
5.超大国・覇権国家に反対する中国
トウ小平は1974年に国連で、もし「中国が変質し超大国となり」、「世界の覇権を握る」ようなことがあったら、「世界の人民は」「中国の人民と協力して」「中国を打倒すべきだ」と語った。
また、日中平和友好条約第2条は反覇権条項で、日中両国は「覇権を求めず」、「覇権を確立しようとする」国または国の集団に反対するとしている。これは他に類例のない条約であり、日中両国が覇権なき世界秩序を構築する上での重要なよりどころとなり得る。
日本は覇権を握ろうとして失敗した。敗戦後は米国覇権主義を是として受け入れ、中国の一部行動については覇権主義的行為と批判する。これでは正当性に欠け、客観的事実に基づいて公正に判断すべきだ。中国への疑義については率直に意見交換し、相互理解と相互信頼を深めるよう努力すべきだ。
6.「係争棚上げ、共同開発」が唯一の解決策
尖閣周辺海域での中国海警局の船舶航行がしきりに報道され、「中国側の一方的な現状変更の試み」と喧伝されている。確かに、2008年以前までは中国の船舶航行はなかったが、国交正常化の際、懸案事項として「棚上げ」にした経緯があることを忘れてはならない。
中国側としては、トウ小平が提起した「係争棚上げ、共同開発」方式で友好的雰囲気を醸成し、時間をかけて自然的な解決を図ろうとした。ところが、日本側がこれを拒否し、日本の固有領土と強調するようになったがために、中国側も固有領土と強く主張し、実効支配に乗り出すようになったのだ。
尖閣を巡る日中対立は当面、収まりそうもない。時間は中国に有利とみられており、日本の主張が受け入れられることはまずないだろう。なるべく早く、「係争棚上げ、共同管理、共同開発」の仕組みを作り、東アジア共同体構築の跳躍台となることが望まれる。
もし以上の6点について納得が行き、対中敵視から対中友好へと基本的姿勢が変れば、日本の前途は一気に極めて明るいものとなる。対米対中バランス外交を展開して、米中両国からも重視されるようになろう。と同時に、ASEANやEUからも評価されるに違いない。
しかしながら、現在の日本には中国を客観的かつ理性的に見る政治的環境に欠けている。すなわち、国際政治の行方について次のような新しい認識が必要だと考える。
第一に、力関係の変化と共に覇権サイクルが終息する。
最近発表された米国の国家安全保障戦略報告は、今までの覇権維持は困難で、戦略的収縮の方向が示された。これはオバマ元大統領の「世界の憲兵にならない」の延長線にあり、米国の衰退と中国をはじめとする発展途上国の台頭を示している。
この新しい動きを、ちまたでは中国覇権主義が米国の覇権主義に取って代わると言われているが、前述した通り、中国は覇権主義反対で、多極化が進む中、覇権なき世界秩序を構築しようとしている。つまり、近現代国際政治において繰り返された覇権サイクルに終止符が打たれるのだ。
中国脅威論から脱皮した日本は、根拠なき「中国の覇権的行為」を喧伝するのではなく、覇権なき世界秩序構築に建設的な意見を出すという道を選ぶべきだ。それは覇権的地位から降りていかざるを得ない米国からも評価されるだろう。
第二に、今後20~30年は多極化に向かう過渡期だ。
戦後世界は一時期、米ソ冷戦構造の下、相対立する二極体制が続いた。1990年代初めにソ連が崩壊し、米国の一極体制が約30年間続いた。この間に、米国は相対的に衰退し、中国が台頭してきた。ここ10年間、米国の対中警戒心が強まり、米中関係は緊張度を増してきた。
今後20~30年間、米中関係は対立と協調が混ざった複雑なプロセスを経るだろう。経済では間違いなく中国が米国を凌駕し、軍事面でも中国がさらに追い上げる。そうした中、米国はまだ相対的優位を保っているうちにテーブルにつき、多極化世界の在り方について中国と話し合うこととなろう。
最近、米中は2Gで決めようとするのではないかという懸念がよく聞かれる。これは中国の反覇権理念に相反するため、まずないと見るべきだ。中国はロシア、EU、日本およびグローバルサウスの意見に耳を傾け、コーディネーター的役割を果たしていくだろう。
第三に、国際安保組織が相互安保条約(軍事同盟)に取って代わる。
ゴルバチョフ元大統領のミスはワルシャワ条約機構を一方的に解体したことだ。その結果、ソ連は崩壊し、社会主義陣営が消え伏せた。他方のNATOは解体しないばかりか、東方拡大を進めた。その結果がロシアのウクライナ侵攻であり、4年に及ぶウクライナ戦争だ。
中国は中ソ友好同盟相互援助条約を延長せず、1980年に失効となった。それ以来、軍事同盟なき国家として専ら自己防御力の強化に努めてきた。そして平和的な戦略的パートナーシップ国を増やしてきた。仮想敵国を想定しない安全保障条約には前向きであり、欧州安全保障協力機構の強化には肯定的な姿勢を示している。また、そのアジア版「アジア安全保障協力機構」の創設には賛成するだろう。
今後、日米安保条約やNATOは有名無実化し、仮想敵国のない国際安保組織が既存の軍事同盟に取って代わるだろう。日本の日米安保条約基軸論もすでに崩れつつあるといえよう。
第四に、歴史や台湾問題で禍根を残したサンフランシスコ条約は真に失効する。
1951年、吉田茂首相が単独講和にかじを切り、ソ連、中国、インドなどが参加しない下で、48カ国とサンフランシスコ平和条約を締結した。中国はそれを認めておらず、国交正常化の時にも大きな問題となった。結局、大平正芳外相が記者会見で、日中国交正常化と共に、この条約は失効すると宣言し了とした。
日本の戦後処理は、中国が参加していなかったため、歴史認識問題や台湾問題で曖昧さを残したまま現在に至っている。今や中国は国際政治において主役を果たすようになっており、今までの曖昧政策では通用しなくなっている。この新しい情勢をよく認識し、今までの曖昧政策を乗り越え、真摯に中国に対応しなくてはならない。
高市総理の台湾問題への軍事的関与を示唆した挑発的発言は、中国に対中姿勢是正の圧力を加えるチャンスを与えた。撤回しない限り、ますます圧力が強化されていこう。高市氏が選挙に勝てば、中国が態度を変えると見るのは、全く甘過ぎる見方だ。
第五に、国連機構の改革によって新国際秩序が形成される。
中国は国連を大変重視してきたし、拒否権の行使もなるべく控え、国際協調を大切にしてきた。また、国連の費用負担も常に前向きに対応してきた。最近、米国のトランプ政権が多くの国連機関から脱退しているが、中国は逆に国連強化を訴えている。
国連の組織は米英ソ中4カ国によって創設されたが、実質的には英米が主体だった。そのため、発展途上国の利害関係が十分に反映されていないという欠陥がある。しかし、戦後、国連が果たしてきた役割は輝かしいものがあり、その成果を軽く見てはならない。ただ、国際情勢が大きく変化した今、一定の改革を施し、グローバルサウスの意見がより反映される仕組みに改組していく必要はある。
国連の改革において、中国はますます重要な役割を果たすことは明らかだ。戦後一貫して国連を重視してきた日本が、今後も大きな役割を果たそうとするならば、当然、中国との連係を強化すべきだろう。
中国脅威論から脱皮し、中国とも協力してアジアと世界の発展と平和に貢献する日本という視点で今回の総選挙で戦っていただきたい。自民・維新陣営には中国脅威は本当に存在するのかどうか、丁寧に説明してほしい。国防費増大によって対中抑止力強化が果たしてできるのかどうか。伊吹文明氏は「焼け石に水」と言ったが、まさにその通りで、無駄になるのではなかろうか。
新党「中道改革連合」は「生活者ファースト」をキャッチフレーズとした。その説明に当たって、斉藤鉄夫代表は繰り返し平和を強調した。「平和・生活ファースト」ともいうべきだろう。このキャッチフレーズは当今の軍拡競争へのアンチテーゼとして意義ある内容だ。大いなる奮闘を期待したい。
最後に、中国では2023年に反スパイ法が成立した。日本でも反スパイ法が制定されようとしている。われわれ在日華僑華人は、両国関係が緊張すると両方からスパイ嫌疑をかけられやすい。日中関係を悪循環から好循環に転換させ、反スパイ法が有名無実化することを願ってやまない。今回の総選挙でぜひそのきっかけを作っていただきたいものだ。
■筆者プロフィール:凌星光
1933年生まれ、福井県立大学名誉教授。1952年一橋大学経済学部、1953年上海財経学院(現大学)国民経済計画学部、1971年河北大学外国語学部教師、1978年中国社会科学院世界経済政治研究所、1990年金沢大学経済学部、1992年福井県立大学経済学部教授などを歴任。
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