アベノミクスに赤信号、消費増税の影響じわり=ガソリン・食品が高騰―人手不足も圧迫

配信日時:2014年7月22日(火) 6時10分
アベノミクスに赤信号、消費増税の影響じわり=ガソリン・食品が高騰―人手不足も圧迫
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消費増税の影響が顕著になってきた。5月の家計調査によれば世帯当たりの実質消費は前年同月比で8%も減少。2011年の東日本大震災時に次ぐ過去2番目に悪い数字だ。アベノミクスはここにきて黄信号から赤信号に変わり始めたと見るべきであろう。写真は東京・新橋。
4月からの8%への消費増税の影響が顕著になってきた。5月の家計調査によれば世帯当たりの実質消費は前年同月比で8%も減少。これは2011年の東日本大震災時に次ぐ過去2番目に悪い数字だ。1989年消費税創設(3%)、97年の5%への消費税増税の時よりも消費は落ち込んでいる。

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投資も懸念材料である。5月の機械受注統計の国内民需は前月比19.5%減、前年同月比14.3%減と、リーマン・ショック時よりも大幅に減少。機械受注の激減により4〜6月期の国内総生産(GDP)の投資減少は必至である。政府は「消費増税前の駆け込み需要の反動は想定内」と繰り返してきたが、最早想定内の動きから逸脱、政府関連部局は焦り始めている。

消費増税により、家計の負担は年間6.3兆円(国民1人当たり約5万円)増加。このほか14年度は、国民年金など社会保険料の引き上げ(5000億円)や年金の減額(8000億円)などが重なる。新たに約8兆円の負担が家計にのしかかる。家庭向け電気料金も5月から月平均 322〜657 円値上げされた。

デパート、スーパー、家電量販店など消費市場は4月以降の落ち込みから脱しておらず、回復は下期以降にづれ込むと予想するところが多い。「負担の増加を補う手段を持っていない人は食品や日用品の節約に解決策を求めるので、楽観的には考えられない」(イオン)などと、消費税増税の業績への影響を心配する。

7月に入り、生活に密着したサービスや食品・日用品などの値上げが本格化。日本航空と全日空は国内線運賃を6年ぶりに引き上げた。乳製品、豚肉製品など家庭用食品の値上げも相次いでいる。消費増税後の価格転嫁が浸透したところに、国際的な原料高、人件費高騰などのコスト増加分の上乗せが始まった。

◆ガソリン170円時代、人手不足も追い打ち

ガソリン価格が円安や海外高を受けて高騰。レギュラーガソリンの全国平均小売価格(7月14日)はリッター約170円と12週連続で値上がりし、5年10カ月ぶりの高値水準。企業活動や家計を直撃し、「消費増税に追い打ち」と悲鳴が上がっている。

人手不足の深刻化も見逃せない。建設労働者だけではなく介護士、運転手、外食産業、製造現場といった幅広い職種、業種で人手不足が表面化しており、景気の足を引っ張ると懸念されている。震災復興事業などにより労働需給がタイト化していることが大きな要因だが、労働力人口の減少という構造的要因もあり、根は深い。

この結果、建設資材価格が高騰し、自治体が建設を予定している施設の建設コストが大幅に上昇。復興需要や補正予算による公共投資拡大に加え、オリンピックや自治体施設の更新など需要拡大が続くことから、建設価格の上昇を織り込まざるをえなくなっている。民間の建設投資にも影響が表れ始めており、民需を圧迫する恐れもある。
 
こうした中、アベノミクスが頼りとしている株式市場も低迷している。昨年末には日経平均株価が1万6291円に達し、市場関係者の多くが「年央には1万8000円になる」と予想していたが、1万5000円の大台を維持するのがやっと。持ち株比率が30%以上に達している外国人投資家の動きが止まっているためで、この傾向は今後も続くと予想されている。

政府は「骨太の方針(経済財政運営の基本方針)」と「成長戦略第2弾(改定版)」を打ち出したが、「岩盤規制に穴を開ける構造改革」は掛け声倒れに終わりそう。「世界の投資家はアベノミクスの第3の矢の成長戦略が十分でないことに失望している」(市場関係者)という。加えて、ウクライナやアラブ情勢の緊迫化もあって今後も波乱含みだ。

◆10%への消費増税は困難か

長らく「貿易立国」「経常黒字大国」といわれた日本だが、2013年に3年連続の貿易収支赤字に陥った。資金の出し入れ額を示す経常収支が年間ベースで赤字に転落する懸念も高まっている。日本からお金が流れ出す経常赤字が定着すると、日本の経済活動に必要な資金を国内で賄えない構造になりやすい。

特に日本は世界でも断トツの国債発行残高(年間GDPの約2倍の1000兆円強)を抱えているため、国債を国内で安定的に売却できない恐れも出てくる。そうなると、国債の価値が下がり、金利急騰の懸念も否定できない。円安も過度に進みやすくなり、輸入価格の上昇が生活をさらに圧迫することも考えられる。高齢化による国内貯蓄の取り崩しなど構造問題も深刻化してしまうだろう。

アベノミクスの成否は中国、米国をはじめとする世界経済にも影響を与える。政府は7〜9月期のGDP統計を参考にして、さらなる消費税増税(15年10月から10%へ)を決断する方針だが、こうした厳しい情勢の下では増税は難しいのではないか。アベノミクスはここにきて黄信号から赤信号に変わり始めたと見るべきであろう。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行
1947年中国吉林省(旧満州)生まれ。 1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、取締役社長室長、常務取締役編集局長等を歴任。 ジャーナリストとして、取材・執筆・講演等も行っている。
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