考古学の大発見「三星堆遺跡」を通じて中国と世界の何が見えるのか―現地専門家が分析

中国新聞社    2022年5月5日(木) 19時20分

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中国の古代文明と言えば黄河文明を思い出す。しかしすでに、それ以外にもさまざまな中国古代文明が存在したことが分かっている。中でも三星堆文明は、極めて興味深い。写真は三星堆からの出土品。

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中国の古代文明といえば、かつては黄河文明と同義だった。しかし現在では、それ以外にもさまざまな中国古代文明が存在したことが分かっている。中でも1980年代に四川省徳陽市内で本格的調査が始まった三星堆遺跡は、極めて興味深い遺跡だ。例えば素人が見ても、出土した青銅製の彫像などの特異なデザインには驚いてしまう。四川大学歴史文化学院院長の霍巍教授はこのほど中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、三星堆遺跡についてのさまざまな見方を披露した。以下は霍教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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■2021年の新発見で垣間見えた黄河文明とは異なる古代の宗教儀式

中国政府は3月末に、2021年における中国の考古学10大新発見を発表したが、その中には三星堆で進められている考古学プロジェクトの成果も含まれていた。三星堆で新たに発見された6カ所の祭祀坑から金器、銅器、玉石器、陶器など2000点余りが出土したのだ。特に重要なものとしては黄金の仮面、鳥の形の飾りもの、人物の座像などがあった。

新たな出土品の中でも、特に注目すべきは2号祭祀坑で発見された小型の人物像だ。台座があり、頭の上には樽状の物体を置いている。宗教儀式を執り行う祭司が特定の台の上で祭事を行う姿を模した像である可能性が高いとみられている。三星堆文明を生み出した国あるいは地域を「古蜀」と呼んでいるが、この像についての現状の解釈が正しければ、古蜀の人々の宗教儀式の記録ということになる。

中国の古代文明の中では、いわゆる黄河文明が最初に知られることになったが、三星堆からの出土品が大きく異なっているということは、中原文化から出土した青銅器だけでは、中国の古代人の神話や伝説などを全面的に知ることができないことを示している。

青銅器を作った文明が存在したことは、階級のある社会や国家が存在したことだけでなく、豊富な想像力や世界を細かく見つめる眼力、広い視野を持つ人々が存在したことを示す。過去の研究者が唱えた、中華民族は現実だけに目を向け、豊富な神話伝説や芸術上の創造する能力は劣っていたとの主張は、退けられねばならない。

■それぞれ独立して発展した古代文明を比較する意義とは

中華文明は別の場所から伝わったものではなく、中華の地で独自に開花したものだ。しかし、中華文明とその他の古代文明を比較することには、やはり意義がある。世界古代文明の視野で三星堆を観察すると、具体的な考古学上の文化財のレベルを超えて精神世界、芸術概念、表現形態のレベルにまで達する、類似した文化現象を発見することができる。

考古学は通常、出土した未知だった出土品と既知の物を比較することで、出土した物が属する文化文明の年代や性質、機能、分布状況などを判断していく。目下のところ、三星堆遺跡からの出土品の多くには、比較対照すべき別の出土品が見当たらない。従って、体系的に比較対象ができるよりものを広い時空の範囲で探さねばならない。同時に、三星堆からの出土品の背後にある概念や、精神的な崇拝の状況、美的な好みも研究していかねばならない。

神話学の立場からは、中国の古代神話には海外の神話と類似する部分もあり異なる部分がある。また神話とは文章として残らなかった場合には、消滅する場合もある。三星堆遺跡での各種の出土品は、消えた神話を実物として示している。神話研究に改めて多くの手掛かりを提供してくれると考えてよい。

三星堆文明と世界古代文明の間に類似の要素はたくさんあるが、そのことはある文明から他の文明への伝播が発生したことを示すものではない。むしろ、同程度の生産力のレベルや精神の発展のレベルを獲得し、さらに似たような自然環境課で発達したそれぞれの文明文化で、人々がそれぞれ独自に類似性のある芸術を創造するようになったと考えた方がよい。それらの芸術はいずれも、人と自然のつながりを再現しようとしたものだ。

古代文明の比較を行う主な目的は、人間の精神世界が太古の時代にどのような類似の思考や物質の創造をたどったかを認識し理解することだ。

太陽が昇り、また沈む。四季は変化する。宇宙の星空がもたらす無限の想像力……これらは西洋の先人たちに深い感銘を与えただけでなく、東洋世界にも影響を及ぼした。われわれは、実際に会ったことはなくとも、この地球という一つの星の上で生きて来た。同じ地球の上に生きてきたのだから、よく似た発想も出て来た。その意味で、人類は古くから、運命共同体に組み込まれていた。

もちろん、似ているというだけで同一視は出来ないものもある。例えば、黄金のマスクは古代エジプトや古代ペルシャでは、黄金のマスクは亡くなった王者の顔を覆うものだった。この習慣は、ユーラシアの草原文化にも古くから伝わっていた。しかし三星堆では、黄金のマスクで青銅像の顔を覆っている。その象徴的な意義と具体的な使い方は明らかに違っており、一律に論ずることはできない。

■古代文明間の素晴らしい対話が聞こえてくる

いずれにせよ、三星堆という考古学における世界的な発見が極めて大きな価値を持つことに、疑いの余地はない。中国では黄河文明だけでなく、南の地でも社会的価値観、等級秩序、国家権力が確立され、神秘的で誇張された生々しく豊かな造形芸術や偶像の伝統などが生まれていた。

三星堆の発見により、中国の青銅文化の奥深い姿が再構築された。三星堆はこれまでの人々の中国青銅時代の文化に対する認識を変えただけでなく、三星堆文明と世界古代文明との間の多くの融合性と共通性を示した。まるで洋の東西の古代青銅文明間の素晴らしい対話が、私たちにも聞こえてくるようにも感じる。(構成 / 如月隼人

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