北朝鮮、金日成生誕110周年に合わせICBM発射か―4月、5月にかけ緊迫局面へ

山崎真二    2022年3月23日(水) 7時20分

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朝鮮半島情勢は米朝対話が途絶える中、北朝鮮が核開発や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の本格的発射実験を再開する動きを見せるなど、再び緊迫した局面を迎えようとしている。写真は平壌。

朝鮮半島情勢は米朝対話が途絶える中、北朝鮮が核開発や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の本格的発射実験を再開する動きを見せるなど、再び緊迫した局面を迎えようとしている。

◆核実験場修復の動きも

北朝鮮は今年に入り計10回ミサイルを発射している。最新の10回目の発射実験は失敗に終わったとみられるが、極超音速ミサイルや鉄道を利用した戦術誘導ミサイルの発射(いずれも1月)には成功しており、軍事技術の向上をうかがわせる。

とりわけ、多くの軍事専門家が一様に注目するのは2月末と今月初めに行った弾道ミサイルの打ち上げ。この2回のミサイル実験について北朝鮮は「偵察衛星の開発のため」と主張しているが、米当局者は「開発中の新型ICBMシステムと関連したプロセス」とみており、「最大射程での発射試験を行う前に、機能の検証を行うことを目的として発射された可能性がある」(岸信夫防衛相)との見方が有力だ。

北朝鮮は2017年に米本土に届くICBM「火星15」の発射実験を行ったが、ソウルの軍事専門家によれば、開発中の新型ICBMはこれを上回る大きさだという。さらに懸念される情報も伝えられる。「東亜日報」など韓国の有力メディアは先ごろ、北朝鮮が自ら「非核化に向けた重大な措置」として2018年に爆破した北東部の豊渓里核実験場で施設復旧の動きがあると報じた。米国の核問題専門家として知られるジェフリー・ルイス氏はこのほど、同実験場修復の様子が衛星画像で確認されたとし、「北朝鮮が核実験再開を計画している可能性がある」と警告している。

北朝鮮は18年4月に核実験とICBM発射の凍結を表明しているが、最近のミサイル実験や核実験場復旧の動きは本格的な軍事挑発路線の再開を予想させるに十分と言っていい。

◆朝鮮半島の重要性と自国の存在アピールか

こうした北朝鮮の動向に関しては「3月8日から18日までの米韓合同軍事演習に対抗するため」「ウクライナ危機に世界の関心が向かう中、朝鮮半島の重要性と自国の存在に改めて目を向けさせようというのが金正恩総書記の狙い」(いずれも米CNNのコメンテーター)といった意見が一般的。また、米国の民主党系有力シンクタンクの朝鮮半島専門家が指摘するように、発足から1年以上たっても北朝鮮問題に積極的な取り組みを示さないバイデン政権をけん制するのが狙いとする分析もある。

バイデン政権は北朝鮮の段階的非核化を目指す「現実的アプローチ」を採用し、北朝鮮に対話を呼びかけているが、北朝鮮は経済制裁の緩和や解除が対話の前提と主張し、対話実現の水見通しは立っていない。米国の北朝鮮問題専門家らの間でバイデン政権の「現実的アプローチ」の見直し論も出始めているものの、「ニューヨーク・タイムズ」はじめ米有力メディアの報道では、11月の米中間選挙が終わりまでは新たな北朝鮮政策は検討されないとする識者の意見や記事が目に付く。

◆韓国政権交代も睨む

ソウルでは、先の韓国大統領選で強硬な北朝鮮政策を主張する、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦前検事総長が当選したことから5月10日の新大統領就任に先立ち北朝鮮が韓国新政権への揺さぶりを狙って新たな軍事挑発を行うとの憶測も流れている。

日本と韓国の北朝鮮問題専門家の間では、金総書記の祖父、金日成主席生誕110周年の4月15日に合わせ、北朝鮮が新型ICBMを最大射程で発射するのではないかとの見方が取りざたされている。核実験に関しては、実験場の修復に3カ月以上を要するなどの技術的理由から当面は見送られるとみられる。

実際、ICBMの発射準備を示す情報が相次ぐ。北朝鮮の朝鮮中央通信は今月11日、金総書記が北西部・東倉里の西海衛星発射場を現地指導したと報じた。同発射場では過去に人工衛星打ち上げ名目で長距離弾道ミサイルを発射したことがある。続いて同15日、米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は北朝鮮の平壌・順安空港にコンクリート製土台が設置されたことが衛星写真で分かったと報じた。軍事専門家によれば、ICBMを移動式発射台から発射する際に使用するためだという。ここ当分、北朝鮮情勢を注視せざるを得ない状況が続きそうだ。

■筆者プロフィール:山崎真二

山形大客員教授(元教授)、時事総合研究所客員研究員、元時事通信社外信部長、リマ(ペルー)特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。

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