米中「新冷戦」、新たな危険水域に=貿易・ハイテク摩擦から法律摩擦に突入―範雲涛亜細亜大教授

Record China    2021年8月15日(日) 10時20分

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範雲涛・亜細亜大学教授が「国際法務の観点から見た『一帯一路』構想の健全性」と題して講演。米中対立は貿易・ハイテク摩擦から法律摩擦に突入したとし、「債務の罠」論は虚構であると批判した。

国際アジア共同体学会が主催する日中シンポジウムがこのほど東京の国会議員会館で開催された。範雲涛・亜細亜大学教授(中国弁護士)が「国際法務の観点から見た『一帯一路』構想の健全性」と題して講演した。「米国は自らの国内法「マグネツキ法」をもって新疆ウイグル人権問題、香港国家安全法の制裁発動に適用し、通商301条により中国を「非市場経済国家」と決めつけ、WTO(世界貿易機関)機構改革も妨害してきた」と指摘。中国は一帯一路(BRI)沿線諸国間で多発する国際商事紛争の解決メカニズムをデジタルオンラインで構築。訴訟外国際紛争解決制度(ADR)を2016年に北京で立ち上げ、成果を上げつつあるという。

その上で、米中「新冷戦」は、「すでに貿易摩擦、ハイテク技術摩擦を超えて、法律摩擦という新たな危険水域にのめり込んでいる」と警告した。米国が唱えてきたBRI(債務の罠)論の仕掛人は英米保守系シンクタンクが中心であり、結局はアフリカ諸国への既存有償貸付け債権者利益集団の苛立ちと疑心暗鬼の反映に過ぎないと喝破した。

範雲涛・亜細亜大学教授の講演要旨は次の通り

「21世紀の日米中関係のパワーポリテックス」をはじめ、激変するグローバルガバナンスに関する諸研究は国際関係論もしくは経済学の分析視座からのアプローチが主流を占めてきた。中国の「内なる視点」から、国際ビジネス法務という複眼的な視点から米中「新冷戦」の真相を探り、「一帯一路」構想の現状を把握し、その法的合理性、財務健全性の有無を検証したい。

◆コロナ禍に見舞われた一帯一路構想

2021年7月現在、「一帯一路」経済連携MOU(合意文書)締結数は2013年以降140カ国地域、32国際機関を数え、合計205件となっている。世銀グループとIMF統計によれば、一帯一路構想(以下「BRI」と略記)全面実施以降、世界通商貿易取引伸び率と世界の人々の収入総額伸び率はそれぞれ6.2%と2.9%で年内に達成すると見込まれている。   昨年末までの経済統計では、中国からBRI沿線諸国向け貨物貿易取引高が1.35万億米ドルに及び、2019年比では0.7%増加、中国全体の海外貿易取引比重に占める割合が29.1%までになっていることが判明。「中欧班列」国際貨物列車がユーラシア大陸を横断し、2020年度開通運行列車数は1.2万便にのぼり、前年比伸び率が50%と大きく飛躍し、海外21カ国92都市を繋ぐ大動脈となっている。

2020年1月武漢から発したコロナパンデミックの打撃をうけ、世界経済が急速に萎縮する中、中国のBRI沿線国向け投資実績は、2019年比では18.3%増の178億米ドルを記録した。一方、2019年度の中国対外投資FDI全体(金融類を除く)金額は2020年度比0.4%減の1,102億米ドルに止まり、四年連続で減少に転じた。即ち、コロナ禍蔓延中、一部建設途中のインフラ案件がホスト国の水際対策と行動制限のため、中国からの技術者が派遣できず、一時的に操業中止に追い込まれたり、挫折を余儀なくされたりしたものの、その後国境封鎖が次第に緩和され、昨年末から今年に入ってから一部新規案件の起動も本格化するようになった。

さらに、欧米諸国の海外投資が大幅に落ち込む中、中国だけがむしろ逆に海外進出ドライブを加速させ、実績ベースでは米国を抜いて世界最大の資本輸出大国と躍り出た一方、最大の外資受け入れ国となっているのである。

◆「債務の罠」論の虚構を暴く

トランプ政権下で声高に唱えてきたいわゆるBRI(債務の罠)論の仕掛人は英米保守系シンクタンクが中心であり、結局はアフリカ諸国への既存有償貸付け債権者利益集団の苛立ちと疑心暗鬼の塊に過ぎないことは、日中両国の金融ファイアンス研究者の議論を見れば一目瞭然。中国から途上国向け融資貸与契約の取り決めはバイラテラル型であり、NDA守秘契約が義務づけられされているため、既存債権者たちがその内実(融資条件、利回り、担保設定の有無などの契約事項)を知る由もなく、格付け評価も難しくなるからだ。

今年6月17日,中国・アフリカ緊急サミットにてコロナ禍によって財政逼迫する一部アフリカ諸国に対し、債務免除あるいは返済猶予延長を行った。対象債務の13億5300万ドルが猶予対象となっており、G20イニシアティブ総額の三割近い水準だ。

◆「既存国際通商貿易・投資保護法体制をめぐる米中法律摩擦」

今年は、WTO加盟20年目、「一帯一路構想」提唱から8年目、中国共産党誕生100周年という節目の年。バイデン政権発足半年経っても米中新冷戦の過激化に歯止めがかからない理由は、単に政治外交や貿易通商の「デカップリング」だけでは説明仕切れない奥深いものがあるに違いない。それは、アメリカ型の訴訟社会とアジア型農耕社会の対峙、西側の「法の支配 Rule of law」VS「党/国家の支配 Rule by law 」 ----「社会主義大陸法系」 VS「アングロサクソン英米法系」の対決構図の定着化が、そもそも米中対決の地下水脈を作ったのではなかろうか?米中「新冷戦」は、すでに貿易摩擦、ハイテク技術摩擦を超えて、法律摩擦という新たな危険水域にのめり込んでいるのだ。

◆中国独自の一帯一路紛争デジタルADR解決プラットフォーム

アメリカは自らの国内法「マグネツキ法」をもって新疆ウイグル人権問題、香港国家安全法の制裁発動に適用し、通商301条をもって中国を「非市場経済国家」と決めつけ、WTO機構改革も妨害してきた。中国は国際経済法ルールの変革に独自の法理念で対抗する一方、BRI沿線諸国間で多発する国際商事紛争解決メカニズムをデジタルオンラインで構築し、訴訟外国際紛争解決制度(ADR)を2016年から北京で立ち上げ、成果をあげつつある。

米中「新冷戦」の狭間に立たされる日本は、今後どのようなアジア外交を展開しようとするのか? 民主主義と法の支配を自負するからには、その法治国家の真価が問われよう。(主筆・八牧浩行

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