コロナ禍で米中GDPが急接近、2025年にも逆転か?―長期戦略で明暗分かれる

Record China    2020年6月26日(金) 6時0分

拡大

経済規模で中国が米国を抜くのは10年後の2030年頃との見方が有力だったが、新型コロナウイリス感染の拡大を受けて、米中のGDPが急接近。米中逆転が早まりそうだ。写真は新設された北京大興国際空港。

米中の次世代覇権争いが激化している。これまで経済規模で中国が米国を抜くのは10年後の2030年頃との見方が有力だったが、新型コロナウイリス感染の拡大を受けて、米中の国内総生産(GDP)が急接近。6月に相次いで発表された世界銀行、国際協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)の最新経済予測を分析すると、米中逆転が早まり中国が20年代半ばに最大の経済大国になるとの見方が有力だ。

◆米大統領選至上主義、裏目に

世界銀行のGDP成長率予測によると、2020年に米国がマイナス6.1%、これに対し最初に感染が拡大し経済再開も早かった中国が1.0%のプラス成長を確保する(7.1ポイント差)。2021年は中国が6.9%増。米4.0%増(2.9ポイント差)となる。

OECDの予測は20年の成長率は感染が再拡大しない場合で、米国はマイナス7.3%、中国はマイナス2.6%と予測した(4.7ポイント差)。中国の経済成長の落ち込みは比較的小さい。もう一つの、世界の感染が再拡大するとの厳しい予測では、20年の経済成長率は、米国がマイナス8.4%、中国はマイナス3.7%(4.7ポイント差)。米国では第2次感染の恐れがあり、その場合はマイナス幅がさらに拡大する。21年について、米国はプラス1.9%、中国はプラス4.5%(2.6ポイント差)に転じ、この傾向は続くと予想されている。

IMFの20年の予測では、米国はマイナス8.0%となり、19年のプラス2.3%から大幅に悪化する。大恐慌後の1932年のマイナス12.9%や、第二次世界大戦直後の46年のマイナス11.6%に迫る景気後退になる。中国は、プラス1.0%と主要国で唯一プラスを維持。米中の差は9.0%に拡大する。21年には米国が4.5%のプラスと好転するが、中国も8.2%とプラス幅を拡大する(3.7ポイント差)。

コロナ禍前のここ数年、米国のGDP成長率は2~3%、中国が6%台で推移しており、米中の差は3%程度だったが、コロナ後はおおよそ4~9ポイント差になる。米国の黒人差別反対デモや感染拡大などは織り込まれておらず、差は今後さらに拡大する。

経済規模は名目GDP成長率(実質GDP成長率プラスインフレ率)で示される。2018年の名目GDPは米国が20兆5802億ドル、中国が13兆3680億ドル。インフレ率は米中共に平均すると2%前後で推移しているので、三つの有力国際機関のGDP予測を勘案すると、名目GDP が逆転するXデーは2025年にも到来する見通しだ。

一帯一路、デジタル人民元、AIで切り込む

中国のGDPは2014年に、実際の経済力に近い購買力平価(PPP)で米国を追い抜き、世界1位になった。その後も2位米国との差は開くばかりだ。中国は14億人の人口パワーを背景に世界最大の消費生産市場に発展、自動車販売台数は年間約2800万台と米国の約1500万台、日本の約500万台を大きく凌駕している。パソコン、スマホ、鉄鋼、石化油製品をはじめ大半の品目で世界最大の製造消費国でもある。

習近平政権は2017年の党大会で、2050年までに米国に並ぶ最強国になると宣言し、経済インフラやハイテク、軍事増強に巨額の資金を注ぐ。広域経済圏構想「一帯一路」構想でアジア、アフリカ、南米、中東などの新興国に影響圏を広げ、サイバーや宇宙でも米国主導の秩序を切り崩しにかかっている。

国家目標「中国製造2025」の下、量子コンピューター、AI(人工知能)、バイオ、通信技術、電気自動車、グリーンエネルギーなど幅広い分野で優位に立つことを追求。技術力でも世界のトップクラスに躍り出た。超音速ミサイルを配備するなど、軍事大国化も推進。金融面でも、デジタル人民元を発行して世界通貨をつくり上げようと画策している。

一方、米国は新型コロナウイルスによる感染者が230万人以上に達し、死者も12万人を突破。早すぎる経済再開によりパンデミック第2波の危機に直面している。失業率がかつてない水準に達し、無保険で医療費を賄えない者と、高額の報酬を得る者が併存し、人種差別と所得格差は、都市部での暴動を誘発し混迷が続く。アリゾナ、テキサス、フロリダ、カリフォルニアなど多くの州で新規感染者数が過去最大となり、入院者が急増している。トランプ大統領は11月の大統領選勝利を至上命題に短期的な対策を講じるが、戦略に欠けほとんどが裏目に出ている。

◆対中デップリング策、掛け声倒れ

トランプ政権肝いりの対中デップリング(引き離し)策も掛け声倒れだ。かえって米産業金融界やグローバル企業の収益にダメージを与え、景気の足を引っ張っている。EUは米国より穏健な路線を目指し、独仏伊や東欧諸国などは中国との経済関係を重視している。ドイツの通信大手・ドイツテレコムは最近、中国ファーウェイ(華為技術)などと第5世代移動通信システム(5G)に関する契約を締結した。さらにファーウェイは英国に研究・製造拠点を建設すると発表。10億ポンド(約1300億円)を投入するという。

新型コロナの感染拡大の勢いはすぐに止まりそうもない。中国でも北京の市場を中心に感染者が続出しているが、管理が厳格な中国に比べれば、米国のリスクが高いのは明らか。新型コロナウイルスによるダメージは、米国の方が数段大きい。実際、米国ブルッキングス研究所が6月に分析したコロナ被害によるGDP損失額を人口対比で見ると、米国は中国より甚大である。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、世界のパワーバランスが変化するのは避けられない。

2012年に世界銀行と中国国家発展改革委員会がまとめた共同研究報告書『中国2030―近代的で調和のある生き生きした高所得社会の構築』は、「最も重要な地球的メガトレンドは中国の台頭であり、今後の20年間、中国以外の他のいかなる国も世界経済に大きな影響力を与える準備はできていない。世界最大の経済力を誇る国として米国を追い抜くだろう」と2030年初頭の米中逆転を予測した。この長期シナリオが早まるのは確実。日本としても早い段階から戦略的に対応していく必要があろう。(八牧浩行

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