【観察眼】「武漢」と病名の結びつけは、国際協力をも阻害する悪意ある発想

CRI online    2020年3月10日(火) 23時45分

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3月9日現在までに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は100余りの国・地域に広がり、「新型肺炎との戦い」はもはや全人類共通の戦いとなっている。 世界が手を携えることが求められる中、一部の米国の政治家たちは相も変わらず意図的に「武漢ウイルス」という名称を連呼している。...

3月9日現在までに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は100余りの国・地域に広がり、「新型肺炎との戦い」はもはや全人類共通の戦いとなっている。

 世界が手を携えることが求められる中、一部の米国の政治家たちは相も変わらず意図的に「武漢ウイルス」という名称を連呼している。残念なのは、それに呼応するかのように日本でも「武漢肺炎」や「武漢熱」という呼び名を定着させるべく躍起になっている政治家やメディアが表れていることだ。彼らは、「スペイン風邪」や「日本脳炎」、インフルエンザの「香港A型」といった過去の伝染病の名称を引き合いに出し、その正当性を主張している。そして、そのもっともらしい言い分によって「ヘイト」を包み隠している。

 だが、そのような言い分がまかり通ることは決して無い。「ウイルスなどの名称に特定の国、地域、人物、動物などの名前をつけてはならない」――これは、2015年に世界保健機関(WHO)が発表した「ベストプラクティス(指針)※」の内容の一部だ。これにより、2015年以降のネーミングはこの指針に従うことが明確に定められている(なお、過去に定められた名称に対する適用は見送られている)。今回の「新型コロナウイルス」についても、この指針に基づいた正式名称「COVID−19」を、WHOが2月11日に発表している。国連機関であるWHOが定めたこの方針は、人類社会における進歩の一つであり、世界で主流をなす共通認識であると言える。

 幸いなことに、「武漢ウイルス」や「武漢肺炎」といった差別的な呼び名の使用は、日本や米国国内でも批判を浴びている。主立った声は「悪いのはウイルスであり、特定の国や地域に住む人たちではない」、「(地域名を含む病名の使用は)政府の見解と異なっている」、「『武漢肺炎』という名前の使用は、科学コミュニケーションを失敗に誘導する行為と言える」といったもので、ただ「差別的である」という事実だけでなく、その名称が社会にもたらす弊害をも危惧している。

 これに関連して注目したいのが、ほぼ同じ時期に日本を中心にネット上で広まったあるデマだ。そのデマとは「中国は新型コロナウイルスを『日本肺炎』と呼ぶことで罪をなすりつけようとしている」というもの。あるネット番組の出演者がこの内容を主張した際に持ち出した根拠は、駐日中国大使館が日本在住の中国人向けに出した中国語の通達だった。その文面には「日本新型冠状病毒肺炎疫情」という文字が見られるが、これの正しい意味は「日本における新型コロナウイルス肺炎の感染状況」である。だが、当人は恐らく字面から「日本新型コロナウイルス肺炎」つまり「日本肺炎」だと勝手に読み違え、事もあろうに中国語が分かる人間に確認することもなく、無責任に発言したのだろう。そのような早合点をした背景には、中国へ向けたヘイトがあったのではないだろうか。

 この明らかな誤認に基づく過激なデマはツイッターで拡散され、一旦は反中国の炎上を招いたが、すぐに真相が究明され、誤解は正された。しかし、今もなお事実誤認があったことに触れもせず、中国を批判するためのネタとしてしがみつき、繰り返し「日本肺炎吹聴説」を持ち出す人々もいる。彼らにぜひ気づいてほしいことがある。それは、誤解はさらに大きな誤解を、偏見はさらに大きな偏見を招くだけだということだ。そして、その結果は互いの不利益でしかないということである。

 さて、武漢市や中国に汚名を着せようとする人々の主張は、新型コロナウイルスの流行における中国政府の「責任」や「対応の不備」をやり玉に挙げたものが多いようだが、事実はどうだったのだろうか。

 1月12日 まだ感染拡大の初期であったこの日に、解読したウイルスの遺伝子配列をWHOに提出。

 1月23日 「震源地」である武漢市の封鎖を開始するとともに、中国人の海外団体旅行の差し止めを発表し、国を挙げての封じ込め対策に乗り出す(なお、人の移動を厳格に制限する措置は、「完全なる勝利を収める」という観点から、一定の抑制効果が出た後も3月9日現在まで継続している)。

 2月11日 当時報告された7万2314症例(感染者、疑い例、無症状患者などを含む)の病理学分析報告書を公開。多くの試行錯誤や経験と教訓を含んだ膨大な資料は、未知のウイルスの正体を知る上でまぎれもなく貴重な情報となっている。

 このほかにも、WHO専門家チームの現地視察の受け入れ、中国側専門家とWHO側専門家とのスムーズな意思疎通、公衆衛生上の国際協力に参与する積極的な意思表明、感染拡大国への支援と専門家派遣など、枚挙に暇がない。世界最多の感染者が報告された中国は、国際社会における責任を自らの態度と行動を以って着実に果たし続けている。

 新型コロナウイルスの怖さは、すべての地球人にとって未知の経験であり、いまだにその正体を把握しきれていないことにある。3月9日現在、世界中で確認された感染患者の合計は11万人に迫り、死者は3792人に上った。筆者がこの論説を書いている今この時も、或いは誰かが中国を貶めることに夢中になっている時にも、世界のどこかで「COVID-19」の犠牲者が報告されているかもしれない。

 運命共同体たる人類社会は今こそ、本当の敵が何なのかを見定め、一致団結して、一分一秒を大切にしながら対策に取り組むべきである。何の根拠もなく、弊害しかもたらさない、時代遅れの「汚名定着キャンペーン」に割くべき労力や時間など、どこにも無いはずだ。

[※参考リンク]

WHO best practices for naming of new human infectious diseases(WHO公式サイト内) https://www.who.int/topics/infectious_diseases/naming-new-diseases/en/?fbclid=IwAR1pxp7c-LZAVIoqjNoyN7z6JYZQovsCshOkvC5ar3qVDsn_YPQqL7efpdE)

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