〈一帯一路実践談5〉1987年キジル千仏洞修復保存1億円募金難渋

小島康誉    2020年2月22日(土) 16時20分

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1986年キジル千仏洞を初参観し「人類共通の文化遺産」と直感。保存に10万元寄付。写真は修復保存1億円贈呈調印式。

習近平国家主席が提唱した「一帯一路」は経済の道、政治の道であると同時に文化の道、国際協力の道でもある。1986年キジル千仏洞を初参観し「人類共通の文化遺産」と直感。保存に10万元寄付。その後も新疆を訪れると、外国人も重視するほどであればと、中国政府が2000万元で本格的修復を行うことになったという。

筆者はそれなら10万元では足りないから、日本で浄財を募り1億円寄付すると申し出た。当時の物価などを考えると、現在の1億元(約16億円)にも匹敵する巨費である。新疆文化庁の庁長はじめ皆が「エーッ!」と声をあげ驚いた。日本の大谷探検隊や独・露・仏・英などの探検隊による壁画の持ち出し、現地人による金箔剥がし、異教徒による破壊、長年の自然崩壊が荒廃の主な原因である。

キジル千仏洞はシルクロードに咲いた仏教芸術の名花であり、考古学・民族学・東西文化交流史・仏教学・言語学など本格的研究が待たれる貴重な文化遺産。中国だけでなく人類共通の文化遺産であり、次世代に引き渡す責任があると考え、寄付を申し出た。この時も承認には時間を要した。1987年5月20日、新疆迎賓館での調印式には、王恩茂全国政治協商会議副主席(前新疆党書記)も出席。王副主席は募金パンフレット用中国語文案を読み、遺産の前に「文化」の二文字を挿入。その実直な姿にうたれた。氏はその後も筆者の良き理解者として、支持いただいた。協議書は筆者と王成文新疆文化庁書記がサインした。

1987年11月、筆者は塩川正十郎文部大臣の示唆を受けつつ「日中友好キジル千仏洞修復保存協力会」(上村晃史上村工業社長)を設立し、事務局は筆者が社長を務めるツルカメコーポレーションに置いた。名誉顧問は元総務長官の中山太郎議員、副会長や顧問は水谷幸正佛教大学長・五百木茂三菱商事副社長・須賀武野村證券副社長・神田延祐三和銀行副頭取など宗教界・経済界・学界の著名人にお願いし、筆者が専務理事を担当した。

12月、「人類共通の文化遺産を後世へ」をスローガンとした募金パンフレットや宣伝ハガキ・テレカなどを作成し募金活動を開始したが、敦煌莫高窟と違って殆どの方がキジル千仏洞をご存知ない。

(募金パンフレットの一部)

当時は青年社長で飲み歩いていたこともあり、「『ジキルとハイド』のジキルじゃないの?」とか、「聞いたこともない新疆ウイグル自治区の石窟保存募金なんて!」と言われるほど募金は難渋した。新聞・テレビなどに報道を要請。取引先にもご無理をお願いした。役員・社員諸氏と共に募金に奔走した。

(新聞報道など)

〈編集後記〉新型肺炎は「一帯一路」の要衝である新疆でも発症、マスク寄贈に着手するも苦戦中と前回ご紹介。東京と杭州の親友中国人の奮闘で、河南省で医療用1万枚を購入でき、2月20日工場から発送完了。新疆政府外事弁公室へ連絡完了。

山川異域 風月同天 中国・日本をはじめ世界での新型肺炎が早期収束することを願っています。困難な状況の中、中国政府が次々と実行する対策により、新型肺炎に必ず打ち勝つでしょう。17年前にサーズを打倒したように。新型肺炎はサーズより強力、しかし、中国は17年前より圧倒的に強力。

■筆者プロフィール:小島康誉


浄土宗僧侶・佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表・新疆ウイグル自治区政府文化顧問。1982年から新疆を150回以上訪問し、多民族諸氏と各種国際協力を実施中の日中理解実践家。
ブログ「国献男子ほんわか日記」
<新疆は良いところ>小島康誉 挨拶―<新疆是个好地方>
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