自信から焦慮へ 西側は一体何が「消えた」のか

人民網日本語版    2020年2月18日(火) 22時30分

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第56回ミュンヘン安全保障会議はテーマを「Westlessness(消える西側)」と定めた。

第56回ミュンヘン安全保障会議はテーマを「Westlessness(消える西側)」と定めた。西側の影響力の衰退とそのもたらす結果を議論する狙いがある。主催側によると、「Westlessness」とは広く感じられている不安を指しており、この不安は「西側」の恒久的目標の不確定性と「西側」共通の立場の喪失に由来する。

「Westlessness」は西側が外部環境の変化によって世界の問題を主導する影響力を喪失したこと、及び欧州内部の分断勢力の高まりによって団結を喪失したことに端を発するとアナリストは指摘する。西側内部の主要な矛盾は米国の現政権が遂行する「米国第一」戦略にあり、これが米欧関係を事実上決裂の瀬戸際にまで追いやっている。

■亀裂の深まる米国と欧州 影響力は過去に到底及ばず

米国と欧州の溝が再び露呈した。フランスの戦略核抑止力について欧州のパートナー国と戦略対話を行いたいとのマクロン仏大統領の発言を記者が持ち出すと、NATO事務総長は「欧州にはすでに核抑止力がある。NATOの核戦力だ」と直ちに反論した。ジョセップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表は会議で、トランプ米大統領の「米国第一」政策はすでにEU自身の利益と相反していると述べた。ポンペオ米国務長官が会議で「大西洋をまたぐ同盟が死んだというのは全くの誇張であり、西側は近く勝利する」と語ると、マクロン大統領は「欧州は未来に対して自信のない大陸に変わりつつある」「欧州は米国の二次的パートナーであることを止めるべきだ」と直ちに応じた。

片や「西側は勝利する」と言い、片や「Westlessness」を議題にする。これは「米国第一」政策によって日増しに深まる米欧間の矛盾を反映している。米国は同盟国関係において、度々欧州の利益を軽視して落胆させてきた。気候変動に関するパリ協定、イラン核合意、中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱。国連教育科学文化機関(ユネスコ)と国連人権理事会からの脱退。NATO同盟国の軍事費分担の大幅に引き上げ。ドイツのシュタインマイヤー大統領は今回の会議で、「米国を再び偉大な国にする」というのは「最も親密な同盟国の利益を代わりに犠牲にするものだ」と指摘した。

中国現代国際関係研究院の馮仲平副院長は人民網の取材に「トランプ氏が就任後推し進め続けている『米国第一』政策によって、大西洋両岸の溝と矛盾は日増しに増大し、戦略面の相互信頼は著しく低下し、欧州は自分たちの安全保障への米国のコミットメントに疑念を抱き始めている」と指摘した。

「西側内部の主要な矛盾は米国の現政権が推し進める『米国第一』戦略にある」。ボン大学グローバル研究センター長の辜学武氏は「この戦略は米欧関係を事実上決裂の瀬戸際にまで追いやっている。米欧は世界の問題を主導する影響力を失っている」と指摘した。

■欧州統合は断片化 団結力は跡形もなく

「Westlessness」というテーマは、国際情勢の大きな変動における欧州の焦慮と不安を深く反映している。マクロン大統領は「Westlessness」というテーマについて、西側が弱体化しつつあることを紛れもなく物語っていると指摘した。

過去10年間に欧州統合はかつてない挫折を味わった。団結力に疑問の声が上がり続け、遠心力が激化して、今や欧州はばらばらの砂のようになった。

馮氏は「現在の欧州にとって内部の分裂勢力の高まりは重大な試練だ」と指摘。「ブレグジット(英国のEU離脱)はまだ他の加盟国にドミノ効果を生んでいないが、欧州のポピュリズム及び民族主義勢力を助長させ、欧州統合の発展にとって重大な牽制となったことは間違いない。また、例えばポーランドやチェコなどの国が『ゼロ移民』政策を堅持したことで、東欧・西欧間の矛盾が激化した」と指摘した。

中国社会科学院学部委員、国際学部副主任の周弘氏は「欧州統合は依然、内部の経済・社会要因及び制度的要因のもたらす多大な試練を受けている」と指摘。「欧州内部の募る緩慢さ、社会的分断、政党の断片化、曖昧な政治綱領、理性主義の伝統の衰退、及び民衆からかけ離れたEUの制度設計などの要因によって、ポピュリズム勢力は引き続き強化され、EU政治の伝統的な『左』と『右』の分断は次第に『EU支持』と『反EU』の分断へと変わるだろう」とした。

幸いな事に、西側陣営が内外の衝突と対立に直面する中、団結を呼びかけ、世界のパワー構造の変化を受け入れる声もすでに上がっている。マクロン大統領は会議で、一致団結して足取りを速め、未来へ着眼するよう欧州に呼び掛けた。「ミュンヘン安全保障報告2020」は、西側各国は世界のパワー構造の変化という結果を受け入れ、これと共存しなければならないとの認識を示した。

「Westlessness」という問題を解決するには、会議で言い争い続けるよりも、心の有り様と視点を根本から変えたほうが良い。まさに王毅外交部長(外相)がミュンヘン安全保障会議での演説で述べたように「我々は東側と西側という区分から抜け出し、南側と北側の違いを乗り越え、我々の生存がかかっているこの惑星を真に一つの生命共同体と見なす必要がある。イデオロギーの溝を越えて、歴史的・文化的違いを包摂し、国際社会を真に世界の大家族と見なす必要がある」のである。(編集NA)

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