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人間とAIが同じ土俵で勝負したら同時通訳者は失業?―中国メディア

配信日時:2019年7月7日(日) 7時10分
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人工智能(AI)は同時通訳業界から仕事を奪おうとしている。このところ、一部の国際会議では、通訳の仕事がすでに同時通訳AI製品に任せられている。通訳内容は大型スクリーンや携帯電話などの設備を通じて伝えられ、同時通訳者がブースの中で通訳するというこれまでのあり方をすっかり変えてしまった。中国青年報が伝えた。

同時通訳者はかつて「21世紀に最も不足する人材」と呼ばれ、収入は高額だが、今では「いつでも失業する可能性がある」と揶揄されている。一方の同時通訳AI製品は市場で非常に人気だが、同時通訳AIが通訳するわけの分からない内容は、人々にその能力に対する懸念を抱かせている。

AIが同時通訳者に取って代わることは可能なのか?

同時通訳AIは登場するたびにたちまち会場内の視線を集める。

人間の同時通訳者が閉め切ったブースに入っているのと異なり、会場の大型スクリーンが同時通訳AIの仕事場だ。講演者が話し終わるのとほぼ同時に、その内容に対応した中国語や英語の字幕がスクリーン上に現れ、その後は講演者の話す内容の進行に合わせて通訳内容が絶えず最適化されていく。会場の聴衆はスクリーン上を流れていく字幕を見て、思わず驚嘆することになる。

同時通訳AIサービスを提供する「搜狗同伝」の関係責任者によると、「搜狗同伝」が同時通訳サービスを提供した会議は現在数百に上っているという。「従来の同時通訳者と比べ、機械は疲れることがない。通訳は実際のところ非常に頭を使う仕事で、同時通訳者は数十分に一度交代して休まなければならないが、機械は24時間連続で働くことができるため、より効率が高い」とこの責任者は語った。人間の同時通訳者の訳出率は通常60-70%前後だが、通常、はっきり聞き取れなかったり、訳しにくいなどの理由で、通訳者はよく一部のセンテンスを選択的に省略し、そうすることで全体的な正確さとリアルタイム性を保証しようとする。その点で比較すると、機械の同時通訳は従来の同時通訳者よりも全面的と言える。

また同時通訳AIは価格の面でも優位性がある。世界で同時通訳者が足らず、巨大な市場需要と比べると人材は深刻に不足しており、しかもレベルの高い同時通訳者の料金は高額であるため、一般の会議では負担できない。

だが、同時通訳AIの登場に対し、同時通訳者は依然として楽観的だ。同時通訳者の艾琳さんは、「現在のところ、AIが我々の仕事にとって大きな打撃になっているとは感じていない。AIについての会議はかなり通訳したけれど」と茶目っ気たっぷりに語った。彼女の自信の源はその実力だ。

英国バース大学同時通訳専攻の修士課程を修了後、艾さんは国内で9年間同時通訳として働いてきた。艾さんは最近、単細胞ゲノム学の会議通訳を務めた。語彙や背景が非常に専門的で、人間の同時通訳者であっても、何度も会議通訳をした経験がなければ質の高い通訳は提供できない。「もしAIにサポートされたコンピューター技術を使ったとしても、大量の原文と翻訳文の言語研究資料で通訳パターンに関するトレーニングをしなければならない。これには時間がかかる」と艾さんは言う。

EY大中華地区デジタル化コンサルティングサービスのパートナーである呉顕光さんはAI業界に注目して久しい。呉さんは、「要求が高くなく、間違いが許容される」通常の会議でなら同時通訳AIを使えるが、専門性や商業性の要求が高い会議では、現在のところ同時通訳AIと同時通訳者の差はまだかなり大きいと考えている。

AIはまだ十分賢くない

正確かつスピーディーに内容を訳出することは、人間の同時通訳者の得意とするところであり、同時通訳AIの必修科目でもある。しかし、同時通訳AIがさらに自己学習し、あと数年間「修練」する必要があることは、事実によって証明されている。

まず真っ先に攻撃される問題は、同時通訳AIがまだ十分に賢くはなく、「直訳」がすぎるという点だ。機械は文脈を理解するのが難しく、臨機応変能力にも乏しいため、「言外の意味をくみ取る」レベルに達することができない。通訳は文脈によるところが極めて大きい。「Apple」という単語が出て来た場合、アップル社のことなのか、食べられるリンゴのことなのかは文脈によってしか分からない。人間の同時通訳者なら容易に識別できるが、現在のところ同時通訳AIにとっては最大の難題となっている。

中国の「首席通訳官」と称えられる張璐さんは古い詩文の通訳で有名になったが、その類の通訳をさせると、同時通訳AIはしばしば笑い話になるような誤訳をしてしまう。

そして同時通訳AIの通訳の質は、発言者の言葉の明瞭さと標準さに左右される。同時通訳AI製品の効果を会議会場においてと会議後に録音音声で体験したことがあるが、明瞭で標準的な中国語であっても識別率は低かった。仮に講演者に訛りがあったとすると、同時通訳AIの識別能力に大きく影響してしまうことになる。

前出の呉顕光さんは現在のAI機能について、「話す内容が表面的な意味であればAIも識別しやすいが、暗に含んだ意味やユーモア、俗語、ブランドなどだった場合、AIにとっては骨が折れるらしく、サポート的な役割しか果たせない」と線引きしている。

同時通訳専攻に未来はあるか

同時通訳者は高収入業界の代表の一つであり、優秀な同時通訳者の収入は1日で1万元(約16万円)以上にもなる。

同時通訳者の艾さんは、プロの同時通訳者は2カ国語の優れたヒアリング力とスピーキング力、すばやく言語をスイッチする能力、幅広い専門知識、プロとしての仕事に対する態度を備えていなければならないと考えている。会議前に資料を入手して真剣に準備する段階から、会議会場でコンビを組むほかの同時通訳者とうまく協力する段階まで、どの過程、細部も重要となる。普段は艾さんもよく通訳・翻訳関係のアプリを使っているし、同時通訳者の間でもAI技術の発展に反感はない。優秀な同時通訳者ならば仕事を得るルートは多く、ほかの業界で自分のポジションを探すことも容易だ。

しかし、艾さんの出身大学の教授は「この2年、同時通訳専攻を申し込む学生には気がかりなことが増えている」と言っていたという。艾さんの周囲ではAIの影響で職を変えた同業者はまだいないが、もし学生で、卒業までまだ7-8年あるのであれば、ほかの専攻を考えてみてもいいのではないか、と艾さんはアドバイスしている。

別の同時通訳者は、同時通訳者にとって本当の失業の危機は、若い人の英語レベルが全体的に上がっていることだと考えている。子供の英語教育に対する保護者の重視度がますます上がり、学習方法もますます多様化して面白いものになり、英語の伝達能力や理解能力が母語並みになったら、その時こそ同時通訳者の未来はなくなる、というのだ。

2007年から現在までの間に、AI大手・科大訊飛(iFLYTEK)の劉慶峰董事長は何度もAI通訳と同時通訳者の関係についての態度を表明してきた。劉董事長は、「人間と機械の結合(カップリング)は通訳の分野だけでなく、AIが用いられるほとんどすべての分野で実現する。未来はきっとそうなるだろう。これは技術的趨勢であるだけでなく、倫理や人文面のニーズでもある」としている。(提供/人民網日本語版・編集/AK)
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