【CRI時評】英国はEU離脱で、なぜこれほど苦しむのか?

CRI online    2019年1月8日(火) 10時20分

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 2019年になり、英国がEUを離脱する鍵となる3月29日が近づくにつれ、英国国内で注目される論争の焦点はすでにEU離脱後の政策措置ではなく、「ハードな離脱(ハード・ブレグジット)」であるべきか、「ソフトな離脱(ソフト・ブレグジット)」であるべきかになってきた。この「硬軟」の違い...

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 2019年になり、英国がEUを離脱する鍵となる3月29日が近づくにつれ、英国国内で注目される論争の焦点はすでにEU離脱後の政策措置ではなく、「ハードな離脱(ハード・ブレグジット)」であるべきか、「ソフトな離脱(ソフト・ブレグジット)」であるべきかになってきた。この「硬軟」の違いとは、英国とEUが一つの合意を達成できるか――EU離脱後の英国が、EUという共同市場に留まれるかどうかということだ。この問題は日を追うごとに長期的な大論争を巻き起こしてきた。

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 この論争は時間の経過とともに論者双方が共通の認識に接近しているどころか、逆に意見の違いがますます鮮明になってきた。

 2016年6月に英国でEU離脱についての国民投票が行われた際に、EU残留派は「EU市場を失えば、英国経済は致命的な打撃に直面する」、EU離脱派は「英国の多くの産業は優位性を持っている。EUという重荷を捨て去ることは、英国経済にとっての負担がなくなるだけだ。しかも、EUが提唱する人と資金の自由な流動は、英国の安全に対する最大の脅威だ」と主張した。両派の違いとして、EU離脱派には伝統的な産業に携わる住民が多く、EU残留派の多くは第三次産業に従事する大都市住民で、スコットランドやウェールズ、北アイルランドの住民も多い。自分自身の利益にもとづき考慮する者は基本的に残留派だ。英国の人口に占める両派の人数にそれほどの違いはなく、最終的に離脱派がわずかにリードして国民投票に勝利した。

 有権者の態度と比べ、英国の政党の姿勢にはEU離脱の投票をする前後で、かなり明確な変化が生じた。主な原因は、英国の保守党と労働党の二大政党の政治家が、選挙での当選を政治活動の出発点とするからには、ある程度は「お茶を濁す」策に頼ってしまうことだ。テリーザ・メイ首相は本来、強硬なEU離脱論者だった。しかし首相就任後は自らの政治的利益を考慮して、つまりEU離脱に伴い、英国が短期間内に受ける衝撃が自らの政治生命に影響することを懸念して方針が穏健になり、ソフト・ブレグジットを積極的に推進するようになった。一方で労働党のジェレミー・コービン党首は、国民投票の際にはEU残留を基本的な立場にしていたことを忘れてしまったかのよう、積極的にソフト・ブレグジットを主張するようになった。

 英国の二大政党はハード・ブレグジットとソフト・ブレグジットの問題で、まるで「合意」を達成したかのようで、理屈から言えばよいことだが、現実は必ずしもうまく運ぶとは限らない。メイ首相はEU離脱の問題で態度を穏健なものに転換したが、結果として強硬な立場の保守党議員、さらに内閣の大臣の数人までもが「最後の造反」をすることになった。また、労働党のコービン党首の曖昧な姿勢も、EU残留のための再投票をすべきだとの主張すらある、選挙民の強烈な批判を浴びている。

 北アイルランドの民主統一党はEU離脱が決まってからのアイルランド共和国との国境を管理するかどうかの問題で、盟友だった保守党とほとんど対立状態になった。スコットランド国民党は、惜敗に終わった英国からの離脱についての住民投票についての憤懣を示し始めた。このような雰囲気で、英国議会がメイ首相の進めてきたEU離脱の合意を順調に可決するのか。おそらくは極めて難しいだろう。EU離脱の時期は定められている。その時になれば英国に、「ソフトかハードか」以外の選択肢は残されていない。

 アナリストは、英国がハード・ブレグジットを選択すれば、経済は一定期間内に打撃を受けるだろうが、メイ首相が新年の談話で言及したように、英国は改めて世界全体に目を向けた共通認識を再構築できる。そうすれば、英国は現状を出発点として、短期間の陣痛を経験した後に、自らの経済を一つ上の新たな段階に引き上げるチャンスを得ることになる。英国がEUという「重荷」を捨て去り、自らの産業の優位さを発揮し、改めて全世界の国際市場における地位を築くだろうとみられている。

 ハード・ブレグジットであれ、ソフト・ブレグジットであれ、英国が必要としているのは強いリーダーが即座に決断を下すことだ。しかし英国の政治体制により、目下のところ陣痛期を乗り切れる強いリーダーが出現することは不可能だ。英国が最終的に待ち受けているのはあるいは、無言のまま迎える終局――時間を消耗し、自動的に「ハード・ブレグジット」の時を迎えることだけなのかもしれない。(CRI論説員 千里岩)

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