<直言!日本と世界の未来>世界の株価、米中貿易戦争の行方に連動=興味深いトランプ氏の「ツイッター介入」―立石信夫オムロン元会長

立石信雄    2018年12月16日(日) 6時20分

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経済人の一人として、世界の株価動向に目が行くが、今年後半の大きな相場変動要因は何と言っても米中経済摩擦である。世界の株価は米中関係が深刻化すると急落し、好転すると反発する傾向が顕著だ。興味深いのはトランプ大統領のツイッターでの「口先介入」である。

経済人の一人として、世界の株価動向に目が行くが、今年後半の大きな相場変動要因は何と言っても米中経済摩擦である。世界の株価は米中関係が深刻化すると急落し、好転すると反発する傾向が顕著だ。

12月1日のブエノスアイレスでの米中首脳会談で、米国が19年1月に予定していた追加関税措置を猶予し、中国が米国から大豆などの農産品や産業製品を購入することで合意した。貿易戦争による両国経済に与えるダメージが拡大する中で、貿易赤字縮小を公約に掲げるトランプ氏と貿易摩擦の激化を回避したい習氏の思惑が一致した。

米中貿易戦争がひとまず“休戦“となったことで、直後の世界の株式市場は急反発した。ところが、カナダ司法省が中国の通信機器最大手、ファーウェイ(華為技術)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者を米当局の要請で逮捕したため、米中摩擦の新たな火種になるとの懸念から株価が急落。その後釈放されたため急反発した。

かつての米ソ冷戦時代と異なり、米中間には貿易、投資、サプライチェーン(供給連鎖)などで相互依存が緊密。その他の国の経済も先進国から新興国まで影響は甚大である。インテルなど米IT企業はファーウェイと技術開発で戦略的に関係を深めており、米政府がファーウェイを世界の通信市場から締め出そうすると、米IT企業にも悪影響が及ぶ。インテル、フレックスなどIT株は部品納入や生産面でファーウェイと密接とされる。特にブロードコムは売上高に占めるファーウェイ向けの比率が6~8%と高く、ファーウェイ幹部逮捕直後に株価が急落した。その後米中貿易交渉の進展を期待させる報道が相次ぎ、投資家心理が改善、日中米市場の株価が反発した。ことほど左様に世界のマーケットは連鎖している。

興味深いのはトランプ大統領のツイッターでの「口先介入」。12月3日に「中国が米国からの自動車輸入への40%の報復関税の引き下げ・撤廃に合意した」と誇らかにツイート。世界最大の中国の自動車市場で、米系メーカーの販売台数が1~10月に前年より約14%減少したとのニュースを受けた発言である。さらに「中国が米国から農産物をただちに購入し、米国の農業者は大きな利益を迅速に得られる」と誇示。中国側から1兆2千億ドル(約136兆円)の米国産農産物の購入が追加提案されたことをアピールするものだ。

これらツイートを見ると、米中の「覇権争い」も「新冷戦」もあまり関心がなさそうだ。トランプ氏にとっては米中貿易戦争が消費者、企業経営者、農民などの負担になっている点だけが気がかりのようだ。

今回、ファーウェイが標的になったのは、同社が次世代通信「5G」の技術で米国を一歩リードしているためだ。貿易問題では妥協が可能でも、次世代の技術覇権を巡る争いの方がより根深く、米国は今後も次々と中国に揺さぶりをかける可能性が高いが、中国は米国と対話しつつ持久戦に持ち込み、米国経済の“衰退”を粘り強く待つというしたたかな戦略を立てているのではないか。14億人の人口を擁し内需主導型経済の中国にとって貿易戦争は実体経済への影響は小さい。原油・大豆も米国の代わりに他国から調達可能だ。

2019年の日本経済も、トランプ米大統領の経済・外交政策の行方に翻弄されそうだ。米中貿易戦争の長期化が世界経済の減速懸念を強め、そこにトランプ減税の効果はく落を見越した米景気失速への懸念が台頭。注視すべきは、米国内自動車販売における大型車の売れ行き不振。GMの工場閉鎖計画は、その影響を受けた対応だが、トランプ大統領は同社を強くけん制。この方向性がさらに強まれば、米国内での米自動車産業の生産量を維持するために、輸入される自動車に20%~25%の高関税をかける可能性が高まってくる。

年間174万台の対米輸出が大幅に削減されるような展開になれば、対米自動車貿易黒字が大幅に減少し、日本経済に大きな打撃となる可能性が高まる。米政府は日本と1月からスタートさせるTAG(日米物品貿易協定)交渉において、自動車や自動車部品に対する関税発動の可能性があると脅しをかけており、大きな懸念材料だ。

(直言篇73)

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。SAM「The Taylor Key Award」受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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