ラサ空港に着陸寸前の旅客機に故障―減速できず再上昇もできない状態に

Record China    2018年10月27日(土) 22時20分

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チベット自治区のラサ空港に着陸する寸前のアモイ(厦門)航空MF8411便のフラップに異常が発生した。フラップとは主翼後方など取り付けられた、速度が低い離着陸時でも必要な揚力を確保するための装置だ。写真はラサ空港の周辺におけるMF8411便の飛行経路。

重慶空港を出発し、チベット自治区のラサ空港に着陸する寸前のアモイ(厦門)航空MF8411便の操縦室では、機長ら操縦スタッフがフラップに異常があることに気づいた。フラップは主翼後方などにせり出す板状の装置で、着陸のために飛行機が減速しても必要な揚力が確保するためのものだ。高地にあり空気の薄いラサ空港ということで、悪条件が重なった。中国メディアの澎湃新聞が伝えた。

MF8411便の使用機材はボーイングのB737―700で、機齢は7年だったという。同便には乗客79人と乗員9人の計88人が乗っていた。

10月25日午前11時1分、MF8411便は重慶空港を正常に離陸した。同便は午後1時47分、ラサ・クンガ空港に着陸しようとしていた。旅客機などの大型機は、離着陸時に主翼後方などにせり出すフラップと呼ばれる装置を備えている。速度が低いために揚力が落ち、主翼だけでは飛行機の重量を支えられなくなるからだ。そのためフラップを使って主翼面積を事実上増やし、揚力を確保する。

フラップなしでは高速で離着陸せねばならない。安全面に問題が生じ、長大な滑走路も必要となる。仮に離着陸にも必要な揚力を確保できる広い主翼であれば、高速飛行時に燃料消費が著しく大きくなるなどの問題が出る。つまりフラップとは、「必要な時だけ主翼面積を追加する」装置だ。

MF8411便では、そのフラップが故障した。航空機は着陸する際、機長が「問題発生」と判断すれば、車輪が接地する前、あるいは接地した直後でもエンジンを改めて全開にして上昇することがある。着陸復行と呼ばれる操作で、航空機は基本的に「着陸復行の可能瀬もある」ことを前提に着陸を試みる。しかし、フラップなしで着陸した場合、揚力不足で再上昇するのは困難になるという。

しかもラサ市は海抜4200メートルの高地にあり空気が薄い。十分な揚力を得るのはなおさら難しいことになる。なおB737―700は機長と副操縦士の2人で操縦ができるが、アモイ航空はラサ空港への離着陸は複雑な条件が重なるとして、正規の機長以外に機長の資格を持つパイロットをもう1人、さらに副操縦士を含めた3人で操縦させている。

操縦席ではフラップが左右対象に出ていないとの警報が出ていた。機長が問題発生を空港側に伝えたのは午後1時56分だった。空港側はただちに技術スタッフを招集して緊急会議を実行。MF8411便の状態や当日の空港周辺の気象条件も考え合わせ、安全に着陸するためには、空港上空で旋回を続けさせて燃料を消費させ、できるだけ軽くしてから着陸を試みるべきとの結論に達した。

旅客機は着陸する際、エンジンを逆推力にするだけでなく、主翼後方にスポイラーと呼ばれる板を立てる。空気抵抗を増やして減速するためだ。フラップを正常に使えず通常よりも高速で着陸しても、重量が軽ければ、エンジンの逆推力やスポイラーの空気抵抗で、速やかな減速が可能になる。

機長は指示を受け、着陸に向け高度を失いつつあった機体を、改めて上昇させた。そして機内放送で、乗客に故障の状況を知らせ、乗組員を信じ指示に従うよう求めた。

機長としては機を早く上昇させたかった。そのため男性乗客に協力を求めた。客席内の最後尾に集まってもらい、機体の重心を後ろにずらす。原始的なようだが、客室内の重量移動は飛行機の姿勢に影響があるされる。

しかし、シートベルトのない状態であることは、機体に急激な揺れが発生した場合には負傷しやすいというリスクも伴う。しかし機長の求めに応じて、男性客十数人が挙手をして協力する意思を示したという。

MF8411便は約1時間にわたり、空港上空を旋回して、必要最小限の量を残し燃料を消費した。着陸に失敗は許されない。機長は慎重にコースを選び滑走路に進入した。

着陸した。午後2時52分、MF8411便は滑走路の上で完全に静止した。その途端、客室内では爆発的な拍手が起き、乗務員の腕前とプロ精神を称賛したという。(翻訳・編集/如月隼人

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