<コラム>米朝合意は北朝鮮の「勝利」だったのか

勝又 壽良    2018年6月14日(木) 12時40分

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米朝首脳の「6・12会談」は、4項目の合意書を発表して終わった。北が核廃棄を行うというだけで、詳細なスケジュールは記載されなかった。この結果、北の「勝利」であると、北朝鮮専門家は一斉に批判している。果たしてそうだろうか。写真は米朝首脳会談の関連報道。

米朝首脳の「6・12会談」は、4項目の合意書を発表して終わった。その内容は、至って簡単である。北が核廃棄を行うというだけで、詳細なスケジュールは記載されなかった。この結果、北の「勝利」であると、北朝鮮専門家は一斉に批判している。果たしてそうだろうか。米国は譲歩している恰好だが、北朝鮮事情をかなり勘案して、「実」を取った形に映る。

過去2回、核廃棄の協定は反古(ほご)にされてきた。米朝間に信頼関係がなかったことが、最大の理由に思われる。1953年の朝鮮戦争休戦以来、法的には「戦闘状態」という緊張感の下にある。圧倒的な軍事力を誇る米国が、北朝鮮にとっては最大の恐怖の的であったに違いない。だから、その恐怖感からこっそりと核開発を続けてきた。そういう解釈も可能であろう。

北朝鮮は、今回の米朝合意で核廃棄を約束した。これまで、北は「核が政権を守る」考えに固執してきたことから見れば、180度の大転換である。この裏には、金正恩氏の実妹である金与正氏のサポートが影響したと推測される。女性は戦争よりも平和を好む。ミサイルや核よりも、日常生活(経済)の安泰を重視する。この母性本能が、北の軍事路線を変えさせたのでないか。今回の米朝首脳会談でも与正氏は随行し、ワーキングランチに出席した。要所、要所で、必ず顔を見せる「影の参謀」に間違いない。

この金与正氏は、米朝首脳会談でトランプ発言を直に聞いて、自らの「平和路線」の正しさを確認したと思われる。韓国・聯合ニュースによれば、朝鮮中央通信と朝鮮中央放送は会談翌日の6月13日午前6時、金委員長とトランプ大統領の会談ニュースと共同声明全文を一斉に報じた。また、朝鮮労働党機関紙の労働新聞も、米朝首脳会談の内容と写真33枚を4面にわたって掲載した。

金正恩氏が帰国する前の異例の報道だ。これら報道部門は、金与正氏の担当である。彼女の平和路線である核放棄への確信が、こういう報道を実現させた力と見る。この報道によって、北朝鮮は核廃棄を国民に告げた。後戻りはできないゾーンへ踏み出している。

北朝鮮は、米国に約束した「核廃棄」を誠実に履行すると思う。実行しなければ、米国の軍事行動が予見されるからだ。

■筆者プロフィール:勝又壽良

横浜市立大学商学部卒、経済学博士(中央大学)、元『週刊東洋経済』編集長、元東洋経済新報社編集局長、元東海大学教授、元東海大学教養学部長。経済記者30年、大学教員16年の経験を持つ。

■筆者プロフィール:勝又 壽良

1936年生まれ。横浜市立大学商学部卒 経済学博士(中央大学)元『週刊東洋経済』編集長、元東洋経済新報社編集局長、元東海大学教授、元東海大学教養学部長。2010年5月から、アメブロで中国と韓国を主体に「勝又壽良の経済時評」を毎日更新。経済・外交などのメディア情報に基づきこれまでの経験を生かし執筆している。経済記者30年、大学教員16年で得た知見を生かして日々の内外情報と格闘している。どうぞ、ご支援を!

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